第3話・格上殺し

 ピコン

 スキル【痛覚耐性】を獲得しました。

 副次効果により防御力が10・HPが100上昇しました。


 いきなり頭の中で声が響いた。

 その瞬間、あれだけ痛かった右腕の噛まれた所の痛みがかなり軽くなった。そしてこのスキルの力を理解した。


「今のは一体?」


「ガウ」

 僕の疑問を待ってくれる程、狼は優しくなく僕に容赦なく襲いかかり、その鋭い牙を突き立てようとする。

 僕はそれを見て一瞬怯えたが。ここで怯えても何の解決にもならないことに気が付く。逃げてもいずれ体力が尽きて食い殺されて終わりだということに気が付く。

 だから僕は生き延びるために。無事な左腕で落ちていた枝を持ち狼の右の眼に目掛けて突き刺した。


「グルアアアアアアアアアアアア」

 狼の悲鳴が響き渡り。右の眼の所から血が流れる。


「良いぞ。僕はやれる。狼と戦える。さあ来い今度は左眼も潰してやる」

 僕は無事な左腕で再度近くにあった枝を拾い手に持ち一旦狼と距離を取りつつそう叫ぶ。

 これは鼓舞だ。自分で自分を鼓舞している。鼓舞しないと自分よりも大きな狼と戦う勇気なんて湧いてこなかったからだ。

 手は震えている足も震えている右腕は痛みだけが走って動きそうにない。

 でも、僕はやる。やらなければ死ぬ。だから絶対に僕一人の力だけでレベル1の僕だけでこの狼を殺してやる。さあ。やるぞ僕。やるんだ僕。


「グルアアア」

 鋭い爪を向けて僕に飛び掛かって来る。


 僕はそれに対して唯一の武器である枝を投げつけながら転ぶようにして回避して石を拾って投げた。

 何で石を投げたかというと。枝では絶対に勝てないと思ったからだ。


 さっき枝を眼に突き刺せたのはたまたまだ。狼が僕の腕に噛みつき油断してたから出来たんだ。普通は出来ない。

 だからさっきみたいに枝で眼を潰すというのは難しい。


 それに狼の毛皮は固い。枝程度じゃあ簡単に折れてしまう。

 枝が折れずに突き刺せる場所と言ったら眼と口の中くらいだ。

 流石にそれは無理だ。


 だから石だ。


 石は強い。投げて当たれば痛いし血が出る、そこら中に転がってて無くなる心配もない。

 だから石を投げる。距離を取るために走りながら転がりながら石を持ってひたすらに投げた。

 狼に向かって投げまくった。

 幸いな事に右の眼が潰れていた狼はバランスが取れないのかさっき僕を追っかけて見たいに早くは走ってこなかった。


 だからいっぱい石を投げた。よく外すけど投げて投げて投げまくった。少しでも狼に当ててダメージを与えるために。

 その時だった。


 ピコン

 スキル【投擲】を獲得しました。

 副次効果により攻撃力が10上昇しました。


 そう頭に声が響いた。そしてそれが聞こえてからスキルの力を理解した。その瞬間投げた石が面白いように狼に当たりだした。

 投げた石が自分の思った方向に綺麗に当たっていく。

 更に威力も上がった。さっきよりも狼が石に当たったら痛そうにする。当たったら血が出る。


 行ける行ける行ける。

 これは行けるぞ。

 さあ、投げろ僕。石を投げまくるんだ僕。

 行くぞ。


「うおおおおおおおおお」

 そうして僕は狼の右の足を狙って石を投げまくった。

 投げて投げて投げて。狼の右の足が折れた。

 狼が右の足を引きずるように僕に向かってくる。速度は遅い。凄く遅い。

 これならば大丈夫だ。

 僕はそう判断して出来るだけ太くて尖った木の枝を探して拾い、狼の左の眼に刺した。深く深く刺した。刺して刺して刺して刺した。


 そうして枝全てを無理やり狼の頭にねじ込んだとき、気が付いたら狼は動かなくなっていた。


 ピコン

 スキル【刺突】を獲得しました。

 副次効果として攻撃力が10上昇します。


 ピコン

 スキル【格上殺し】を獲得しました。

 副次効果として攻撃力・防御力・魔力・俊敏が10ずつ上昇しました。


 また、頭に声が響いた。どうやらスキルを獲得出来たようだ。だけど今はそんなことはどうでもいい。

 ただ一つ叫びたい思いでいっぱいだ。とある言葉を叫びたい気持ちで一杯だ。だから叫ぼう。さあ、叫ぼう。


「勝ったぞーーーーーーーーーー」

 そして僕はレベル1でありながらレベル12の狼相手に勝利した。


 ――――――――――――――――――

 スキル説明


【投擲】・・・レベル×1000回以上敵に向かって何かを投擲すると獲得出来る戦闘系統スキル。なお。投擲する敵が自分よりも強ければ強い程獲得はしやすくなる。(主人公と狼とはレベル差が10倍以上あったため、狼1回の投擲が10回以上の投擲と判断されました)

 投擲の命中率が上昇する。投擲の威力が上昇する。

 副次効果として攻撃力が10上昇する。


【刺突】・・・レベル×10回以上自分よりも強い敵に刺突を使った攻撃をして致命的なダメージを与えると獲得出来る戦闘系統スキル。なお刺突する敵が強ければ強い程獲得しやすくなる・・・以下同文。

 刺突したときにダメージ量が上昇する。刺突の傷が悪化しやすくなる。

 副次効果として攻撃力が10上昇する。


【格上殺し】・・・レベル×レベル×1回以上自分よりもレベルが10倍以上ある敵を1対1で殺した者に与えられる称号系統スキル。

 格上と戦う際に発生するペナルティーがなくなる。格上と戦う際にステータスが上昇する。格上と戦う際に生き残りやすくなり。格上を殺しやすくなる。

 副次効果として攻撃力・防御力・魔力・俊敏が10上昇する。


 ――――――――――――――――――

 作者から一言。

 格上殺しを獲得する難易度めちゃくちゃ高いと思う。というか獲得は無理です。

 レベル1の状態でレベル10以上の敵を一人で倒すとか無理ゲーやし。普通に死ぬ。仮に倒せたとしても倒した瞬間にレベルが上昇するから倒さないといけない数が増える。一応設定として経験値獲得とスキル獲得だと経験値獲得の方が先に処理されるからスキルを獲得しようとレベル10以上の魔物を倒したらレベルが上がったわけで更に自分のレベルの10倍ある敵を倒さなくちゃならなくて、でもそれをするとレベルが上がるから、更にレベルの10倍ある敵をって感じで永久的に獲得出来ない。ようは絶対に獲得出来ないクソスキル。

 その分めちゃくちゃ強いという設定です。

 まあ、絶対獲得出来ないと言ったが、一応経験値貯蔵の指輪という装備している者の経験値がゼロとなり指輪内に貯蔵されるという神器があるので、それを使えば手に入れれないことはない。まあ、レベル1の人がそんな神器を持つ状況なんては絶対にないだろうけど。

 つまり主人公しか持ってないユニークスキルみたいな感じです。

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