大魔術師は働きたい
「買い物に行ってきますね」
ユミルが生活必需品を買うために部屋を出てったために俺は部屋に一人、残された。
ベットの上でゴロゴロしたり外の景色を窓から眺めたり……何か家事の一つや二つしようにも、家事全般は私がやるわね、とユミルが率先してやったためにやることは無い。
「んー……何かしないと落ち着かないな」
お金には余裕があるから何もしなくてもいいのだ、しかしただただ働きもせずダラダラしているのは道徳観念的なものが許さない。
働かざる者、食うべからずというやつだ。
「何か働き口を見つけに行くか」
そうと決まれば早い。
窓を閉めて部屋の戸の鍵も閉めると俺は、
大金を部屋においたまま外に出るのは、何とも不用心な気がしたが部屋には第五階梯の魔術による結界を張っておいたので問題はないはずだ。
ちなみにこの結界、ユミルとティリスには効果が無いようにしておいた。
仮に先にユミルが部屋に戻ってきたとして俺が帰ってくるまで部屋に入れないでは可哀想だからな。
大衆食堂の戸口から出て人の視線の切れたタイミングでティリスが姿を現した。
「せっかくご飯食べ終わって気持ちよく寝てたのに連れ出さないでよね」
窓際に置いてあったこの
「それは、悪いことをしたな。今度からは部屋に残るか?」
「それもそれでダメに決まっているわ」
なんだ、こいつ一人じゃ寂しいのか。
「はぁ!?んなことあるわけないじゃない!!」
どうやら無意識のうちに念話をしてしまったらしく俺の思っていたことはティリスに筒抜けだったようだ。
「じゃぁ、なんで一人にしちゃダメなんだ?」
そういう反応をされると少しからかってみたくなってしまう。
「むぅー、そっそれは、私があなたを守る剣だからよ!!」
「大概は、魔法で事足りるぞ?」
一応、人間の行使できる限界が第五階梯(行使できる人間は、ほぼほぼいない)に対して俺は第七階梯の魔術までは行使できる。
命を燃やす覚悟で行使するなら上限解放すら可能だ。
命を燃やすっていうのは文字通りの意味で、大気中の魔素を魔力に変換するだけではなく自分の命を動力源として燃やすことで魔力を倍加させることができるのだ。
「んもうっ、そんなに私をからかって楽しいのね!?アイヴィスなんて知らない!!」
さすがにちょっとやり過ぎてしまったか?
ティリスは、プイッとそっぽを向くと剣の姿へと戻ってしまった。
「悪かったってティリス、お前は俺の大事なパートナーだし俺にはお前が必要不可欠だ。あんまりにもティリスが可愛いもんだからちょっとからかい過ぎたな。なんか美味しいもん買ってやるから機嫌なおしてくれ」
ご機嫌取りも兼ねつつティリスに詫びる。
「かっ可愛いっていえば何でも許してもらえるって思ってないでしょうね?」
再び
「そんなことはないよ。それに俺にティリスが必要なのは本当だ」
「……歯の浮くようなことを言っちゃって……何買ってくれるか期待してるからね」
そう言ってティリスは機嫌を直した。
ちょろいなって念話にならないように気を付けながら俺は思った。
「じゃぁ、そろそろギルドに行こうか」
ギルドは、主要な街にある行政の中心的な場所で求人募集はギルドに行けば一覧で張り出されており職を得たいならまずギルドに行けと言われるような場所だ。
他にも魔物の討伐依頼や害獣駆除なんかの依頼を受領することが可能で職を持たないが腕に自信ありといったような人達が仕事を得るために来ていたりもする。
「どんな依頼を受けたいの?」
「なんだ、ティリスも何かしたいのか?」
ティリスの性格上そんなことはあるわけないと思っていたが――――――
「え、私?私は美味しいもの食べて寝てるだけでいいわ」
やっぱりそうだった。
「それじゃ、太るぞ?」
「大きなお世話よ」
ティリスの肘が
「うぐッ……」
警戒してないタイミングでの不意打ちで反応できなかった……無念。
「
ふんす、腕を組んでティリスは先を行く。
「おいティリス、ギルドはそっちじゃないぞ?」
この
「うるっさいわね!!」
今度は、ティリスの後ろ蹴りを繰り出してきた。
だがそれは想定内、後ろにステップを踏んで
「くだらないことしてないで行くぞ」
このままじゃいつまでたっても目的地に着きそうにないな。
そう思った俺は、強引にティリスを抱きかかえて歩くことにした。
「ちょっ、何を!?って……まだ、心の準備が!!」
ジタバタ暴れるからもう少し抱きかかえる腕に力を入れた。
「もう……どうにでもなれ……」
ティリスは抵抗を諦めて大人しくなった。
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