第2話 喧嘩

順風満帆な日々を送れるかと思ったのも、つかの間で澪と絶賛喧嘩中である。


遡ること数日前。


澪も自分の部屋にいた時、何気なく携帯でネットを開いたら自分好みの神絵師を見つけたことが事の発端である。


年齢も自分と一歳しか違わない年下の子だったけど絵がとても上手いから、思わずネットの個人メッセージで話しかけたのが始まりで意気投合するのも早かった。

自分は、たまたま応募した小説で受賞したから小説家になれたが親に認められないこともあって他にも何か挑戦できるならしたいと思っていた時に、この絵を見つけたのだ。


仲良くなって早めの行動が大事だと思ったから、すぐ漫画制作を一緒にしたいと誘ったけど最初は、悩んだ様子だったけど小説の一部を見せたら漫画制作に了承してくれた。


自分が、考えた小説が漫画になることを想像したら楽しみだったけど澪は、インターネットで知り合ったことを知っているので反応がいまいちな感じ。


それだけなら、まだ喧嘩にならなかったけど友達の怜ちゃんも怪しいと心配してくれて信用できるか会って証明するのが良いと言うことになって会う約束をしようと計画してたら喧嘩になった。


結局、怜ちゃんが護身術を習ってるから無事会える約束ができたけど、あの出来事から一切会話してない。


自分が一番悪いってわかる……。

澪から反対された時の表情が、今も目に焼き付いて離れない。


「嫌われたのかな……」


会う約束をしたのは、今週の日曜日だけど澪も一緒に行くのに、このままだと仲直りができないままになっちゃいそう。


仲直りできなかったら、澪との関係性が崩れてしまいそうで考えたら居ても立っても居られなくて、気づいたときには家を飛び出して澪の家に立ってインターホンを押してた。

外は、雨が降っていて傘も持たずに出たから服が雨に濡れて重い。


インターホンを鳴らして待っていたら凄い勢いでドアが開かれた。


「真帆! どうしたの!!」


澪の家には、カメラモニターとか付いてないから誰が来たとか分かるわけがないのに少し息を切らせた様子の澪が玄関を開けてくれた。


「あのね……」


心配そうに見つめる澪に謝罪の言葉を言おうとしたけど部屋の奥から澪のお母さんが心配した様子でタオルを急いで持ってきてくれたから結局、言えないまま部屋に招かれた。

ちょうど準備が終わったところだから風呂に入って、と澪のお母さんに肩をポンと叩かれて急かされたのでお礼の言葉を言ってお風呂に入る。


「様子が、おかしかったけど澪と喧嘩しちゃった?」


磨りガラス越しで澪のお母さんが、タオルと澪の洋服を置きながら優しい声で聞いてきた。


「──はい。でもあたしが悪いから謝りに来ました」


そう言うとお母さんが笑いながらなるほど、と言っている様子に首をかけしげてしまう。


「実はね、インターホンが鳴るたびに玄関に走って行くから私もなんでかなって思ってたけど理由が分かって安心したわ」


「え!」


この話したことは秘密よ、と嬉しそうに笑った後に静かにドアを閉められた。


あの運動が苦手の澪が走って、玄関まで行ってたとか想像できない……。

考え事をしちゃうとお風呂をのぼせるぐらいまで入りそうなので、体が温もったらすぐ上がるようにした。


「気持ちよかったー」


髪を乾かしてから澪に謝るために部屋に行こうとお風呂のドアを開けると澪が立っていた。


「うわぁ!」


まさか待っているとは思わなかったから、びっくりして大きな声を出してしまった。

恥ずかしい……。


「部屋に行くでしょ」


「う、うん……」


そう言って手を引っ張ってきて部屋に入るまで無言のまま、澪の後ろ姿を眺めていた。


部屋に入るとハグをしてきたから頭が、こんがらがってしまうけど、その状態の態勢で澪に謝る。


「ごめんなさい」


「澪も言い過ぎたから──ごめん」


謝れたことと仲直りできた安心感から目から涙がでていた。

泣いてるのを分からないようにしたけど、すぐバレてしまう。


「そんな泣くほど怒りすぎちゃった?」


ハグを止めて少し近づいて不安げな表情で言ってる。


「澪のことが好きなの」


澪がいないと駄目だと気づいてしまった。

でも返事を聞くの怖い。

告白とかしたことないし、その前に好きな人とかできたことないけど告白した後に、ふと気づいてしまう。

断れた時のことを考えてないのを思い出す。


あれっ、これ断られた方が友達に戻っても気まずいじゃん。


そんなことを考えたけど澪が口を開く。


「まさか告白されるとか思ってなかったから恥ずかしいかも」


澪が顔を赤らめながら、そっぽを向いていて可愛いと思ってしまう。


「澪も真帆のこと好きだから付き合おっか」


唐突な返答だったし、澪が自分のこと好きだったの!? 付き合えると言う言葉に嬉しいと恥ずかしいの感情でいっぱいになる。


「澪のせいだからね! 意識させるようなことするから! す、好きになったんだよ!!」


「だって、そうでもしないと気づかないじゃん」


確かに、と頷いてしまう。


「鈍感なところも含めて真帆のこと好きだから別にいいけど」


さらっとかっこいいこと言ってる!


「二人に報告しないとだね!」


「えっ、隠れて付き合う方がいいなー。みんなにバレないようにイチャイチャするとか考えたらスリルがあっていいかなって思う」


その時の澪の顔は、小悪魔みたいに悪そうな顔をしていた……。付き合うことになったけど怜ちゃんと雫ちゃんには結局、内緒のままで付き合うことになった。

そしてまさか、ネットで知り合った神絵師の子が怜ちゃんの妹だと後に知ることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る