第17話 大艦巨砲主義
017 大艦巨砲主義
大和型3番艦、4番艦、歴史の中では計画されはしたが、変更され3番艦は空母信濃になり4番艦は廃止された。
だが、この世界軸では、日本は空母不足にはなっていなかった。
ゆえに、計画通り建造されていた。
それどころか、「大鳳」「雲竜」「剣」「葛城」の4隻が就航し、さらに米国からの鹵獲空母も存在した。
米国では、撃沈したと思われている空母も全く無傷(真珠湾奇襲により損害を受けたが、修理完了)で存在した。
それに加えて、高野艦隊が存在していたのである。
3番艦「紀伊」4番艦「尾張」が竣工した。
機関は実験的にガスタービンエンジンを搭載、ターボエレクトリック駆動とされた。
この世界の日本では、ジェット推進機構の発展が著しいのである。
武装は、46センチ50口径3連9基、15センチ3連装砲2基(舷側の2基は廃止)、5インチ両用砲、対空砲を完備した。艦型はかなりスマートにさせ、ガスタービンを採用したことにより、速度が上がった。最大32KNである。
そして、伊勢、日向、山城、扶桑の旧型戦艦は、艦橋を防空用に改良し、後部主砲を撤去、エンジン部分をガスタービンに換装し、後部甲板にヘリを搭載する、航空戦艦へと生まれ変わっていた。
これらの建造や修理が速やかにできたのは、戦前から、造船所やドックを高野造船が買収して守ってきたために対応可能とすることができた。
史実の日本では、空母戦艦の整備が手一杯でとてもその余力は無かったのである。
それにプラスして中国戦線を開かなかったこと、朝鮮併合をやめ、資本投下を最小限にしたため、予算と人材が十分にあったことが上げられる。
戦艦は日本の真珠湾攻撃により空母の方が優れていると認識され、次第に廃れていったのだが、戦艦不要論、それに輪をかけたのが大和特攻である。
浮沈戦艦として建造された大和が沖縄に特攻し敵艦載機群に撃沈されたのである。
だが、そもそも大和側に護衛戦闘機隊があれば、大和が簡単に沈んだのか?と言われれば全くそんなことはありえないであろう。
両舷の15センチ副砲の撤去後の装甲が問題だったとか、煙突に欠陥があったとか・・・など言われるが、通常の運用をすることができれば全く違った戦果を残したに違いない。
そして、この時間軸では、大和型(すでに4隻も存在、ついでにゆうと、改大和級も6隻も存在)は防空レーダーシステムと対空砲を備えている。さらに、対空用砲弾(サーモバリック弾頭)まで用意されている。そのような戦艦を航空攻撃で沈めることは至難の技と言わざるを得ない。
さらに、艦隊護衛用空母すらも存在しているのである。
そして彼ら戦艦の目的はすでに対地攻撃用として運用されている。
つまり、運用方法が適切であれば、戦艦は非常に有用なものなのである。
ただし、運用に非常に金がかかるため無制限に作ることはできず、それはデメリットといえるのかもしれない。
結果だけ見るとかつての大艦巨砲主義が残っているかのように見える。
それら戦艦群は、和号作戦のため、今、オアフ島近海に集結しつつあった。
和号作戦では、サンディエゴに集結しつつある米第5艦隊を撃滅し、同地に戦艦の巨砲を大量に撃ち込むことになっている。
前回のサンフランシスコ攻撃の時には、空母がなかったため、米国は破れたが今回は、パナマ運河を復旧し、エセックス級空母を多数!用意して艦隊決戦に及んでくることが予想される。
そして、同地に近づけば、陸軍の航空機がまたも大量にやってくることになる。
ここでもまた、米国の破壊的なまでの生産力が発揮されることになるだろう。
つまりは、いくら破壊しても次々とベルトコンベアーで生産されて出てくるようなものである。
サンフランシスコ戦では、数千機の航空機が撃墜あるいは破壊されたことは記憶に新しい。
また、少し前までは、全ての空母が撃沈あるいは鹵獲され、太平洋方面での稼働空母ゼロという状況に追い込まれていたものが、少なくとも6隻以上のエセックス級空母、アイオワ級戦艦2隻は確認されているのである。ほかにも軽空母の存在も予想される。やはり米国の工業力はものすごいというしかない。
・・・・
オアフ島太平洋艦隊司令部。
太平洋艦隊司令長官は、南雲大将である。
中将から大将へと昇進したのである。
