第7話 出会い厨から逃げるのじゃ!
「で、エルピオンの泉とやらにはどうやって行けばいいんだ?」
「いい質問じゃ!」
街路の脇に立っている看板を忠政は指さした。
片方はミヤビタウンの地図、もう片方はゲーム全体のマップのようだ。
「ここが今わしらのいるミヤビタウン西側。ミヤビタウンを出れば、モンスターのいる戦闘マップへ出られるぞ。さらに、ここからずっと西へ上った先にエルピオンの泉がある」
「近ノ江の国か」
「まあそれがモデルじゃな。そこへ行くには、主に2つの道筋がある。ひとつ目は、北側の街道。こちらは山道で、敵も強いので却下じゃ。わしらは南側の海沿いの街道で西へ向かう。こちらはちと遠回りじゃが、比較的安全じゃからの。街道をずっと上ってこの『ツサクの街』に着けば、上下の街道が交わるところに出る。そこから北に向かってエルピオンの泉に着くという流れじゃ」
ふむ、と小次郎は顎を触った。
思っていた以上に長い道のりになりそうだ。
「あれー?」
突然尻尾を握られて、小次郎はフニ゛ャ! と声を上げた。
3人の男性プレーヤーが、ふたりの背後に立っていた。
「女の子? 女の子だよね?」
「なんで男物の服着てるの?」
「てかどこ住み? LIMEやってる? よかったら俺らとパーティー組まない?」
めんどくさいのう。忠政が舌打ちした。
「尻尾かわいいね。てか尻尾ってゼニショップで買えたっけ?」
「おい……もしかしてこいつら」
プレーヤーのひとりが小次郎を指さしてわなわなと手を震わせた。
「今日のアプデで出た新規SSRの双子じゃね?」
「まずい、小次郎、逃げるぞ!」
忠政が小次郎の手を引いて走り出した。ふたりのフードがはらりと落ちて、三毛とハチワレ柄の猫耳があらわになった。
「間違いない! 追え!」
「うおお、ぜってえ捕まえて眷属にする!」
追っ手との距離は徐々に縮まっていく。
キャラクターよりもプレーヤーの方が若干足が速いためだ。
「このままではまずい、小次郎、人ごみに紛れるぞ!」
ふたりは大通りを駆け抜けると、目の前のジパング大橋に向かって全速力で走った。
ミヤビタウンの出入り口、ジパング大橋にはかなりの人数のプレーヤーがたむろしていた。ミヤビタウンの外のマップへ出る際にかなり長めのロードが入るため、プレーヤーはその場で硬直してしまうのだ。
小次郎と忠政は人々の間に駆け込んで身を隠した。幸い、目立たない服装なのでうまく紛れ込めたようだ。
「畜生、どこにいやがる」
「小次郎、このままミヤビタウンを出るぞ」
橋の向こうへ駆け抜けようとした小次郎は、突然尻にきりりとした痛みを感じた。
3人組のひとりが、小次郎の尻尾をつかんでいた。
「頭隠して尻尾隠さず。見つけたぜ。俺の眷属になってもらおうか」
小次郎はにやつくプレーヤーを見上げてにらんだ。
こんなやつらに……。
「そこまでだ」
低い声がして、誰かがプレーヤーの男の腕をつかんだ。
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