第5話 日本の絵画、テクニック!


 時は来た。

 10月1日だ。

 僕は緊張しすぎて、睡眠不足だった。


 早速、作業所に朝一番に着く。


 事務所内は、斑済さんや天拝山さん、それにガチムチ青年の犬ヶ崎さん。

 その他にもたくさんのスタッフが応援として、駆けつけていた。


 見学の時にはいなかった利用者の人も何人かチラホラと。

 まだ開所したてだから、6人ぐらいしか来てなかった。


 ボーッとしていると、一人の中年女性が声をかけてきた。

「はじめましてぇ~ 私、運営のものだけど、君はなにを志望しているの?」

「え、ラノベ……しょ、小説っす」

「ふーん、すごいねぇ。ところで、職員を紹介したいんだけど、今いいかな?」

「はぁ……全然いいですよ」

 振り返ると、その中年の女性の隣りに、大人しそうな若い女性が一人。


「ほらほら、利用者さんに紹介して」

「あの、私。今日から配属されました。熟田うれた 蓮根れんこんです!」

「ん……」

(聞き覚えのある名だな。あ、この前、斑済さんが言っていた例の美大のねーちゃんか)


「あ、美大の方ですよね?」

 僕がそう答えると、熟田さんはビックリしていた。

「えぇ! な、なんで私のことを知っているんですか?」

「ああ……この前見学で斑済さんが、蓮根ちゃんって言ってたから……」

 二人して、斑済さんの方を見るが、なぜか彼は知らんぷり。


「私、日本画を書いてるっす! 味噌村さんは興味ありますか?」


 この時、僕は今のところ、小説の講師がいないと聞いていた。

 斑済さんに「なにを習いたいか?」と問われ、僕は「全部です!」と答えていた。

 小説のネタになりそうなものは、全部吸収しておきたいと思ったからだ。


 正直、熟田さんが日本画なんていうから、オタク文化とは縁のないめっちゃお堅い女子だなと思った。


「面白そうですね。ぜひ教えてもらいたいです」

 僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。

「本当ですか!? じゃあ、一緒に日本画を頑張りましょう!」


 一体、いつになったら、オタクっぽいことを習えるんだろうと、不安になった。

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