第4話 職員紹介、テクニック!
僕は見学で心身ともに疲弊していた。
社交不安障害というのは、未だに自分でもよくわからない障がい、病気なのだけど……。
『人に拒絶されるのが怖くて、外や人が怖い』
という症状がある。
だから、初めての土地や人に出会うことは、僕にはとてもハードルが高い。
恐怖や不安、期待でビクビクしていたのに、加えて……まさか自作のあらすじを大声で音読されるなんて思わなかったから。
でも、斬新でおもしろいと感じたのも事実だ。
ここでなら、僕はもう一回社会復帰できるかもしれない。
僅かな希望を胸に。
しかし、その前に所長の天拝山さんに注意をされた。
『福祉のやり方が昔と違って、障がい者の方が自分でいろいろと動かないと福祉が動いてくれない』と。
つまりこの作業所に通うにしても、B型受給者証なるものが必要と言われた。
それがないと通所できない。
そして、これを作るのには、すごく時間がかかるらしい。
まずは相談支援員という人がいる福祉事務所を別個に探し、その人と計画案を作成し、保健センターに申請書を提出。
そこから、発行という流れだ。
長い人で半年間もかかるらしい。
僕はたまたま知り合いの相談支援員がいたから、その人に頼むことにした。
しかし、気になったことがある。
作業所を出ていく前に、今いる職員の3人をながめる。
(誰もオタク文化に詳しくなさそう……)
一人ひとりに聞いてみた。
所長の天拝山さんは
「ガハハハッ! 俺ですか? ただの福祉です」
ガチムチ青年の犬ヶ崎さんは
「俺っすか? 福祉っす! よろしくっす!」
怪しい風貌の斑済さんは
「ん、僕? ただの通りすがりのおじさんてことにしておいて」
ちょっと、意味がわからない。
どうやら斑済さんは運営の幹部らしい。
「ところで、今は教えてくれる講師……先生みたいな人はいないんですか?」
僕の質問に斑済さんが答えてくれた。
「ああ、それなら随時募集しているから大丈夫だよ。
「え、レンコンちゃん?」
「うん。蓮根ちゃんはね。美大出てるから、味噌村さんにはイラストとか教えてくれるんじゃないかな」
「はぁ……」
「ほら、あそこの絵。蓮根ちゃんが書いたんだよ?」
そう言ってフィギュア棚の一番上を指差す。
ニワトリの絵画が額縁に飾られていた。
絵とか僕はよくわからないのだけど、上手いのだと思う。
「まあ、味噌村さんもあれだったら、開所日に遊びに来なよ」
「いいんですか? まだ受給者証もらってないのに?」
「全然いいよ。その日、有名な講師が来るから、話を聞いたらいいよ」
「へぇ……」
というわけで、僕は開所日に遊びに行くことにした。
所長の天拝山さんが言うには、保健センターに申請書をだしたら、後から遡れると言われた。
そしたら、交通費や食事、工賃などもあとから計算して、支払ってくれるらしい。
僕は不安と期待を胸に、来月の10月へ向けて、気合を入れることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます