第10話 超兵部隊
010 超兵部隊
かつて、厳しい環境でも、精神力で乗り切るという超人的な能力を有する部隊が存在した。
通称:『超兵部隊』正式名称 第666特殊歩兵連隊である。
人によっては、懲罰部隊と
ニューギニア島で、防空レーダーなどを設置したことなどから、現在はオーストラリアに進駐していた。
ニューギニア島では、驢馬を使い荷物を輸送していたが、この驢馬という生き物は大変難しい生き物であった。
馬よりも丈夫だが、ちゃんと世話をしないと飼い主の命令など聞かない。
押そうが引こうがびくとも動かないという、頑固さをもった動物である。
辻は、ニューギニア島依頼この驢馬が非常に気にいったのである。
きちんと世話をすれば、素直にいうことを聞いてくれ、重い荷物も運んでくれる。
まさに、相棒なのである。
そういった意味では、ニューギニアの原住民も同じようなものだった。
信頼関係を築けば、協力してくれるということである。
辻は、人間も動物も信頼関係の上に成り立っていることを、驢馬をとおして学んだのである。
そうして、彼は、ニューギニアの原住民と誼を結ぶことに成功した。
ほとんどの仕事は、高野親衛隊の潜入兵が行ったのであるが・・・・。
彼は、今、このオーストラリアにおいて、ニューギニア兵を指揮している。
そして、今この時も、アボリジニ兵をも掌握しつつあった。
彼らとともに、ケアンズを攻撃するよう命令が下った。
潜水艦により、ケアンズ周辺の海岸に上陸し、街への侵攻を行う。
ダーウィンの街の外では、アボリジニ、ニューギニア、高砂族が潜入侵攻作戦の訓練を激しく行っている。
辻は、相棒の驢馬の世話をお願いしていたが、きちんと対応してくれるのか、それが心配だった。
「我々はアジアの曙光になるのだ」
彼は、自ら指揮するANT師団(アボリジニ、ニューギニア原住民、台湾高砂族)の兵たちに向かってそう演説したが、はたしてオーストラリアがアジアに入るのかは甚だ疑問が残るのであった。
ANT師団(師団規模の兵数がいた)の精兵達3000がよりすぐられ、潜水艦数隻に分れ搭乗していく。彼らはそれが新鋭潜水艦であることは知らなかったが・・・。
彼らは、ケアンズ(熱帯雨林気候)周辺でも全く問題なく行動戦闘できる、ジャングルのプロであった。
一方、海からの攻撃の主力となる連合艦隊は、真珠湾で数隻の空母が破損しており、また残りの部隊は、インド洋方面でインド独立軍への支援を行うため、セイロン島の攻略を開始していた。
オーストラリア方面には、いわゆる、高野艦隊(正式名称第21艦隊、第22艦隊)が台湾で補給を済ませ、潜入工作作戦に合わせて、来援することになっている。
第1の攻撃目標のケアンズには、アンザックの師団が展開しつつあった。
帝国側は、武装の解除を要求しているが、今度ばかりは、豪州も聞く耳を持たなかった。
大日本帝国側が、米国の策略により窮地に陥っていると考えていたからである。
しかし、すでに懸案のいくつかは解決されていることまでは知らなかった。
勿論、まだまだ、豪州にはやってくることなど考えていなかっただろう。
だが、すでに大艦隊(高野艦隊2個機動艦隊)が台湾を出発し、豪州を目指していることを知るはずもなかった。
ロシア、中国、インド問題で身動きができないはず、さらには、日本本土が中国からの空爆でも被害を出しているはずだったのである。
さらには、ハワイ諸島が米国の太平洋艦隊により脅威を受けているはずだったのである。
ハワイ諸島方面での状況は、米国の太平洋艦隊がサンディエゴに集結、攻略に向かうはずだったのだが、太平洋に出た瞬間から、帝国の潜水艦部隊がロングランスと呼ばれる酸素魚雷の飽和攻撃を再三に渡り浴びせることになる。
潜水艦狩りを行うも、ドイツのUボートのように発見することができない。
ハワイでは、結局、爆撃機による奇襲的な爆撃だけが行われるが、ハワイ島、オアフ島では、対空砲が非常に優秀で被害が続々と増えており、決め手にかける状況に陥っていたのである。
一説には、ロケットが超重爆B36を撃破したという情報まであった。
逆に、帝国側は、海鵬(史実の2式大艇に似た航空機)をつかい、サンディエゴ、サンフランシスコ、ロサンジェルスなどに奇襲爆撃に成功している。
海鵬は西海岸に配備されている戦闘機では打ち落とすことは難しい、強靭な飛行艇であった。
・・・・・
ケアンズから離れた砂浜に夜間上陸した、ANT師団の精鋭は、ひそかにジャングルを進む。
彼らは、ジャングルのプロであるため、きわめて早い、そして静かである。
さすがに、某餓島のように、収音マイクは仕掛けられてはいなかった。
超兵の雄たる辻は、何とか歯を食いしばって彼らについていくのがやっとの状態である。
彼らは、80Kgのリュックを背負っている、その中には、史実の日本軍のように貧相な装備ではない。食料(レーション、チョコなど)や医薬品、武器弾薬が満載されている。
自動小銃、軽機関銃、RPG7風対戦車ロケット砲、携帯型の曲射砲など持ち運べる領域での最強装備を授けられている。
何事か前方でもめている、指揮官たる辻は、何事か!と出ていくと、ワニが捕まっており、殺されていた。
巨大なワニ!辻は肝が冷えた。
しかし、彼らは、淡々とそれをさばき始める。
「おいしいおいしい」台湾の高砂族がそういってくれるが、台湾にワニはいたのだろうか?
