第19話 サンディエゴ沖海戦
019 サンディエゴ沖海戦
「全艦、戦闘を開始する。全速前進!」
救国会議議長の高野九十九が全艦に命令を通達する。
空母輪形陣から戦艦輪形陣へと切り替わり、進撃を開始する大連合艦隊。
輪形陣の間は、1KMほどである、空母は枠外に置くので、お互い接近しても問題ない。
空母は、退避をしている。
今回の戦いでは、敵艦隊が前進してこないことは確実だった。
前回、サンフランシスコでは、長駆した陸軍の戦闘機が帰還できず多く散った。
ゆえに、陸軍の協力が必要な米海軍は積極的に前にはでて来ないであろう。
という見立てである。
だが、それはこちらの方の空母が圧倒的に多いという、こちらの考えから推し量っていた。
だが、米国海軍では、先の戦いで日本空母をかなりの数を撃沈確実という手ごたえを持っていた。もちろん、それは沈没していた。だが、空母の偽装をした輸送艦だが。
偽装していなくても、輸送艦を空母と間違えて計算した実例は実際いくらでもあるのだが。
ゆえに、1000Kmという距離をさらに近づかなければ戦えない。
空母戦はお互いに500Kmまで近づかなければ都合が悪いのだ。(できないということではないが、ちょうどよいらしい)
しかし、シャーマン中将は、光明を見つけて、こちらも突撃を指示していたのだ。
エセックス級が8隻、たとえ航空戦になっても、互角かそれ以上に戦える、なにせ、奴らの空母は搭載機数が少なく、数も多くはないはずと思われたからである。
米国側は、敵艦隊輪形陣をサンディエゴ沖1200Kmで発見する。
B17等の長距離爆撃機による偵察であった。輪形陣は少なくとも2つ。
「先手を取った、よし一番近い艦隊から攻撃機を出せ」
米国海軍はサンディエゴを中心に、沖合200Kmのところに、空母輪形陣を8つ10Kmづつの距離をおいて準備していた。
そして、その後方の陸地には、陸軍の戦闘機等が特設基地を作り待ち構えていた。
一方帝国海軍はおそらく敵艦隊がかなり海岸近くに張り付いて、こちらが近づくのを待っていると考えていたのだが。
米海軍のエセックス級が高速で発見した日本艦隊へと近づき始める。
「見つけられましたな」
艦上ではそのような会話がなされていた。
「まあ、ここは敵地、仕方ない。」
発見された、爆撃機はすぐに追い立てられ撃墜された。
しかし、通信は確実に行われた。
「どうしますか」
「まだ、距離はあるだろう、レーダーピケット艦に打電、『敵に発見さる、索敵を厳にせよ』だ」
帝国および公国の輪形陣では、艦隊の前方100Kmにレーダーピケット艦を配置することになっている。
いかなレーダーといえどもできるだけ早くから発見するにこしたことはないからである。
そして、それはレーダー先進国が採用したものである。
この時間軸のレーダー先進国の日本は、これを採用したのである。
それと、同時に、海鵬にレーダーを採用した、海鵬レーダー型が艦隊に随伴しており、いざという時には、空中管制を行うことになっていた。
帝国航空機隊は、陸上に近づくまでは、出番はないといわれていたが、米国側は、積極攻勢に出ており、早くもレーダーピケット艦がそれをとらえたのである。
直ちに、その情報は艦隊司令部へと通報される。
輪形陣の後方100Kmに退避している空母の所属戦闘機隊、攻撃機隊が、次々と発進していく。
敵は、すでにこちらを攻撃圏にとらえているということは、その圏内に敵空母もいるということであるからである。
攻撃機隊には、余裕があるが、戦闘機隊にはない。
今すぐにでも、自艦隊の前方に到達する必要があるからである。
前回の海戦では、敵空母が存在しないため、攻撃機は無かったが、今回は空母8隻が確認されていることから、攻撃機を搭載している。
これらの情報は、パナマのラジオ放送と、潜水艦隊からの情報で確認されている。
「敵艦隊が、思ったより前進しています、司令官」
「そうだな、案外釣り野伏をねらっているのかもしれん、しかし、今回はあえて乗ってやろう。全機発進せよ。戦場をにぎわせてやれ。魚雷を撃ったら、直ちに帰還することを、徹底させよ、送り狼は必ず殺せ」
