聖騎士団来襲
俺達が活動の拠点を銀嶺亭からイリーナの屋敷に移して二日あまりが経った頃、オストランド聖教の聖書に記された嘘のように赤い『終末の雨』がリントの街に降り注いだ。
『終末の雨』を知る人達は、大いに不安に駆られた。
雨は、夜明けまで降り続けてようやく止んだ。
その日―――――リントの街の門が開けられることは無かった。
聖騎士団が
名目は異端者の摘発だというが実際のところは、教会が子供達を攫い魔力機関を摘出していたという事実を知るものを消してしまうためだ。
俺も街の様子を見に行ったが悲惨なものだった。
いくつかの街区に区切られているリント街の住人は、一つの街区ずつ街の中央の広場に呼び出される。
そして思想診断と呼ばれる簡単な質問をされる。
「おい、娘!お前は、神と教会を信じるか?」
【
「し、信じます!」
「そんな嘘は通用しない。コイツを連れてけ!」
【
口では、信じていると言っても教会が子供達から魔力機関を摘出していたという話を知ってしまっていては、助かりようもなかった、。
「きゃぁぁぁぁ!信じてます、信じてるからぁぁっ!」
「うるさい!異端者めが!」
見に行ったときには既に、捕らえられた者達が数十人は居た。
そして総勢八百にもなる聖騎士達と街の住民たちが見守る中、数人ずつ焼かれていく。
まさに地獄絵図のような光景だった。
「天に昇る煙と共にお前達は、浄化されるのだ!火をつけろ!」
「や、やめてくれぇ!」
「お願いです!後生ですから!」
処罰の対象に年齢と性別は関係なく十歳にも満たない女児までが処罰されていた。
無論、反抗を試みようと武器を持ち立ち上がった男達もいたが聖騎士達の前に歯が立つはずもなかった。
◆◇◆◇
「それは私達のせい」
街の状況を知ったユミルは、後悔するように俯きがちに言った。
確かに情報屋に伝えて情報を流布させようとしたのは俺達だ。
だが助かった子供達が八人もいれば広まるのはどの道、時間の問題だっただろう。
「悪いのは俺達じゃない」
「でもこのままじゃ、多くの街の人たちを見殺しにしてしまう……」
イリーナは、黙って煙の上がる街の方を見つめた。
「あんたもバカね」
俯いて涙まで流し始めたユミルに、ティリスは遠慮せずに言った。
「だって、泣きたくもなるでしょ、私達のせいで街の人達がこんな状況になってしまってるのよ?」
ユミルの言ったことに対してティリスは溜息をついた。
「そう言うときはどうするんだっけ?ここにはあんた以外に三人いるんだから」
ティリスは、そう言うと珍しくユミルを気遣ったのかユミルにハンカチを渡した。
「一人で背負い込んで辛そうにしてるの、カッコ悪いんだから」
ティリスは、言外に仲間を頼れと言ったのだ。
「それも、そう……」
ユミルは、目元を押さえて涙を拭うと俺の目を見据えた。
「お願い、街のみんなを救って!」
俺達で蒔いた種だ、俺達で回収するというのが筋だろう。
「あぁ、そうしよう」
最初からそのつもりだ。
断るつもりなんて一切ない。
そして既にそのつもりで俺の腹は据わっている。
「まずは、状況の整理と作戦を立てるところから始めよう」
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