南雲は、海軍の軍服を着ていない。
黒軍服である。
これは親衛隊の制服である。
早くから、洗脳を受けてきた南雲はいち早く救国軍事会議に参加している。
南雲は、高野と同期、本人が知る由もないが、自分よりも年下である。2歳ほどごまかして、あの男は兵学校に入学している。
そしてそのころから、洗脳を受けているため、高野(貴様)の意見は私(俺)の意見だ。
と言えるくらいに心酔している。すでにこのレベルまで行くと自我の存在すら危ういといえるかもしれない。
「此の作戦では、わが艦隊にも被害が出ます。」海軍の白軍服を着た参謀が意見を述べる。
「参謀、此の作戦を実施しなければ、E作戦を成功に導くことはできん」
「ですが、本当に、E作戦で米国の建造能力は下がるとはとても思えません」
E作戦では、東海岸の造船基地をイ400型潜水艦の搭載機により爆撃するというものである。多少の効果は有るだろうが、激減できるとは到底思えなかったのである。
「かもしれん、だが高野の作戦は絶対だ!私はやるだけだ!貴様ができんというなら、国に帰れ」
「いえ、そのようなことは言っていません。救国軍事会議には反対ですが、お国のために戦うという私の考えは変わりません」
「そうか、では準備を進めよう、たとえこちらに被害が出ようと、高野の艦隊が決めてくれるはずだ」
もちろんそんなことはないのだが、南雲大将はそう信じて疑っていない様だった。
オアフ島には、艦艇が次々とやってきていたが、ハワイ島には、航空機が続々とやってきていた。
富嶽(B29)部隊が続々と到着し、海鵬(2式大艇)も続々とやってきていた。
富嶽の中には、背中に円盤を背負った奇妙な形のものも見受けられる。
これはいわゆるレドームであり、空中管制機能を持っている。
富嶽のエンジンはターボプロップである。
爆弾搭載量がB29よりも多く、しかも長距離を飛ぶことが可能である。
彼らの攻撃方法はフリッツXを投下するのだが、フリッツXの煙突好きは有名で確実に空母か戦艦の煙突に向かって落下する。
だが、一端爆発すると全てのフリッツがそこに向かって飛んでいくという悪癖は治らなかった。
マイクロコンピュータが開発されていれば、次々と目標を変更したり、初めから特定の艦を狙う事も可能であったろうが、さすがにそのようなコンピュータはまだない。
そこで考え出された方法が、第1次攻撃で放火し、第2次攻撃でフリッツを落とすというものだった。そのため考案された爆弾が「タ弾」である。
これは、一定の高度になると爆発し子爆弾(焼夷榴弾)を半径500mでばらまくという物である。
実験では上手く行ったのだが、実戦でははたしてうまくいくものなのか?は不明であった。
空母艦載機もオアフに入りきれない分がハワイ島にきている。
スカイレーダーはなぜか濃緑色の迷彩仕様で塗装されているが、恐るべき爆弾搭載量を獲得している。爆弾投下後は戦闘機に早変わりできるほどの性能を有している。
今回の作戦では、爆装ではなく、雷装で出撃すべく訓練にいそしんでいる。
爆撃機用に開発されていた4列28気筒星型エンジンを使用することにより、強力な馬力を獲得している。
但し、このエンジンの開発完了前に、ターボプロップエンジンが開発されたため、爆撃機への搭載は見送られた、悲しきエンジンでもある。
すでに、誰が作戦を立てているのかは不明だが、急降下爆撃は今回行うことはないことが通達されていた。
全てが雷装である。そのために魚雷が大量に空母に搭載されているらしい。
一部の搭乗員からは、本当に大丈夫なのか?救国軍事会議は?という動揺が見て取れる。
親衛隊の空母には、謎の新兵器が多数積み込まれている。
そして、その新兵器は魚雷らしい?今までのものとはまるで違う形。
これらの魚雷?は、SX改潜水艦にも供給されることになっている。
なんでも、またあの男が、夢で見た兵器をコロリョフ博士に製作を依頼したらしい。
しかし、魚雷をロケットのコロリョフ博士にお願いするなどとは、もはや、高野中将は頭がおかしくなったのでは、と救国軍事会議に同情的な兵士すら思ったのである。
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