第73話 はい、どうも、下高井戸です
「え、まじ?」
「もしかしてあの画像がユア・スレイヴの『中の人』?」
客席がざわついた。
「消してください、モニター!」
氏家が慌てて叫んだ。
「外部から操作されているようじゃ。電源から引っこ抜くしかないの」
忠政が答える。
氏家はきっと唇を結ぶと、舞台上に駆け登って、唖然としている4人を舞台裏に引きずりこんだ。
すでに客席は大騒ぎで、端末で舞台を撮影している人が多数いた。
「どういうことですか」
「あれは我々が以前オンラインオフ会をしたときのキャプチャでしょう。なぜあそこに表示されているのか……」
「ケンさん、あれは本物のケンさんの顔なんですか」
氏家が泣きそうになってケンに尋ねた。
血飛沫のケンは肩をぷるぷるさせるだけで答えない。
「本物で間違いありませんよ」
「中の人がたいしてイケメンでもないことがバレたらアイドルなんて成り立たないじゃないですか!」
「失礼だな」
「だって、お兄ちゃん!」
お兄ちゃん⁉
ヴォイドが目を丸くした。
「失礼。彼女は私の実の妹なのですよ。そんなことより」
血のつながった兄妹だったという衝撃の事実を「そんなことより」で片づけた
「ライブは中止でしょうかね」
「そんな!」
ヴォイドが声を上げる。
「せっかくあんなに練習したのに……」
「ヴォイドさんは顔バレしていないからそう言えるんです。私とケンさんは顔と本名がさらされてしまった。どこからあの画像が
血飛沫のケンはがたがた震えていた。
「おい、大丈夫か」とヴォイドが声をかけると、血飛沫のケンは顔を青くして「あ、あ、もうおしまいだ」とつぶやいた。
「氏家さん!」
客席側から高橋くんが走って裏手にやってきた。
「いったい何が起こっているんですか。あの画像は?」
「ええ、メンバーの顔写真と本名で間違いないわ。どこから漏れたのやら……」
頭を抱える氏家。高橋くんは首を傾げた。
「あれ、イエロー・パンサーさんはどこですか?」
皆は周囲を見回した。
イエロー・パンサーがいない。
「もしかして」
ヴォイドがつぶやいた。一同は顔を見合わせた。
「あいつ!」
◇
はい、どうも、
いやー、やっぱりやらかしましたね、あの運営。Tmitterも大盛り上がりです。
知らない方のために説明しますと、眷カノからデビューしたアイドル「ユア・スレイヴ」のライブ中に、何者かによってリークされたメンバーの中の人の顔と本名がさらされてしまった事件です。
ライブモニターに突然、オンラインミーティングのキャプチャですかね。そういうのが表示されたんですよね。びっくりです。
運営の公式発表によると、あれは外部からハッキングされたいたずらで、画像はユア・スレイヴのメンバーとは一切関係がないらしいです。まあ、関係がないというのは嘘でしょうね。
ユア・スレイヴには、「
Tmitterの反応を見ると、「あの
個人的には、すごい時代になったなと思います。不細工でも痩せていなくてもゲームの美しいアバターになれば、誰でもアイドルになれてしまうんですからね。
今回の事件について皆さんはどう思いますか? コメントいただけると非常にうれしいです。
以上、下高井戸でした。
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