第9話・圧倒的に圧倒的過ぎる程の格上

「ふむ。下位とはいえ我が眷族を倒したか。どうやら我の前に立つ最低限の力は持っているようだな」

 銀狼がいきなり僕に話しかけてきた。


「え?魔物が喋っただと」

 僕は魔物が喋るという事実に驚きの声をあげる。


「それはもちろん喋るさ。魔物だって知能はある。人間の様に喋ることは可能だよ。まあ。喋れる魔物となると我の様な高位の魔物に限られるがな」

「そうなんですか。それで、あのう図々しいかもしれないのですが。僕を見逃してはくれないですか」

 僕はそう恐る恐る言った。何故そう言ったかというと。今の僕ではこの銀狼と本気で戦えば一瞬でミンチにされて死ぬ未来が見えたからだ。

 愚かな事に僕は今まで気が付かなかったのだが。この銀狼は僕の予想以上に強い。圧倒的格上なんて言葉は間違いだ。超圧倒的格上だ。僕が何をしても絶対に勝てない。そんな化け物だ。やろうと思えば今一瞬で僕をミンチ肉にすることの出来る化け物だ。


「コラコラ。せっかく我の前に立つ許可を上げたというのに。逃げるつもりか。小僧」

 その瞬間恐ろしいという言葉が生温く感じるような殺意を感じた。

 全身が恐怖で硬直して心臓の鼓動が跳ね上がり。身体中から冷汗が出て、気絶しそうなほどの眩暈が襲ってくる。

 死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。

 このままではこの銀狼の威圧だけで死ぬ。


 ピコン

 スキル【威圧耐性】を獲得しました。

 防御力が10・HPが100上昇しました。


 スキルを獲得した途端。あれだけあった辛さが嘘のように軽減される。

 もちろん、まだ少し恐怖はあるが。それでも動けるし喋れるくらいには威圧からの恐怖は軽減された。


「まだ、私では貴方様の前に立つことは出来ても。戦う資格はありません。ですからせめて後1年。私が強くなるまで待ってください」

 僕は一か八かの賭けに出た。

 今の僕では絶対にこの銀狼に勝てないのは理解した。だから1年の猶予を手に入れて。死ぬ気でこの銀狼よりも強くなるという賭けに出たのだ。生きるために強くなろうという賭けだ。一世一代の大きな賭けだ。


「ふむ。1年か。1年で我に勝てる程の強さを得られると」

 銀狼は僕の話を興味を持ってくれた。これならばこの賭け成功するかもしれない。


「はい。きっと1年で強くなって見せます」

 僕は強い意志を持ってそう言いきった。というかそう言いきるしか道はなかった。


「そうか。では小僧。テストだ。このテストに合格したら1年待ってやろう。テスト内容は我の攻撃に1回耐えることだ。さあ、小僧は耐えれるかな。では喰らうがいい・不可視の一撃」


 ブワン


 その瞬間風を切ったような音がして、僕の腹に何かがめり込んだ。


 グハ


 口から血が出る。

 身体中に激痛が走る。

 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。

 僕には痛覚耐性があるはずだ、それなのに痛い。痛すぎる。僕には再生があるはずだ。それなのに再生されない。

 ヤバい。死ぬ。死ぬ。死ぬ。

 スキルをスキルを何でもいい。この場を切り抜けられるスキルを。


 ピコン

 スキル【苦痛耐性】を獲得しました。

 防御力が10・HPが100上昇しました。


 ピコン

 スキル【根性】を獲得しました。

 防御力が10上昇しました。


 ピコン

 スキル【治癒力上昇】を獲得しました。

 HPが100上昇しました。


 スキルを3つも獲得出来た。でも痛い。辛い。苦しい。キツイ。死ぬ。このままでは死ぬ。まだだ、まだ足りない、僕が生き残るには、まだスキルが足りない。

 どうすればいい。どうすれば生き残れる。

 考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。今までの人生の知識を総動員させろ。総動員させて必死に考えろ。