総司令長官高野が命令を下す。
高野艦隊戦艦内は、高野親衛隊しかいないので、速やかに命令が実行される。
大連合艦内部には、反高野もかなりいたが、戦争としては、今ここで勝たねばならないことは確かであるので、やはり実行される。
高野艦隊上空には、空母加賀からの戦闘機隊がカバーにやってくる。
空母群は後方100Kmだ。
そして、そのほかの超空母からは、戦闘機40機と攻撃機80機がそれぞれ、敵艦隊攻撃へと向かう。
そして、米国艦隊はエセックス級から100機の航空機を出していた。戦闘機40、雷撃機30、爆撃機30である。そして、自分たちの上空は、軽空母から発進した戦闘機25機が守っていた。
ただし、エセックス級は8隻だけなので、全体で800機が攻撃に向かうことになる。
一方、帝国側は、連合艦隊で1200機、自称、高野艦隊で720機の1920機が発進していた。
まさに、空を埋め尽くすほどの航空機が入り乱れることになる。
戦闘機対戦闘機の戦いが始まる。まさに殺し合いだ。
この時の米国の戦闘機はF6F、帝国は紫電改が主だった。
そのすきをついて、その他の機種の航空機が敵艦隊へと進んでいく。
しかし、その前に、まずは大和型の46センチ主砲が、対空砲弾を発射する。
そして、時間をおいて、改大和型の41センチ主砲が次々と火を噴く。
空に、大火球が花火のように花開く。
おそるべきサーモバリック弾が死の華を開かせる。
戦艦に、躊躇は一切なかった。あるだけ撃て!と命じられていたのである。
この主砲は、敵機が10Km以内に入れば使えない。同士討ちを起こす可能性が高いためである。
それでも果敢に突進する米国海軍機。
今度は5インチ砲の対空砲弾が一斉に火を噴く。
射程10Km以内はこの砲で迎撃する。
そして、5Km以内になると、ボ式40mm機関砲が、さらに近づくと、ブ式20mm機銃がレーダーに連動して起動して撃ってくる。ようやく、人の顔が見えるとそいつは12.7mm機銃を撃っていた。
それは、まさに死の雨のように見えた。光の滝のようだ。流れは逆だが。
曳光弾が、そのように見えるのだ。
特に爆撃機はそれが甚だ顕著だった。
まずは、真上に行きたいところだが、それが難しい。
そして、60度以上の角度で急降下を開始する。
次々と命中弾が、機をえぐっていく。
レーダーと電動油圧は冷酷にそして確実に仕事をこなしていく。彼らに感情はないのだから。
それでも、大和、武蔵の機銃に爆弾が命中して爆発炎上が起こる。
米海軍も決死の覚悟で攻撃しているのだ。
駆逐艦は、魚雷攻撃を回避する。
それが、たとえ戦艦に直撃しても。
「貴様らの艦はよけろ、空母の盾にいっても、戦艦の盾はいらん」
司令官自らが言い放ったのである。そして、大和、武蔵に魚雷が数発当たったところで、それで沈むことがないことは、その男はよく知っていた。
万全のダメージコントロールも施せば、ほぼ沈めることは不可能だ。
「敵大型爆撃機!」
艦橋では、次の敵を感知した。
「空母ピョートルに打電、敵大型爆撃機を撃破せよ」
その命令は直ちに打電される。
空母ピョートルにはいまだ発進していない戦闘機隊が存在した。
「大尉、発進命令が出た。敵大型爆撃機だ、直ちに迎撃に迎え、空中管制に従え」
「ラジャー」
史実のF5タイガー2に非常によく似た戦闘機である。
機全体を真っ赤に塗られている。異色の戦闘機隊。日本名は「震電改」
そして、その配色は、リヒトフォーヘン航空大学校で敵役を務めるアグレッサー飛行隊。
特901航空戦闘団である。
空母ピョートルに載せられているのは、リヒトフォーヘン中隊16機。
空母アレクセイに載せられているには、ベルケ中隊16機。
「皆、頼むぞ」
「了解であります、決して生きては返しません」それはかつてレッドバロンと呼ばれた男の息子だった。
油圧カタパルトが一気に、真っ赤な戦闘機を加速させる。
そしてそれは、もう一隻の空母でも同様の事が行われている。
戦闘は始まったばかりであった。
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