第66話
会議に参加した次の日、テオドールはアシュレイにミルトラン全体の情報収集を頼み、リーズレットには幹部たちとのコミュニケーションを頼んだ。さすがに単独での行動は危険なので、暇そうにしていたシローとシャンカラに二人の護衛を依頼した。
数日後、いろいろ情報が集まったところで、改めて状況を把握する。
(まあ、ほぼ確実に勝てないな……)
敵の情報はゼロだが、噂話程度の情報でも充分、こちらに勝ち目が無いことがわかっている。元々、ギルド派閥は転生者軍と対等以上に交渉するつもりで敵対していたのかもしれない。だが、それがヒルデの暴走でダメになったというところだろう。
リリアたち日和見派は、いざとなったら逃げだせばいいくらいに思っているようだ。既に逃げる準備を始めているかもしれない。
(リリアたちに逃げられると困る。俺たちは帰らなければならないし、アシュレイの功績を用意しなければならない……)
となると、選べる手段は限られてくる。
情報の精査、分析が終わった次の日、テオドールはリーズレットとアシュレイを連れ立って、都市を出た。城壁からも出て、荒野を歩く。誰の耳も届かないであろう岩陰にまで来た。
辺りは茶けた大地が拡がっており、その向こうには鬱蒼とした森が拡がっている。まるで境界線でも引かれたかのように、荒野と森では色彩が変わるのだ。そして森には危険な魔物が身を潜めていた。こんな森の近くにまで物好きはいない。
「ここ、危なくない?」
というアシュレイの言葉にテオドールは肩をすくめる。
「誰にも知られたくない話だからな。ここまで来れば、聞き耳を立てる奴もいないだろうさ」
「なにか策があるってこと?」
リーズレットの問いかけに「策というか、今後の方針だ」と答える。
「先ず、ミルトランに来てから開発していた新魔術が完成した」
「どんな魔術なんだ?」
アシュレイの問いかけを受け「リーズ専用の魔術だ」と答える。
「私専用? どういうこと?」
「リーズレットは俺と同じヴェーラ教だよな?」
「ええ、そうよ。西部は戦神ヴェーラと契神するのが普通だし……」
「同じ信徒間であれば、スキル化した技術は贈与することができるのは知ってるだろ? で、俺は新開発した魔術をスキル化した。これをリーズに贈与したい」
「どんな内容の魔術なの?」
「
本来、
とはいえ、この
「ただし、この
レベルが絶対的な指標ではないが、それくらいの強さにはなるだだろう。
「わかりやすく言うと、リュカやヒルデには勝てないけど、シローやシャンカラくらいにはおそらく勝てる。リリアはどっこいどっこいだな」
リュカのレベルはそれほど高くないが、それを補う戦闘センスがあった。テオドールを追い詰めたビャクレンも同じだ。思考や戦闘スタイルはレベルに反映されない。
「
まだなにかわからないと言いたげに眉根を寄せた。
「……どうして私に?」
「これから俺がしようとしていることに関わるからだ」
言いながらリーズレットとアシュレイを見た。
「――俺は転生者を暗殺しようと思っている」
テオドールの発言を受けて、リーズレットとアシュレイが目を見開いて驚いた。
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