 そうだ。治癒魔法だ。司祭様が使っていた治癒魔法だ。


 治れ。治れ。治れ。治れ。治れ。治れ。治れ。

 僕の全てのMPを持って行っていい。完璧に治癒されなくてもい。今生き残れるだけの治癒を。僕の魔力よ。才能よ。生きたいという思いよ。さあ治せ。僕の傷を治せ。治せ治せ治せ治せ治せ治せ治せ治せ。


 ピコン

 スキル【治癒魔法】を獲得しました。

 魔力が10・MPが100上昇しました。


 ピコン

 スキル【魔法効果上昇】を獲得しました。

 魔力が10上昇しました。


 よし。傷が治って来る。スキルを獲得出来た。

 痛みがましになってく。苦痛が和らぐ。でもMPがない。MPがない状態が続くと人は確か強制的に気絶する。お母さんが言っていた。こんな場所で気絶したら狼に喰われる。オークに喰われる。ゴブリンに喰われる。

 確実に魔物に喰われる。

 そんなのはごめんだ。


 さあ。MPよ回復しろ。回復しろ。回復しろ。回復してくれ。


 ピコン

 スキル【MP回復速度上昇】を獲得しました。

 MPが100上昇しました。


 よし。回復した。スキルを獲得出来た。

 傷も大分治った。さあ、立て、立つんだ僕。


「うおおおおおおおおお」

 僕はそう叫び立ち上がった。


「ハア。ハア。ハア。死ぬかと思った」

 僕は荒い息をしながらそう呟く。


「ふむ。今のを耐えるか。これは本当に1年で我よりも強くなるかもな。フフフハハハハハハハハハ。面白い。では。小僧1年待ってやろう。1年後。我は小僧の元に訪れる。そして戦おうではないか。もしも小僧が我に勝ったならば、我は小僧に永遠の忠誠を誓ってやろう。でも。小僧が負けたらその時は我の胃の中だ。では1年後を楽しみにしてるぞ」

 銀狼はそう言って僕の前から姿を消した。


 ――――――――――――――――――

 スキル説明

【威圧耐性】・・・レベル×一定回数以上、自分よりも圧倒的に強い存在からの威圧を味わった者が獲得できる耐性系統スキル。 

 威圧に対する耐性がつき。威圧を受けても怯みにくくなる。

 副次効果として防御力が10・HPが100上昇する。


【苦痛耐性】・・・レベル×一定回数以上、自分が死ぬほどの苦痛を味わうった者が獲得できる耐性系統スキル。

 苦痛に対する耐性がつき、苦痛を受けても耐えられやすくなる。

 副次効果として防御力が10・HPが100上昇する。


【根性】・・・レベル×一回以上、何かに耐える強い意志を持ちそれに耐えた者が獲得できる補助系統スキル。

 根性力が上昇して、大きな壁に立ちはだかったり大きな苦痛が降りかかっても耐えることが出来る。

 副次効果として防御力が10上昇する。


【治癒力上昇】・・・レベル×一定回数以上、治癒力を上昇させなければ死ぬという状況に追い込まれると獲得できる補助系統スキル。

 治癒力が上昇する。

 副次効果としてHPが100上昇する。


【治癒魔法】・・・レベル×一定回数以上。治癒魔法を行為した場合に獲得できる魔法系統スキル。ただし治癒に関連するスキルを持っていないと獲得が出来ない。

 治癒魔法の効果が上昇して、治癒魔法を扱う際の必要MPが減少する。

 副次効果として魔力が10・MPが100上昇する。


【魔法効果上昇】・・・レベル×一定回数以上。魔法効果を上昇させることで獲得で出来る補助系統スキル。

 魔法の効果が上昇する。

 副次効果として魔力が10上昇する。


【MP回復速度上昇】・・・レベル×一定回数以上、命の危機に扮した際に気合のみでMPの回復速度を上昇させることで獲得できる補助系統スキル。

 MPの回復速度が上昇する。

 副次効果としてMPが100上昇する。


 ―――――――――――――――――――――

 一応他にもスキルを獲得する方法は存在します。

 ただ、それを書き始めると地獄なのでしません。すみません。

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