第26話 D作戦

026 D作戦


大日本帝国が、決定的な大攻勢を行うべく、兵員をハワイ島にあつめていたころ。

合衆国を操る高官たちは、悩んでいた。

どのようにすべきなのか?合衆国に負けはなかったはず、神の国なのだ!

しかし、東海岸の主要造船所を完全破壊されてしまった。

そして、その後の効果をあまり知らぬ人々は、救助や復旧活動にいそしんだのだが、それが逆に悪い結果を産むことになった。

放射線を被ばくしてしまったのだ。

そして、放射能を含む粉塵を吸い込んでしまったのである。

彼らは、確実にその後白血病の症状を呈し、死んでいった。


これでは、戦艦と空母を建造できないではないか!

西海岸では、建造できなくもなかったのだが、国防上の理由でしていなかったが、そうせざるを得ないのではないか?


しかし、そのピュージェットサウンド造船所にも頻繁に爆撃がくるようになってしまった。

高空を高速で飛ぶ爆撃機は迎撃事態が難しい。

自国のB29にそっくりな爆撃機が飛行機雲を引きながらやってくる。

その爆撃機にあれが積まれていればどうなるのか?


これで終わりになってしまう。

太平洋を暴れまわる敵艦隊は、西海岸の都市を虱潰しらみつぶしに砲撃している。

戦艦とはこのように恐ろしいものだったのか!

彼らは、艦砲射撃の恐ろしさを知ることになったのである。


だが、艦砲射撃がいかにおそろしいものだったとしても、射程は50Kmであった。

内陸に少し入れば、安全だ。

敵空母からの艦載機が爆撃にくるが、所詮は航空機、せいぜい800Kg程度、艦砲は800Kgの砲弾(実はこの砲弾を航空爆弾に転用している)が砲塔一機で3発を発射するのだ。


そして、内陸では、味方による邀撃が可能だった。

敵の戦闘機は厄介だが、爆弾を積んだ攻撃機はおとしやすい。

戦いが消耗戦になれば、補給線が伸びきった日本がいずれ折れる。

はずだった。


だが、そんなことを知ってか知らずか、米国あるいはカナダの西海岸には、次々と輸送船が到着し、物資を下ろしていく。

宛先は、インディアンの戦闘部隊である。

彼らはこの地域で、ゲリラ戦闘を開始していた。

終戦までがタイムリミットだった、それまでに自分たちの勢力図を描けなければ、彼らの独立はない。

数百万のインディアンが戦いに向かった。戦前からそのような情報がネットーワーク内で誠しやかにささやかれていたのである。


彼らは、決起した。

なぜなら、彼らはこのままでは、ほぼ絶滅させられるからである。

そうでなくても、飼い殺しにされるはずだった。

それは、インディアン居留地と呼ばれるものの映像を何十人かのインディアンの男達は見せられたのだ、これでは俺たちは家畜ではないか!。


もともと、侵略された上に、絶滅させられる運命の自分たちはどうしたらいいのかなどは、彼らにとっては自明だった。

戦うしかない。自分たちの誇りを取り戻せ!幸いにして、謎の男が大量の武器の供給を行う約束してくれたからである。

そしてその謎の男の親友とは、アバレーエフでこいつは本当に信頼できる奴だったのだ。(無論、アバレーエフからも資金援助などが別途されていた)


かくして、ワシントン州(ピュージェット湾もここにある)一体で橋頭保を築くべく、彼らは、死に物狂いで、戦い始める。


空母のない太平洋艦隊では、帝国海軍をけん制することすらできなかった。

物資は次々と到着していった。

米国にインディアンの国(もともとが彼らの土地だったのだが、集団で結束することをしなかった彼らは、徐々に排除抹殺されていった)を描くために。

終戦時に地図上に存在しない国を認める国はない。


そして、D作戦のために、ハワイ島には、アジア各国の兵が切り取り放題をするべく集まってきているはずだったのだが・・・。

これで本当に大東亜が共栄しているかと聞かれれば、そうだと胸をはっていえるかどうかは知らないが。


そしてその中には、一部ではすでに絶滅したのではないかと呼ばれていた、人々がいた。

ロシア公国による人狩りで、シベリアの地に送られた人々である。

彼らは、生き延びて、切り取り放題に参加すべく勇躍やってきていたのである。

ただし、自分の国がすでに存在しないので、武器の代金は自腹であった。


国を追われた中国人もかなり参加していた。

現在の中国は、大清帝国へと変貌していた。(ただし、面積はかなり小さかった、モンゴルやそのほかの周辺諸国も侵攻し、切り取ってしまったからである)

