第24話 MC2作戦
024 MC2作戦
ニューヨーク市街とワシントンDCでは、大きな被害を出ており、消火活動と敵機の迎撃が行われている。
ニューヨークを爆撃した敵攻撃機は、海上にでて行方を晦ました。
「徹底的に捜索せよ、海上に空母がいる可能性がある」
「ドイツの空母かもしれない」
そう、誰も日の丸を見たものはいないし、そもそも、それを潜水艦が運んできたものであるとは思わなかったのである。
暗闇に包まれた海を必死に探しまわる、沿岸警備隊と水上機、そして陸軍の爆撃機達。
まさか、西海岸の動きにあわせて、東海岸を攻撃されるとは!まさかの事態だった。
一体何をしていたのだ!
誰の責任だ!
関心はもはや、人身御供へと移っていた。
現場の大混乱の中、高空を高速で飛行する物体があった。
それは、カナダ北方から低空で侵入し、その後米国航空機のふりをして高空を飛んでいた。
見る人が見ればB29とは違うことはわかったであろう。
しかし、米国もすべて軍事機密の壁で公にしているわけではない。
ゆえに、領空に入ってしまえば、見分けることはできないし、カナダのような大きな国に、敵機が飛んでくるはずはなかったのである。
敵国ははるか彼方にあるのである。
大型爆撃機やってこられる距離ではない。
だから、それを目撃した人がいたとしても、それは味方機のはずだった。
来られるはずがないからである。
米国で最も長距離を飛ぶことができるものでも、太平洋を渡って、日本を爆撃できないのである。その逆もまた真であるはずだったのだ。
B29の航続距離は6000Kmほどである。
ハワイ島から本土を一部爆撃はされたが、北部からくるはずもない。
敵は、すべてその方面からやってくるのである。それが常識なのだ。
だが、それは、B29よりも翼が後退しており、プロペラも2重についていた。
いわゆる2重反転プロペラである。
そして、日本軍機の特徴ともなっている、ウィングレットを備えていた。
色は、濃い青。そして尾翼には、あの忌まわしき親衛隊のTTマーク。
彼らは、カムチャッカ半島に存在する基地から発進した爆撃機だった。
3機編隊である。さすがの帝国といえども、この巨人機を量産するには、時間がなかったのである。2重反転プロペラの製造は至難を極めた。機構的に難しいのである。
それは、ツポレフが作り上げた爆撃機。
「Tu95」その男はなぜか、そのような奇妙な名前を告げる、そういう時になぜかという問いは、無駄である。
そんなとき、男は得たりと「神のお告げである」と、どや顔で嘘をつくのだ。
そして、今や神のお告げにより、空母『ピョートル』の前部甲板には88と書かれていたりする。『神の加護』を得るためにはそうする必要があるのだそうだ。
だが、岩倉も負けじと空母『アレクセイ』の前部甲板に99とかかせたという。
藤沢新高特務大佐が機長を務めるTu95はニューヨークを目指していた。
そして、僚機の一機には、兄の富士夫海軍少佐が乗っていた。
もう一機は、高橋岳一海軍大佐が乗っていた。
高橋は富嶽隊の爆撃隊長を務めたこともあるベテランである。
この特別任務のため、Tu95搭乗を志願したのであった。
「では、高野閣下のために、この攻撃を成功させよう」と親衛隊の新高。
「帝国のために」富士夫。
「・・・・・・」高橋。
「主義主張は違えども、目的は同じである、全機目的へと向かえ」
藤沢特務大佐の声は、冷たく機械的なものを含んでいた。
「了解」「了解」
3機は別れた。爆撃目標が違うのだから当然である。
彼らの攻撃目標は、造船基地である。
ニューヨーク州、「ブルックリン海軍工廠」。
バージニア州ニューポート・ニューズ市にある「ニューポートニューズ造船所」。
メイン州キタリーにあるアメリカ海軍「ポーツマス造船所」。
の三か所が攻撃目標とされていた。
3機は混乱する東海岸へと接近していた。
すでに、赤外線カメラにより、目標は特定され、ニ〇ン製照準器がそれをとらえていた。
照準器が、機の航路を修正し、爆弾投下シークエンスに入っていた。
時速は700Km以上であるため、レシプロ戦闘機で追撃することは、不可能だった。
そして、高度10000mは対空砲からも絶対とは言えないもののかなり安全な場所である。
