第13話 わ号作戦
013 わ号作戦
クーデター政権の『救国軍事会議』が誕生し、国民にラジオ放送されることになる。
N〇Kのラジオ放送である。
「皆さん、こんばんは。私は、救国軍事会議議長の高野九十九であります。今般残念なことに、休戦状態は破られ、交戦状態へと突入したことをご報告しなければなりません。個人的には、予備役として軍から身を引いた私でありましたが、暗殺事件に直面することになりました。その中で私の護衛が命を落としました。」
・・・・・・長話は続く。
「そして、軍部は、恐慌状態であり、全く反応することができない事が判明いたしました。実際には、休戦状態にはいった時には、警戒を怠らず、再戦の時のために準備することとなっていたのです。
今、私は、軍部では今般の事象に対処不可能であることを確信し、救国の志を共にする同志達とともに巨大資本主義帝国と戦う意思を固めました。人は私たちをクーデター政権と呼ぶかもしれません。ですが、国を思う気持ちだけは本当であることを、信じていただきたいのです。」
「我々は、過激な事を行うかもしれません、しかし、これはこの国が生き延びるために必要な事なのであります。国民の皆さまが我々救国軍事会議を信じてともに戦っていただけることを希望します。」
・・・・
国民向けに胡散臭い、演説を行う一方、軍部は、確実に高野を中心とした布陣で動き出す。
軍事同盟についても従来通りの方針を確認し、満州軍、ロシア軍への武器供給を多くする程度の変更である。
ロシア公国は、ソビエト、ドイツ軍との戦い、満州軍は、中国への侵攻。満州軍は満州国の防衛。
陸軍は来るべき決戦に向けて、豪州方面、米国西海岸への進出の準備と編成が行われる。
太平洋岸のアジア諸国の独立国は、インドに向けて、兵を送り出していた。
内陸部の国で中国と陸続きの国は、中国への侵攻作戦である。
インド洋上には、帝国海軍機動部隊が、それを支援している。
インドを独立させ、英国の戦力を削るためであった。
ハワイで攻撃を受けた海軍機動部隊は、修理を終え、米国攻撃に向けた準備を行っていた。
中国の分割支配とインドの独立は以前より計画され、一旦事が起これば作戦が開始される準備は行われていたのである。
そして、高野グループの造船所では、休戦中も新型潜水艦の建造が進められていた。
日本が世界に誇るSX型コンセプトを継承しつつ、イ400型潜水艦が建造されていたのである。
そして、SXイ400型はすでに12隻竣工し、すでにアルゼンチンの某所、高野に協力する企業(アバレーエフ傘下)が用意した基地に集結、補給を受けていたのであった。
SXイ400には、V12型エンジン搭載の攻撃機3機が搭載されており、800Kgの爆弾を搭載することができる。12隻で36機の航空機を運用することができることになっていた。
この潜水空母による東海岸奇襲攻撃作戦を『E作戦』と呼ぶ。
そして、『E作戦』の陽動を行うために、太平洋上での決戦を挑む計画である。
この陽動作戦を『わ号作戦』と呼ぶ。
今、ハワイ方面には、多数の艦船が集結していた。
だが、米国とてそれは同じだった。サンディエゴには、エセックス級空母とアイオワ級戦艦が多数集結していた。パナマ運河を修理し、やってきたのである。
斯くして、休戦前のサンフランシスコ沖海戦の再来がサンディエゴで起ころうとしていたのである。
ここで状況を確認しておこう。
現在、米国大統領は、トルーマンである。
しかし、彼は精神的に不安定であり、静養している。
重度のPTSDであった。
だが、国民はその実態をしることは無かった。
よって、現在の国政を掌握し、
そして、太平洋艦隊が養成できたころを見計らい、同時的攻撃を仕掛けたのである。
だが、たった一人の男の暗殺に失敗したことにより、次々と個別に撃破される状態になってしまった。
その中でも、豪州はひどい状態になりつつあるという情報がというか悲鳴が届いてくるのである。
豪州の東海岸方面に上陸した日本の機甲師団は圧倒的な攻撃力で、アフリカ戦線から帰国したアンザック軍を一撃で葬り去ったという。それからが、悲劇の始まりだった。
日本軍(多国籍混成軍)が新型航空機から市民に対して攻撃を仕掛けてくるというのだ。
