第8話・狼の群れが現れた

 僕は今数十匹というたくさんの狼の群れとたった一人で戦っている。

 もちろん。そんな危険な戦いをするつもりはなかった。でも今現在完全に狼の群れに囲まれて逃げようにも逃げれないという恐ろしい状況に追い込まれている。そして僕の目の前で銀狼がそれを楽しそうに眺めている。

 最悪の状況である。

 何故こうなったかというと遡ること5分前。


 ――――――――――――――――――


 いつもの様に一匹でうろついている狼を探していた時だった。

 普通の狼より二回り大きいかなり強そうな美しい銀色の毛並みに包まれ狼が一匹で優雅に歩いていた。それを見た時、僕は美しいと思うと同時にその銀色の猛烈に毛皮が欲しくなった。


 そう猛烈に欲しくなったのだ。それこそ魔法にでもかけられたかのように目が釘付けになり、欲しいという欲望が制限なく溢れた。

 そして気が付いたら僕はその銀狼に襲いかかっていた。


 襲いかかる僕の目と銀狼の目が合った。その瞬間銀狼が吠えた。いや吠えたというより遠吠えというか鳴き声というか。まあよく分からないが銀狼のその声に反応するかのように、この森にいるであろう狼が僕に向かってなだれ込んできた。


 だだだだだだだだだだって大きな音を立てて僕に向かって一直線で向かってきた。


 そして今更ながら僕は気が付いた。否気が付いてしまった。僕がちょっかいを出してしまった、この狼がこの森を統べる大狼様と呼ばれる存在だということに。師匠から絶対にちょっかいを出すなと忠告を貰っていたことに。


 大狼様・この森に住まう狼を束ねる長でありこの森の主、狼でありながらオーガを一捻りし、ドラゴンすらも倒すといわれる化け物。

 物凄く簡単に言えば僕よりも圧倒的格上の存在だ。


 そうしてそんな大狼様によって狼の群れを呼ばれて、僕は狼達と今必死に戦っている。

 大狼様は少し離れた所で興味深そうに僕が狼の群れと戦う様子を観察している。

 完璧に舐められている強者の余裕とでもいうべきか。大狼様は僕を見下している。敢えて自分の子分?と戦わせて楽しんでやがる。


 本当に趣味が悪い。

 でも、これはチャンスだ。

 そうチャンスなんだ。僕が強くなるチャンスなんだ。スキルを獲得する素晴らしいチャンスなんだ。


 僕はここ1週間狼と素手で殴り合ったがスキルを獲得出来なかったことからとある仮説を思いついた。

 命の危険がないとスキルは獲得できない、もしくは獲得しにくいのではないかと。


 僕がスキルを獲得した時は命の危険がある時が多かった、もちろん魔法系統とかは分からないし、木登りとか工作も命の危険があったわけではない。でも、それはスキル獲得までに時間がかかったり。元々ある程度の才能があったりしたからだと思う。


 つまり何が言いたいかというと、今こうして何十という狼に囲まれて圧倒的格上である大狼様に見下されているこの命の危険しかない危ない状況こそが僕を成長させてくれる最高の状況だ。

 僕にスキルを獲得させてくれて、僕を新たな高みへと昇らせてくれる状況だ。

 さあ、やるぞ。スキルを獲得するため。強くなるため。自分の命を対価に戦ってやる。


 ――――――――――――――――――


 そして僕の戦いが始まったわけだが中々にキツイというか普通に死にそうだ。

 狼は何十という群れで僕に襲いかかって来ている。その凶暴な爪と牙を持って襲いかかって来る。その狼の攻撃が当たれば僕の細腕は細足は簡単に千切れ、穴が開くと思う。実際に前噛みつかれた時は腕に狼の牙が刺さり穴が開いた。


 でも、今の僕には回避と逃げ足というスキルがある。このスキルのおかげで何とか狼の攻撃を回避出来ている。避けることが出来ている。

 そして、僕には上級投擲というスキルと140という非常に強い攻撃力がある。僕が石を投げれば。それだけで狼は死ぬ。僕の本気のパンチがキックが狼にしっかりと当たれば狼は吹っ飛び死ぬ。