まだケアンズまで40Km、彼らはそれを焼いて食べた。
思ったよりも美味かった。いけるぞワニよ!愛驢馬ロシナンテにも喰わせてやりたいものだ!と辻は思った。(勿論、驢馬はそんなもの喰うわけはない、それだけ心やさしい人間になったということだ)
・・・・
そして、目的地近郊のジャングルに彼らはいた。
全員が顔に濃い緑や黒のペーストを塗っており、軍服もジャングル迷彩、小銃までも塗装されている。
目的は、1.レーダーの破壊、2.飛行場の破壊、3.航空機の破壊、4.対空火器の破壊であった。
夜の闇に紛れて、基地内に侵入し、これらの任務をこなすのである。
その援護に曲射砲(81mm迫撃砲)やRPG7風が用意される。
そして、その横に、異様な姿の対物狙撃ライフルが用意される。
巨大なスコープのようなものがついている。
これは、光電子倍増管を使用したスターライトスコープ付きのM2重機関銃狙撃型であった。
それが、基地を見下ろすことができる場所に設置される。
ANT師団の精鋭たちは、有刺鉄線を切りとり、基地内へと侵入を開始する。
そして、そこかしこへと、タイマー付きの爆弾や対人地雷を設置していく。
ある者は、レーダーの近くに設置し、ある者は、飛行機の格納庫に設置する。
ある者は、対空火器の近くに、そしてある者は、滑走路にと、次々と爆弾を設置していくのである。
彼らは、弓矢(途中で自作したもの)を使い、鉈で頭を勝ち割り、ナイフで首をかき切りながら、任務を無音でこなしていていく。
そう、彼らは非常に優秀な兵士だった。まさに、某映画の主人公のような兵士が集団で仕事をしているである。
設置が完了すると彼らはスルスルと安全な場所へと隠れる。
タイマー付き爆弾が次々と爆破し、それに合わせて、曲射砲(80mm迫撃砲)が次々と火を噴く。驚いて飛び出てくる兵士たちに、M2狙撃銃の高速弾が降り注ぐ地獄が、出現していた。
超兵、辻正信もM2狙撃銃で狙撃を行う。
スコープの中では、緑の人間が見えるそれに対して、撃ちまくる。
「ははは!」あまりの興奮に、
しまいには、味方にまで撃ち始めるので、上官に殴り付けられて止められる。
大混乱の中、朝を迎えるケアンズ基地に、大型爆撃機の大編隊が襲い掛かる。
これは、ニューギニア島基地から発進した、B29であった。
いや、富嶽であった。
ケアンズ基地はたった一日で完全に灰にされてしまった。
ケアンズ沖には、帝国の大艦隊が出現し、制空権も完全に掌握、陸軍の上陸部隊の援護に入っていた。
・・・・
「超兵とANT師団のおかげで、無事ケアンズを占領することができました、永田総理大臣も大変お悦びですよ」と高野九十九中将。
「は、閣下のご指導のたまものでございます」と超兵連隊の牟田口連隊長(中将)。
連隊長ながら、超兵部隊は特殊部隊なので、階級は別に設定されている。
なぜ、陸軍の士官が海軍の士官に礼を述べているかは謎だが、高野と永田は親友(命の恩人)であるためと考えられる。
しかも、最新の兵器の供給元でもある。
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