第22話 わ号作戦完遂

022 わ号作戦完遂


すでに、シャーマン中将は追い詰められていた。

「なんということだ、まったくこちらの攻撃が通じないだと!」

そして、敵の攻撃は確実にこちらを撃破しているのであった。

「黄色いサルごときじゃないのか!」


黄色い猿には、知恵があり、準備も怠りなく、一歩一歩時には、ロングジャンプで進んでいた。


ボロボロになった艦隊、圧倒的とは言うまいが、こちらの方が有利なはずだったのに、結果はさんざんだった。


陸軍航空隊の戦闘機が、敵艦隊に向かっていく。

すでに、十分攻撃範囲に、敵艦隊は侵入している。

今度こそは、打撃を与えることができる!と確信を持てなかった。


敵艦隊上空には、直掩戦闘機があり、戦艦を中心に輪形陣を組んでいる。

次々と、戦艦の主砲が火を噴く。その轟音が届いてくる。

上空では、次々と火球が生じている。

おそらく味方戦闘機が爆発炎上しているのだ。

彼らは鉄壁の対空防御を誇っているのだ。

戦闘機の爆弾では戦艦に効果は薄い。

バイタルパートを突破することは、戦闘機には不可能だった。

そして、敵艦隊は、死戦の覚悟を持って突撃しているのだ。


「敵米国太平洋艦隊を殲滅し、サンディエゴを瓦礫にせよ」

救国軍事会議議長は、今までとは言っていることが真逆だった。

「死んでも、作戦を遂行し成功させよ!」


帝国軍首脳部が、救国軍事会議に変更されたときにすべてが変わってしまったのだ。

「我らは、火の玉となって、敵艦隊に突入せよ」

戦艦部隊の使命はそれだ。


砲が焼き切れるまで、撃ち続ける艦隊。

辺りに、夕闇が迫ってきてはいたが、艦隊の周りは、火砲のせいで明るいくらいだ。

戦艦対戦艦の戦いは圧倒的に、帝国軍が勝っていた。

米国艦隊の戦艦の多くは、フリッツXの爆撃で大破していた。

夕闇が夜に変わっても、レーダー射撃による攻撃を行う艦隊。

すでに、米国戦闘機隊もほぼ沈黙していた。

夜間戦闘を行える技量のパイロットも限られる。

ほぼ、全員が戦死か行方不明となっていた。


戦艦大和は手ひどく爆弾を浴びていた一隻であったが、戦闘には支障なかった。

武蔵も同じである。

そして、神武は、これまたほぼ無傷だった。

航空機を寄せ付けなかったのである。

大和との違いは、戦艦の何か所かに、ドラム缶のような砲が設置されており、それが、戦闘機に対して、まさしく猛烈な銃撃を浴びせたのである。

それは、まさしく、ガトリング砲であった。

ひそかに開発がなされ、高野艦隊にのみ配備されていた兵器の一つである。


「戦闘艦すべては、敵艦隊を排除し、敵基地を砲撃せよ!」

「繰り返す、敵基地を砲撃せよ」


すでに、辺りに敵艦はなく、激戦の余韻だけが残っている。浮かんでいるものは、戦闘の残滓、オイル、木片、ドラム缶、死体などである。

サンディエゴ沖50Kmの地点で、大和型戦艦、改大和型戦艦、およびそれ以外の戦艦が仰角45度に主砲をもたげる。


「て~!」

ドンドンドン、ドド~~ン。

戦艦であることを証明するための砲撃が夜闇を切り裂く。

敵基地といっているが、狙いは都市のすべてである。

総力戦では、敵とは、敵国のすべて、敵の都市は基地なのだ。

りゅう弾、サ式砲弾が多用される。あたり一面が火の海か爆発で吹き飛ばされる。



サンフランシスコの時は、まだ基地を狙って砲撃していたが、今回は違う。

撃ち漏らしがないように、着弾観測機を各艦が飛ばし、地図を埋めていくのだ。


米国のPTボートが攻撃を仕掛けてくるが、こちらの駆逐、巡洋艦が、反撃する。


そのころ、その艦隊よりはるか後方100Kmの地点に、輸送船を改造した、ロケット砲艦が十数隻やってきていた。

一隻につき、50発のロケットが積まれている。

炸薬は1000Kg、50発で、50トン、10隻で500トンである。

そのロケット砲艦から、次々とコロリョフのロケットが発射されていく。

ロケット自体があまり正確に攻撃できないため、数撃ちである。

それは、ドイツ帝国のような、液体燃料式ではなく、個体燃料式なので、簡単で安く作ることが可能だった。


500発以上のロケットが空を舞う。

ロケットは適当に落下して、街を破壊する。

一トンの炸薬が大爆発を起こすのだ。

街の人々はラジオを聞いて、逃げてくれたのだろうか?


おそらく、深夜だったので、聞いていなかったのではないだろうか?


その時、それは起こった!

暗闇にものすごい閃光が起こる。

桁違いに大きな爆発!


「なんだ」それは、帝国軍の戦艦の艦橋でも視認できた。

「一体、あれはなんだ」


ゴッゴゴッゴオオオオ。凄まじい爆発音と衝撃波が艦橋の窓をたたく。

稲光が巨大な雲の周辺で起こっている。


「サンディエゴ基地に、核が持ち込まれていたのではないか」

戦艦神武にいる男は、そういった。

「恐るべきは、やはり米国だ、危うくやられるところだった」

「しかし、この自爆で、サンディエゴはほぼ壊滅したのではないか?」

「全艦に撤退を指令、あの爆発からくる灰を浴びぬように、急速離脱を開始せよ」


「わ号作戦終了。作戦の目的をほぼ達成した」

多くの、将兵が衝撃を受けていた。

将官の中には、それがある男に見せられた映像の中にあったものであることを確信する。


「奴はあれを使ったに違いない」心の中で何人かは思ったが、口には出さない。

戦争には、人道などない。勝ったものが、負けたものを裁くのだ。

我々はまだ、負けていない。将官には、東京裁判で死刑判決を受ける映像を見たものも多くいるのだ。

しかし、原爆を落とした者たちが、裁かれるシーンはない。

戦争犯罪に問われていないからだ。


そして、わ号作戦はE作戦を成功させるための陽動でもあるのだった。



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