 そうなると僕のやることは単純だ。

 何十という狼の攻撃を避けつつ何十という狼に攻撃を加えて全滅させればいいんだ。


「さあ。来い。狼共、僕がお前らを皆殺しにしてやる」

 僕は腹の底から声を出して狼を精一杯威圧した。


 ピコン

 スキル【威圧】を獲得しました。

 副次効果として攻撃力が10上昇します。


 よし。良い所でスキル獲得が来た。

 やはり命の危険が伴う場合はスキルを獲得しやすいんだな。しかもスキル威圧のおかげで狼達は僕に怯んでくれた。さあ、今がチャンスだ。


「うおおおおおおおおお」

 僕は威圧の効果によって怯んでいる、狼の頭を右腕で掴み思いっ切り投げた。そして左腕で威圧の効果が解けたのか僕に鋭い爪を向けて襲いかかって来る狼の顔面を打ち抜く。


 気配察知によって後ろから狼が襲いかかって来るのが分かったから、一旦距離を取り、石を拾いぶん投げる。

 石は顔に当たり一匹の狼を始末する。まだこちらに向かってきている狼には足にしっかりと力を込めて攻撃力150の蹴りをお見舞いしてやる。

 蹴りの威力は想像以上に高く狼が空高く飛び、そして落下し落下地点にいた狼を潰す。


「よし、行けるぞ。僕は強い」


 ピコン

 スキル【格闘】を獲得しました。

 副次効果として攻撃力が10上昇します。


 ピコン

 スキル【孤軍奮闘】を獲得しました。

 副次効果として攻撃力・防御力・俊敏が10・HPが100増加しました。


「スキル格闘を獲得した。更に孤軍奮闘というスキルも獲得した。これで僕は更に強くなる」

 そして僕はスキル獲得のおかげで体の動かし方を理解する。


 どうすればより少ない動きで狼を吹き飛ばせるか。どうすれば狼により多くのダメージを与えられるか。どうすれば自分の体に負担が少ないか。自分の体の動かし方が分かる。面白いように分かる。手に取るように分かる理解できる。

 更にスキル孤軍奮闘のおかげか、全体的に身体がさっきよりも軽く動かしやすく力が湧いてくる。


 ドン・ドン・ドン


 いとも簡単に向かってきた3匹の狼を僕はスキル格闘を使い一瞬で制圧する。


「これがスキル格闘の力か。凄いな。これならばやれる。更にスキル孤軍奮闘のおかげで身体の調子も非常に良い」

 僕は格闘の力と孤軍奮闘の力を使い襲いかかって来る狼共をバッタバッタとなぎ倒していく。

 そうして10分程で僕は狼の群れの殲滅に成功した。


――――――――――――――――――

スキル説明


【威圧】・・・レベル×一定回数以上自分よりもレベルの高い相手に威圧的な行動を取ることにより獲得出来る補助系統スキル。

 敵に対して威圧を行うことが出来。威圧が成功すると一定時間敵の動きが止まる。または鈍くなる。

 副次効果として攻撃力が10上昇する。

 

【格闘】・・・レベル×一定回数以上自分よりもレベルの高い相手に対して一切武器を持たずに自分の肉体の身で戦い勝利を収めた者に与えられる戦闘系統スキル。

 体の動かし方を理解する。拳や蹴りでの武器を使用しない攻撃の威力が上昇する。

 副次効果として攻撃力が10上昇する。

 

【孤軍奮闘】・・・たった一人でレベル×レベル×10以上の敵に囲まれた状態での戦いをレベル×レベル×1することにより獲得出来る称号系統スキル。

 一人で多数と戦う時に生き残りやすくなる。一人で多数と戦う時にステータスが上昇される。一人で多数と戦う時に運が上昇する。一人で多数と戦う時に一度だけ致命的な傷を防ぐことが出来る。

 副次効果として攻撃力・防御力・俊敏が10・HPが100上昇する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る