第4話・ゆっくり眠りにつく話

「今の僕は一人だ。一人で生きなければならない。そうなるとこの狼は貴重な肉だ。それにあまり時間をかけると血の匂いにつられて他の魔物がやってくる。師匠がそう言っていた。だから急いで解体しないといけないな」

 僕は一人そう呟くと。無事な左腕で狼の牙を力任せに引き抜いたら、牙を首のあたりを差し込み力を入れて皮をはいでいく。

 この方法は師匠に教えて貰った手持ちにナイフが無い場合に出来る解体方法だ。

 そうして皮を剥いだらお腹のあたりの肉を牙で抉るように切り取り雑に剥いだ皮にくるむ。


「さて、これでいいかな。サッサとこの場から立ち去らないと。う。腕が痛いな。これも何とかしないとな」


 ピコン

 スキル【再生】を獲得しました。

 副次効果によりHPが100上昇します。


 新しくスキルを獲得出来た。その瞬間ゆっくりではあるが狼に噛まれた右腕の傷が治っていくのを感じた。


「凄い。これなら大丈夫そうだ。それにしてもこのスキルは何だ?いやスキル効果は理解できるが、スキルってそんなに簡単に手に入るものなのかって、ヤバい今考えごとをしちゃ駄目だ、血の匂いにつられた魔物がやってくる前にここから逃げなきゃ」

 僕は狼の肉を包んだ皮を持ち、休めそうな場所を探して歩き出した。


 そうして暫く歩いていく。

 歩いて歩いて歩いて歩いて、体力の限界が訪れた。

 それはそうだ。僕の体は12歳という未発達な身体だ。

 更に言えば狼とあれだけの激戦を繰り広げた後だ。疲れないはずがない。

 そうして疲労困憊のへとへと、喉もカラカラの中、運のよいことに川を見つけた。

 僕は最後の力を振り絞りその川に走り、手を水で洗ってから水を掬って飲む。

 ひたすらに水を飲む。飲む。飲む。飲む。飲む。飲む。


「水ってこんなに美味しかったんだな」

 僕は満足するまで水を飲んだ後にそう呟いた。それ程までに今飲んだ水が美味しかったのである。


「さてと、じゃあこの近くにある木の上を拠点にしよう。水場もあるわけだしね。でも出来るかな?うん。大丈夫だ。師匠からもしもの時にと木の上で簡易ベットを作る方法は教えて貰っている。じゃあ簡易ベットを作る前にお腹が減ったし肉を食べよう。でも、どうやって食べようか?新鮮だから生でも食べれそうだけど。せっかくなら焼いて食べたい。でも今現在火をつける道具なんて持ってないし。どうやって火を付けようか?」


 ・・・・・・・・・


「そうだ、良いことを思いついた。魔法を使ってみよう。今まではステータスが与えられてなかったから魔法を使うことが出来なかったけどステータスが与えられた今ならば出来るはずだ。駄目で元々。出来たらラッキーだ。さあ。イメージをしよう。魔法はイメージだ。師匠が言っていた。イメージだ。いつも師匠が魔法を使って出していたあの小さな火をイメージしよう。指の先から出る小さな火。吹いたら消えそうな火、それでもしっかりと存在する火。イメージ・イメージ・イメージ。よし火魔法・着火」

 僕はひたすらにイメージを重ねた上でそう魔法を唱えた。

 その瞬間少しの脱力感と共に指先に火が灯った。


 ピコン

 スキル【火魔法】を獲得しました。

 副次効果として魔力が10・MPが100上昇しました。


「よし。成功だ。しっかりと火魔法のスキルを獲得出来た。さて、じゃあ後は枯れ木と落ち葉を集めてこの火種を使って大きな火にしよう。そうしたら狼の肉を焼いて食べれる。さあ。やるぞって、あ、この火消えてない。えっとどうすれば消えるんだ?とりあえず消えろ」

