第10話 お金は大事だよ
「この小判みたいなのが『ゼニ』、キラキラした球が『宝玉』、最後に『かんざし』だ」
「ゼニ」はゲーム内通貨。モンスターを倒したり、宝玉から換金して手に入れることができる。
ゼニを使ってノーマル装備やドロップ品をショップで買うこともできる。
「宝玉」は課金アイテム。基本は現実世界で円を出さなければ買えないが、一部無償宝玉はクエストクリアなどでも手に入る。
レア装備ガチャ、レジェンドガチャを回すのに必要になる。
そして、「かんざし」はトレードアイテム。日時によって随時レートが変わり、プレーヤーはゼニを使ってかんざしを売買する。かんざしの総量は運営によって調整されており、運営がかんざしを放出すると、その分レートも低くなる。
かんざしの使い道はただ一つ。キャラを「眷属彼女」にするときに消費するのだ。
――頑張ってかんざしを入手して「眷属彼女」を手に入れるもよし、かんざしのトレードでゼニ持ちになるもよしの自由度の高いゲームにゃ!
――おっとっと、「眷属彼女」とは何かまだ説明していなかったにゃ。
――この世界にはご主人様のような「プレーヤー」のほかに、「レジェンド」と呼ばれるキャラクターがいるにゃ。
レジェンドは全部でなんと1500人以上! ランクは、R、SR、SSR、そして隠しキャラのURがあるにゃ!
プレーヤーはいろいろな方法でキャラクターを「眷属彼女」にできるんだにゃ!
――「眷属彼女」を手に入れるためには、レジェンドガチャを回して対応する「レジェンドのかけら」を所持している必要があるにゃ!
たとえば、市川忠政を手に入れたい場合、かんざしのほかに、「SSR市川忠政のかけら」を3枚持っている必要があるにゃ!
――「眷属彼女」をゲットする方法は以下の通りにゃ!
1.まだ「眷属彼女」になっていない野良レジェンドを「かんざし」と対応する「レジェンドのかけら」で買い取る。
2.すでに「眷属彼女」を所持している人から「かんざし」でキャラを買い取る。その場合、「レジェンドのかけら」を消費する。
3.「眷属彼女」所持者が主催するオークションで最高値を付ける。
4.決闘で奪い取る。
――その他にも、野良レジェンドと「仮契約」を結ぶことができるにゃ! 詳しくは「ヘルプ」から確認できるにゃ。
――難しかったかにゃあ。ゲームのシステムについてはゆっくり覚えるにゃ!
それでは、冒険の旅を楽しむにゃー!
「ふう、キャラを演じるのは疲れるの」
忠政が唐突に普段の口調に戻った。
「初回無料10連ガチャの説明は省いたぞ。どうせ小次郎はガチャを回せないからの」
「つまり、俺たちを買い取るために、ヴォイドはかんざしと『レジェンドのかけら』? を6枚使ったということか」
「ちなみに、『レジェンドのかけら』排出率は、SSRが7%、SRが23%、Rが70%じゃ。100回に7回くらいSSRが出る計算じゃの」
「そ、そんなに少ないのか……」
小次郎は驚いた。「これでも確率だけ見れば良心的なほうだ」とヴォイドが言った。
「もしかして、ものすごく金がかかるのか?」
「まあな。俺はすでに2000万円ほど課金した」
一般的な大人の4、5年分くらいの俸給じゃ。忠政が小次郎に耳打ちする。
まるで奴隷売買だ。小次郎は思った。ヴォイドの気を悪くするといけないので、口には出さなかったが。
「高レアリティや人気の眷属彼女を連れて歩くことは、このゲームではかなりのステータスだ。本当なら、俺のように先にかけらを手に入れてから交渉するのが筋なんだが……あの3人組のように、野良レジェンドを拘束してから引き換えアイテムを入手しようとする不正行為が横行している」
嫌な世の中じゃの。忠政がつぶやいた。
「まあ全部ゴミ運営が悪いってことだ。俺はRTAにしか興味がないから、かけらを余らせていたが」
ヴォイドはふたりを見て少しほほ笑んだ。
「こうやって仲間ができるのも悪くはない」
「もしかして、おぬし、友達がおらんのか」
おい。小次郎が忠政を小突いた。
ヴォイドはとたんにしゅんとしてうつむいた。
「別に。気にしてない。俺には感情がないからな」
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