満州から出撃した満州人が国を作り上げたのである。

その際、多くの漢人を殺戮したことは想像に難くない。


ゆえに、新天地を求めて、故郷を奪われた漢人も自腹で大量にやってきていた。

その幻の民族と漢人を優先した結果、本来の切り取り放題の方向性が変質してしまっていたが、それは問題にされなかった。漢人の数が多すぎるのだ、彼らを送り出すだけでもすべての輸送船を使い何度おくらねばならないのだった。


第1陣は、その絶滅されたのではないかという民族と漢人になった。

彼らは、国の保証がないため、先陣を受け持つことになった。

輸送船には、限りがあるため、何度か、往復する必要があり、第何陣かまで、送らねばならない。彼らの数だけで其れである。アジアの各国の番までは相当な時間がかかりそうだった。


上陸目標は、サンフランシスコだ。

ハワイから一番近い敵基地だからだ。


そして、その作戦を企図した男は、インディアンの国ができる陽動にでもなれば程度にしか考えていなかったのである。

「ジェロニモの手助けになればよいのだがな」

「はい、総長」

「まあ、アジアの血の気の多い連中がいなくなって、米国で暴れれば、アジアも少しは平和になるだろう」

「総長、こころの声が駄々洩だだもれです」

「岩倉、私は何か言っていたか?」

「いえ」

「そうだ、しかし、あの連中がまだ生きていたとは驚きだな、てっきりシベリアで凍え死んでいるとばかり思っていた。やはり寒さに強いのか、ニューギニアで働かせればよかったか?まあ、米国へ、片道切符でいってくれるんだ、感謝しかないな。これでアジアもかなり平和になるに違いない」

「総長!」

「お、もうこんな時間か、行くぞ岩倉」

「は」


近ごろの高野議長は少し変だった。

すでにボケが来ているのか、まだそんな年でもないだろうに。

実は、そうではなかった。

彼の頭の片隅には、数値が表示されている。

その数値が時を追うごとに増えているのだ。

勿論寿命のタイマーではない。増えることはないからだ。

それは、死亡者の数だった。

一連の核攻撃で、死亡している人間の数である。

そして、その数は今も確実に増えている。

朝起きると、かなりの数字が増えている。

重傷だったものが、病院?で死亡しているのである。

その数はすでに45万を超えた。

その数字は、この男にプレッシャーをかけているのだ。

「やるな!女神め!」

このような、常識外の事を行えるものは#$%&女神以外にない。

に違いない。(ただ、そのようなことをする理由は女神にはなかったのだが)

男は空をにらむが、数字は減ることはない。

勿論死亡者がへることなどあってはならないのだ。

きっと、イエスの再臨の時に皆も復活できるに違いない。

この男は、キリスト教徒ではないがそう信じようと必死だったのだ。


だが、こちらの条件を飲まず停戦に応じない米国相手には、もう手段は残されていない。(条件が折り合わないので停戦できなかった。ハワイの独立、インディアン国は認めがたいようである)

D作戦、勿論成功するなどとは思っていない。

これが、うまくいかない場合は、ニューヨーク、デトロイト、ワシントンDCを爆撃するしかない。

占領できなくとも、殺し尽くせば問題は解決する。

そして、その力が存在するのである。

ウラン鉱石は、ロシア公国内でも発見され、濃縮されていたのである。

そして、この男は、この爆弾は完爆しなくても、ダーティーボムとしても十分威力があることを知っていた。処理不能物質をかれる方はたまったものではないのだが。


自らは、米国兵100万人殺戮計画を立てたのだが、自分の命令が、100万人の市民を殺すとなると、話は違ってくる。

米国兵は戦って死ぬが、市民は有無を言わさず蒸発させられるのだ。そんな罪深いことをしてもよいのだろうか?またも男は精神的に追い詰められていたのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る