 そう僕が念じたら火は消えた。


「うん。僕の意思で簡単に消えた。しっかりと使いこなせてる。さあ枯れ枝に落ち葉を拾ってこよう」

 そうして僕は森の中に入り。良い感じで乾燥している落ち葉や枝を探し集めた。それとせっかくなので師匠から教わった食べれる薬草なんかも一緒に探して取っていく。


 30分後。


「よし。結構集まったな。後はこれに火をつけて。火魔法・着火。うん良い感じに燃えている。そしたら狼の肉を手で引き裂いて中に薬草を詰めてと。ほい詰め詰め。それから枝を刺して焼く」


 そうして焼くこと10分後。


「そろそろ良い感じかな。じゃあ。いただきます」

 僕は初代勇者様が広めた食事をする時の作法をしてから焼いた狼の肉にかぶりつく。


「うん。美味しい。薬草のおかげで臭みも特にないし。味もついてる」


 5分後。


「ふう。美味しかった。さてじゃあ石を火の上にのせて火を消したら木の上に簡易ベットを作ろう。簡易ベットの作り方は。確か、頑丈で良い感じに二股に離れた枝2つにつたを巻き付けてくものだったな。よし。じゃあまずは頑丈そうで位置も良さそうな枝を探そう。何。木はいっぱいあるんだ。きっと見つかるさ。それに木登りは得意だしね」


 そうして木に登って確認をして。喉が渇けば川の水を飲み探すこと1時間。

 遂に理想的な枝を見つけた。


「よし。枝は見つかった。後はつたを探そう。といってもつたはさっき見つけたから切り取って用意するだけだけど」

 僕はつたを狼の牙を使って切り取っていく。

 まあ、狼の牙を使ってるので切り取るというよりも引き裂くの方が正しい表現かもしれないが。まあとにかく蔦を確保できた。

 蔦を確保出来たら、再度木に登り枝に二つの枝と枝の間をグルグルっと覆うように蔦を枝に巻き付けていく。

 一通り巻き付け終わったら。今度は大きめの葉っぱと虫が嫌う薬草をそこそこの枚数探して千切って、蔦と枝の上に並べていく。師匠曰く耐久性上昇と寝心地上昇と虫よけらしい。それが終わればもう一度蔦を千切り、巻き付けていく。

 巻き付けて巻き付けて巻き付けて。これでもかってくらい巻き付ける。

 巻き付け終わった。その蔦の上に恐る恐る載ってみる。

 びくともしなかった。

 試しにジャンプもしてみる。やはり同じようにびくともしなかった。

 僕の作った簡易ベットは完璧の出来上がりだった。

 まあ。師匠曰く。これは大人も支えられるらしいから体重の軽い子供である僕が支えられないわけがないか。


 ああ。何だろう急に眠くなってきた。

 やっぱり何だかんだで疲れてたんだろう。


 ああ。今日は色んなことがあったな。

 僕のレベル限界が1と発覚した。

 そしてお父さんお母さんに捨てられオジサンオバサンに見捨てられ、司祭様に自殺を進められ。それでも生きようと足掻いて、僕は狼を殺し、その肉を喰らい。自分で簡易ベットを作った。


「ハハハ。凄いじゃないか僕。上出来じゃないか僕。ああ。絶対に生きて生きて生き抜いて。そして強くなって強くなって強くなってやる。でも、取り敢えず今は眠たいから寝よう」


 そうして僕は自分で作った簡易ベットの上で眠りについた。


 ――――――――――――――――――

 スキル説明


【再生】・・・レベル×一定回数以上、部位欠損レベルの怪我を負い、強くそれを直したいと願った者に与えられる補助系統スキル。

 大きな傷でも再生していく力を得る。

 副次効果としてHPが100上昇する。


【火魔法】・・・・レベル×一定数以上。火魔法を行使した場合獲得出来る魔法系統スキル。

 火魔法の効果が上昇し。火魔法を行使する時のMPを減少させる。

 副次効果として魔力が10・MPが100上昇する。

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