第17話・8/14修正版
テオドールは放課後の中庭にアレイスター・ベアルネーズの仲間たちを呼び出していた。ベアルネーズを含めて全部で五名の悪童たちである。テオドールは彼らの前に立ち、微笑みかけた。
「というわけで、俺はベアルネーズと友となった。今日からこのチームのリーダーは俺だ」
癖毛の少年が「アレイスターくん、どういうことだよ!?」とたずねる。ベアルネーズは目をそらしながら「聞くな」と言った。
「まあ、文句があるのもわかる。見知らぬ奴がいきなり我が物顔でリーダーになることに拒否感も出るだろう。俺も無理強いする気は無い」
そう言って制服のジャケットを脱ぎ捨てた。
「文句があるなら拳で決着をつけよう」
ベアルネーズはすぐさま視線をそらし、残りの四人も凝然と固まった。
昨日のベアルネーズとの決闘を彼らも見ている。当然、テオドールの強さも理解しているだろう。
「い、いいじゃねえか! これでも騎士の生まれだ! やってもいないのに負けを認めてたまるかよ!!」
啖呵を切った癖毛に続き、他の三人もジャケットを脱ぎ捨てた。そんな四人をベアルネーズは「正気か!?」と叫んで止める。
「お前ら、やめろ! この人は、俺たちとは別の生き物だ! 西部騎士はみんなイカレた異常者なんだよっ!!」
さりげなくディスられたが、西部騎士に関する見解は同意見だったのでスルーした。自分が異常者のカテゴリーに含まれてることに、いささか引っかかりはするのだが……。
そんななか、癖毛が悔しげに歯噛みしながらベアルネーズの肩をつかんだ。
「どうしちまったんだよ! アレイスターくん!! 田舎の侯爵令嬢なんて簡単に落とせるって言ってただろ! あのナイフみたいなアレイスターくんはどこ行っちまったんだよ!!」
「やめろ! その話を蒸し返すんじゃねええ! 俺が殺されるだろうがっ!!」
ベアルネーズが癖毛を殴り飛ばしていた。なんだかんだで、五人の中ではリーダーだったのだろう。癖毛の少年は殴られた頬をぬぐいながら、唾を吐き捨てる。
「クソ……わかったよ……」
そのままビシッとテオドールを指さしてきた。
「俺が俺たちのリーダーの仇を取ってやるっ!!」
「ジャン……」
驚くベアルネーズの横で、残りの不良たちも奮起していた。
「そうだ! 俺たちのリーダーはアレイスターだ!!」
「西部の田舎もんに頭は下げねえぞ、おるぁっ!!」
「やってやんよ! 中央騎士なめんじゃねぇぞっ!!」
テオドールはそんな不良貴族たちを見て、ニッコリと笑った。
「元気があって大変よろしい。文句があるなら、まとめてかかってきなさい」
「余裕かましてんじゃねーぞ、田舎もん! アレイスターくんの仇だ! お前ら、行くぞ、おるぁぁぁっ!!」
「「「うおおおおおおおっ!!」」」
当然、全員、ワンパンでのした。
拳に雷の魔術を乗せたので、ほぼ一撃で意識ごと刈り取ってある。
パンパンと手を払いながらテオドールは最後に残ったベアルネーズへと視線を向ける。
「ベアルネーズ、君はどうする?」
「え? どうするって……?」
「君のために友は散った。残った君は騎士としてどうするのか? と君の騎士道を問うている」
ベアルネーズは一瞬、固まってから、すぐさま半泣きになって拳を握りしめた。
「うああああああああっ! この悪魔がぁぁぁぁっ!!」
「ああ、すばらしい。それでこそ男の友情だ!!」
殴りかかってきたベアルネーズは、ビンタで吹っ飛ばした。
こうして不良貴族少年たちをのしたテオドールは、彼らを傘下に入れ『西部騎士道クラブ』というチームを発足することになった。
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