第14話 ジェロニモ

014 ジェロニモ


救国軍事会議は帝国軍司令部を掌握した、高野武装親衛隊は、黒を基調にした軍服をきており、帝国軍の制服よりもはるかに豪華である。

高野九十九のイニシャルをとってTTとTが重なった記章を付けている。

救国軍事会議に賛同する士官は襟にTT記章をつけるようになった。

彼らは、戦後の軍事裁判(東京裁判)で有罪確定である。


そんな中でも、高野信派は以下のように参加している。

まず航空隊は陸海軍に存在するが、その多くは、リヒトホーフェン航空学校卒であるため、ほぼ全てが賛同している。


海軍 空母機動艦隊(南雲中将)

   潜水艦軍(小松中将)

   高野機動艦隊(自身が命令する旧第21、22艦隊)


陸軍 第99師団武装親衛隊(いわゆる高野親衛隊が名を替えたもの) 

 第100建設師団(通称であったが、ほとんど陸軍工兵隊と同じ扱い、元百瀬建設)

   第1戦車師団 (通称:マンシュタイン師団)

   第2戦車師団 (通称:ロンメル師団)

   超兵連隊 (第666連隊)戦闘ヘリ部隊

   関東軍 (石原大将)

   島嶼展開陸軍 (山下中将など)


   ANT師団(原住民による混成師団、超兵連隊が指揮している、Aはアボリジ    ニ兵、Nはニューギニア兵、Tは台湾の高砂族兵を意味する)


海兵 第1海兵師団(乃木大将、弟)

   第2海兵師団(乃木大将、兄)


護衛総隊 有栖川宮大将(アジア各国からの帝国本土への物資の輸送、護衛を行う)

憲兵隊 東条中将


主な者でもこれだけの者たちが賛同した。

そして、賛同しない者も変わりなく使われることになる。


・・・・・・


ミシガン湖のほとりに、一人のインディアンが立っていた。

彼の名は、ジェロニモ。

長い戦いの中で顔のしわが増えて、実年齢よりも年寄に見える。

だが、彼の実年齢を知る者はいないのだが。

彼は、反白人の闘士である。デトロイト他で、インディアン独立のために戦ってきた。

日本が米国と戦争を行っている間は、米国内(元々は彼らの土地であった)で暴れ放題だったが、休戦に入ると、警察や州兵の取り締まりが厳しくなった。


仲間であるはずの黒人達はなぜか、戦争が始まると軍属として戦争に協力するようになってしまった。何故なのか?ジェロニモにはわからなかった。

かつて、今もだが支援してくれる日本人?(本人はロシア人といっている)と自分たち、黒人たちで、ともに戦っていたのに。


やはり、もともと住んでいて土地を奪われた憎しみと連れてこられて、労働させられる奴隷の憎しみとはちがうのだろうか?

俺だったら、戦うが・・・。


こうして、お尋ね者になっても、カナダから違法入国して戦い続けるジェロニモ。

彼らは、取り締まりが厳しくなると、カナダに逃れ、追手が追うのを辞めると、再度攻撃を行うのだ。いわゆるゲリラである。


だが、今回は、再度戦争が始まったため、大きなチャンスではないだろうか?


数十人のインディアンの同志が彼とともに戦っている。

米国人からすると、テロリストになる。


自分の偽名あてに、手紙が届いた。

かつて、一緒に戦ったロシア人である。

「ジェロニモ、カナダのとある倉庫に、日本のPTボートがある、これを使い五大湖で発着艦訓練を行う空母を雷撃してほしい」


果たして、ボート(クルーザー)は廃屋の倉庫に三台があった。

いつの間にこのようものを用意したのか?


そして、ミシガン湖には、その訓練用空母が今、沖にいるのである。

しかも、さすが米国2隻もいるのだ。

「上手くやってくれ、成功報酬は、いつもの口座に振り込む」

と書かれている。


別に金が欲しい訳ではないが、戦いに金はいる。


すでに季節は秋、沖に出ればかなり寒いであろう。

だが、自分を押しとどめるものは何もない。奪われた土地を奪還するために戦わねばならない。それが戦士としての仕事なのだから。


寒風を切り裂いて、ボートは進む。偶に大きく跳ねる。湖とはいうが、ほとんど海と変わらない。それほどの規模なのである。

海のようにちゃんと波も立つ。嵐にもなる。


航空機の動きを見ていれば、空母の方向はわかる。

今、帝国製PTボートは湖面をその方向に向かって滑走している。

強力な馬力のエンジンが高速を生み出してくれる。


誰もが、勿論、練習している航空兵もそれが敵国のものなどと知る由もない。

此処は、合衆国のど真ん中なのだ。だから、空母の発着艦練習を行うことができるのだ。

豪勢なことに、改造空母二隻が並行しつつ、着艦訓練を行っている。


此の作戦がどれだけの破壊力があるのかは不明だが、ジェロニモはやる気だ。

彼は戦士、死に場所を探しているのだ、収容所で死んでいくなど許容できるはずもない。


今また、F4F戦闘機が着艦する。

「撃て!」ジェロニモは無線で怒鳴った。



急速に接近するPTボートは米国海軍の物と酷似しており、塗装も軍用なので、まさか敵のものであると考えるものはいなかった。そもそも、この演習用改造空母には武装はないのだが。


容赦なく魚雷が投下される。

まさに外れる筈もないほどの至近距離でそれは発射されたのであった。


白い航跡が不気味に近づいてくる。

艦橋の士官は何が起こっているのか理解できなかったが、危機感はあった。

思わず、声を上げてしゃがみ近くのものに捕まった。


ドドーン、ものすごい爆音と水柱が立ち昇る。


それが一隻に2発も起こった。

輸送船の改造空母のため、正規空母のような防御隔壁などはほぼない。

どてっ腹に大穴が開き、たちまち大浸水が起こり、艦が傾斜を始める。

甲板上の戦闘機などが、滑り落ちていく。


横を行く別の練習空母も同じような運命をたどりつつある。

一斉に、避難のために、救助艇を降ろし始める。


しかしそれを無情にも邪魔する輩が存在した。20mm機銃をその救助艇目掛けて撃ってくる。外れようもなく、艇の底などに穴が開き、木片を飛ばす。


PTボートは沈む空母の周りを航行しながら、銃撃を加えていく。

練習のため空中にも戦闘機は存在したが、銃弾自体は搭載していなかった。

PTボートは自由に死をばらまきながら、空母2隻「セーブル」と「ウルバリン」、その乗組員とたまたま乗り合わせたパイロット達(練習生)を沈めていった。


ジェロニモは初めて、これほど決定的な勝利を掴んだ。

数千人をたった数十人で死滅させたのである。

快挙といって差し支えない。


米国にとってこの出来事は大きな痛手となった。

艦載機のパイロットの修練を湖でできなくなってしまったのである。

今、太平洋上は日本が、大西洋上はドイツの潜水艦が跋扈ばっこし危険なため、これほど好条件で演習することができる地(水上だが)はないのであった。


こうして、ジェロニモは大戦果を上げ、早々にカナダ国境の山岳地帯に逃げ延びたのである。

この犯罪者をおって、アメリカ陸軍がカナダの山岳地帯を山狩りするが、山間部での戦闘は、インディアンの方が一枚上手であり、狙撃銃も性能の良い物を持っているらしく、次々と狙撃による死者を生み出す結果となってしまったのである。


そして、この快挙が差別される有色人種に一種の勇気を与え、五大湖周辺で、暴動が多発することとなったのである。









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