地上のレーダーがそれをとらえてとしても、敵味方の区別がつかなかった。
爆弾の性質状、正確な爆撃を要する必要はなかった。
爆弾は、勝手に投下される。
計算上の結果がその時間を表示すれば、自動的に投下される。
2トンの爆弾が離れると、明らかに軽くなり、藤沢は操縦かんを引く。
高度12000mまで上昇し、離脱するのだ。
高度12000mはすでに、レシプロ戦闘機が追う高度ではなくなっている。
地上では、巨大なキノコ雲が発生していた。
その攻撃がどのような結末を迎えることになるのか、知っているだけにつらい部分がある。
だが、同胞に使われるよりはましだ。
「ロケットブースター点火」
「点火」
爆弾懸架索につけられた、ロケットブースターがさらに速度を増していく。
秘匿兵器Tu95は、誰に攻撃されるでもなく、何気なく爆弾を落としていった。
その攻撃により、米国海軍の造船能力にとどめを刺すことになった。
東海岸にある三つの造船所がほぼ壊滅した。
そして、米国西部にあるピュージェットサウンド造船所も、同時刻、ダッチハーバーから発進した富嶽隊による、絨毯爆撃を受けているはずだった。
こうして、米国の造船能力に致命傷を与えた作戦は終了した。
兵士、軍属、一般市民(造船所勤務および周辺住民)が数十万の単位で死亡した。
そして、後遺症は、さらに数十万人を苦しめることになる。
かつて戦中、日本の新聞で『新型爆弾』と形容された爆弾、これこそが今回使用された爆弾であった。
和(イコール)号作戦から始まった、今回の一連の作戦。
E作戦、MC2作戦(新型爆弾投下)。
これらの作戦は見事に完遂された。
E作戦もワ号作戦もこのMC2作戦の陽動だった。
核攻撃により、米国艦艇造船基地を完全殲滅するための作戦だったのだ。
それは、E=MC2乗を意味する。
つまり、核エネルギーに関する式を分解して名付けられていたのである。
一人の天才が発見した、理論を具体化したのである。
そうして、数十万人の人間が結果的に死んでいくことになる。
東海岸の造船所は、街の中にあるのだ。
というか、造船で発展した街なのである。
人々は震撼した。
黄色い猿は殺人鬼であった。
しかも、自分たち人類よりも進んだ悪知恵で我々に襲い掛かる。
多くの市民がそう思ったのである。(まさに猿の惑星の具現化である)
そして、東海岸の爆撃とホワイトハウスへの攻撃は、黄色い猿が好きな時に、我々を撃滅できるということを示唆している。
すでに、新太平洋艦隊は壊滅、そして、新型空母の供給基地が完全破壊、そして、今後数年にわたりその地を利用することはできなかった。
五大湖にある練習用空母も撃沈。航空兵の訓練が不可能に近い状態になった。
また、大西洋艦隊の補給修理も難しくなった。
サンディエゴ基地周辺は、瓦礫と化した。
敵大艦隊の艦砲射撃は圧倒的な破壊力を持っていた。
米国政府はついに、第三国経由で停戦条約を打診。
だが、救国軍事会議は、それをはねつけた。
事ここに至っては、降伏しかありえない。
先の事態の意味はお分かりであろう、とはねつけたのである。
ハワイの返還等いまだに、条件を付けていたのである。
ハワイには、各国からの兵力が十万単位で送り出されていた。
アジアの独立国が米国占領のために、兵力を出しているのである。
帝国大連合艦隊は、補給後ただちに、米国西海岸への攻撃を開始していた。
そして、長長距離を飛行するTu95は、今度は大型爆弾を航空産業の工場に向かって投下し始めたのである。
そして、海上から補給を受けた海鵬までもが、米本土を爆撃し始める始末であった。
米国西海岸および、カナダの西海岸でも、インディアンの独立運動軍が活動を開始していた。
ジェロニモと呼ばれる戦士が主導していた。
西海岸の制空権と制海権はすでに、米国にはなかった。
インディアンに対する武器供与は、すでに日本軍からされていたが、人員が増えればさらに危険になることが予想された。
ジェロニモは盛んに黒人に行動を共にするように扇動していたが、彼らの動きは鈍かったという。
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