ある町は、一人残らず殺されたという噂がまことしやかに流れているという。
日本戦車は、90mm砲を装備し、此方のM4戦車など一瞬で打ち砕くという。
しかも新型航空機、これは、米国でも研究中の回転翼機で、そこから、重機関銃の弾がばらまかれているという。これは、まさに地上軍の天敵とも言える存在で、全く歯が立たないという。
豪州政府は、直ちに、米軍のハワイ攻撃と豪州に対する援助をしなければならないと激怒して、米国外交官に
「なぜ、暗殺が上手くいかなかったのだ、高野ナインティナイン暗殺がこの作戦の発起点なのだぞ」
スチムソンが不機嫌にキングに文句をいう。
「それは、特殊部隊に問題があったのではないか?」特殊部隊は海兵隊の特殊部隊であった。
「ちゃんと送りとどけたのであろうが」
「50人は送った。たった数人を殺すのには十分な数のはずだぞ」
だが、全ての隊員たちは、死に、潜水艦も撃沈されてしまったのであった。
「しかし、他の作戦は上手く動いたはずだ」とマーシャル。
「だが、甘かったのではないか、全て打ち破られたのだがね」とキング。
「ふん、だが、オペレーション『パシッフィックストーム』では、敵艦隊を倒せるのだろうな」
「それより、オーストラリアに陸軍をおくってやればどうかな」
キングとスチムソンはやはり反りが合わないのであった。
「陸軍を送るのは問題ない、送る船がないのが問題なのだ」
「ふん。」
「それより、例のあれは大丈夫なのかね」とマーシャル。
「問題ないと聞いている」とスチムソン。
「それより、敵のあれのほうはどうなのかね」とキング。
「盗まれた鉱石では精々三発が限度と聞いている」
「あと2発ある可能性もあるということかね?」
「上手くいけば、もうない方の可能性が高いのではないか?なんといってもジャップだぞ」
「しかし、そのジャップにしてやられたのだろう、陸軍は」とキング。
「海軍が海の守りをきちんとして居れば問題なかったのではないか」
ウラン鉱石はニューヨークの倉庫にあったのだが、何ものかに盗み出されたのである。
「だが、ロシアの科学者が協力しているという話も聞くが?」
「残念ながら、ドイツ人も協力している情報がある」
彼らの懸念は核兵器であるが、日本国内には鉱石は発見されていないのは間違いないのであった。
しかし、ロシアには存在し、彼ら(米国)よりも早くコンゴで採掘していたのである。
その辺のことは確証がなかったのであるが、彼らは自分に都合よく解釈していたのであった。
ハワイ沖海戦あるいはサンディエゴ沖海戦の気運は一気に高まりつつあった。
そんな中、日本帝国では、新型艦上攻撃機が機動艦隊で置き換えられていく。
『流星』艦上攻撃機は最高の攻撃機と呼ばれていたが、簡単にそれ以上の攻撃機が配備されることになる。
『愛知』製スカイレーダーが開発され運用が開始される。
「スカイレーダーって、日本機ではないですよね!」
「じゃあ、空賊で」
「いやさすがに、それは」
「スカイレーダーはスカイレーダーでしょ」
「本当に帝国軍人なのですか?」
「女神がそういったのです。」
「また、其れですか」
「・・・」
「天竜でどうでしょうか?」
「スカイレーダー」
「この機の正式名称は天竜です」
斯くして、愛知製スカイレーダーは緑に塗られ、『天竜』と呼ばれることになる。
4列28気筒星形エンジンがついに、完成し、爆撃機に積まれずに、天竜のエンジンとなったのである。
残念なことに、爆撃機はすでにターボプロップエンジンを搭載しているため、この強力な星型エンジンは用いられることは無かったのであるが、無駄はよくないと、この天竜のエンジンとなったのである。
愛知は、すでに高野グループの傘下企業となっていた。
「軍の私物化だ!」一部の海軍軍人は怒ったのだが、声はすぐに立ち消えた。
性能(ペイロードが2tと破格であって、爆弾投下後は戦闘機としても戦えるという)が圧倒的性能であったからである。
勿論、文句を言い続ける人間がまともに生き続けることができなかったということもあるのだが。
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