幼馴染に嫌いだと言われ、同級生に振られてしまった俺。しかし、やがて、後輩から熱い想いを伝えられ、先輩との距離も近づく。幼馴染も同級生も、このままでは間に合わない。恋、甘々でデレデレ、ラブラブな青春。
第10話 わたしはなんで海島くんを振ったんだろう (のずなサイド)
第10話 わたしはなんで海島くんを振ったんだろう (のずなサイド)
わたしは厚田池のずな。高校二年生。
中学校二年生の一月。わたしは告白された。
イケメン。
前々から、いいなあ、と思っていたので、告白された時はうれしくてたまらなかった。
それからのわたしたちの生活は、彼中心になった。
彼とおしゃべりをするのは楽しかった。
二年生の時はクラスが別々だったので、学校ではそこまで話すことはできなかった。
しかし、ルインで毎日やり取りをした。
「好き。好き、とても愛しています」
と毎日彼に送った。
彼はテニス部で忙しいので、デートはなかなかできなかったが、デートを初めてした時は、とてもうれしかった。
手をつなぎ、腕を組むことができて、幸せだった。
彼の方もうれしそうにしていた。
しかし、彼のそばにはいつも何人かの女の子がいた。
彼を恋人にしようと狙っている人たちだ。
休み時間に彼の教室にいくと、いつも親し気に話をしている。
わたしは気が気でなかった。
このままじゃ、あの子たちに奪われてしまう!
最初は黙っていたが、我慢できなくなったわたしは、
「彼はわたしの恋人です! 話しかけないでください!」
と彼の教室に行っては叫ぶようになった。
その度に、彼女たちは、
「あなたなんか、恋人にふさわしくない!」
「なにが恋人よ!」
と反撃していたが、こちらも一生懸命だ。
「恋人じゃないあなたたちは、彼と話しをする権利なないのよ!」
と言っていた、
三年生になり、同じクラスになった。
わざわざ違う教室に足を運ぶ面倒さもなくなり、これで、彼との仲はますます進んでいくと思ったんだけど……。
七月中旬。
わたしは、ショッピングモールに一人で買い物に来ていた。
梅雨の開けたばかりの暑い休日。
本当はこの日、彼とデートをしたかったが、用事があるということで断られてしまった。
部活は休みのはずなのに、と思ったが、用事があるなら仕方がないと思った。
それにしても彼は最近、わたしと話すのを避けるようになった気がするし、ルインの方も、素っ気ない返事をすることが多くなった。
前は、わたしが、
「好き」
と送付すれば、
「俺も大好きだよ」
と返事をしてくれたのに。
悶々としながら歩いていると、そこには……。
イケメンの彼と女の子が手をつないで楽しそうに歩いた。
二人ともゴージャスな服を着ている。
どうして彼がこんなところにいるのよ……。
わたしは、急激に頭に血が上ってきた。
わたしがいるのに! どうして他の女の子と!
我慢ができなかった。
「今日、用事があるんじゃなかったの!」
わたしは、彼に向かってそう怒鳴っていた。
「これが用事だよ。好きな子とのデート」
そう言って微笑む彼。
手をつないでいる女の子との睦まじさをわたしに見せつける。
「用事って……。恋人をほったらかしにして、別の女の子とデートするのが用事なの!?」
腹が立ってしようがなかった。
「恋人、誰が?」
とぼけたように言う彼。
「わたしが恋人です。わたしと付き合っているんじゃなかったの!?」
「おおーこわ。俺、こういう子とは付き合いたくないんだ。ねー」
と言ってそばにいる女の子に微笑みかける。
「そんなに怒りぽくっちゃ、あいそをつかされちゃうわよ」
と言って女の子も笑う。
どうしておちょくられなきゃならないの!
ますます腹が立ってくる。
「この子から今すぐ離れて!」
わたしはそう言ったが、
「なんで。今デート中なのに」
「そうよ。わたしたち、デートをしているのよ」
と言ってつないでいる手を離そうとはしない。
「俺達はもうこの四月からずっとつきあっているんだ。だからもうラブラブ」
「そうなの。ラブラブなの」
この四月から付き合っているっていうの……。それって、わたしと彼女の両方と付き合っていたってこと?
「きみとは別れようと思ったんだけど、まあ二人目としてならいいかな、と思ってね。それで別れ話は持ち出さないであげたのよ。これからも二人目でいいなら付き合ってあげるけど」
あざけるよう言うイケメン。
わたしの怒りは沸騰してくる。
「冗談は言わないで。誰が二人目なんかに」
「嫌なら今すぐ別れよう」
「別れるって……。今まで楽しい日々を一緒に過ごしてきたじゃない」
「楽しい日々だって? 何を言ってるんだ。俺にとってはつらい日々だったのさ」
「告白したのはあなただったにでしょう?」
「それ自体が間違いだったんだ。こんなやきもちばかりやいて、つまらない話しかできない女の子はタイプじゃないんだよ」
「楽しくおしゃべりをしていたと思ったのに……」
「作り笑いっていうのを知らないの? そんなことも知らないとはね」
あきれた表情で言う彼。
楽しそうにしていた笑顔。それは全部作り物だったということなの?
「その点、ここにいる彼女はいいよ。俺が他の人とデートしても何も言わないんだから」
「他の人とデート?」
「俺、モテるから、どんどん女の子が俺のところにくるんだよね」
「なんて人なの!」
「いろんな人とデートするくらいで何を怒っているのさ。こっちは部活で忙しいんだし、その忙しい合間にデートしているんだ」
「どうせ、嫌になったらわたし、みたい捨てるんでしょう」
「捨てて何が良くないのさ、嫌になったら捨てる。それがお互いの為だろう」
「全く、わたしはこんな人を好きになっていたっていうの……」
つらくて涙が出てくる。
わたしは、
「あなたはこんな人についていくの?」
と彼女に聞いた。
「あたり前じゃない。今わたしのこと好きでいてくれるんだし」
「わたしみたいに、捨てられるちゃうわよ」
「わたしなら、大丈夫よ。あなたみたいにはならない。彼がどんな女の子とデートしようと、恋人はこのわたしよ」
そう言って、彼女は彼に寄りかかりながら微笑む。
なんなの、この子は。人が親切に言ってあげているのに……。
彼だけでなく、彼女にも腹が立ってくる。
「とにかく、別れたければ別れてもいいぜ。俺は困らないから」
わたしの心は怒りの頂点に達した。
「もう、あなたとは別れる。じゃあね!」
そう言って、わたしは、その場から走り出した。
みじめだった。
信じていたのに……。
ものの見事に裏切られてしまった。
それから二年近く。
高校二年生になった今、思い出す人がいる。
海島くん。
中学校二年生の十二月。
わたしは彼を振ってしまった。
今思えば、なんてひどいことをしてしまったのだろう。
わたしは、イケメンの彼と付き合ったものの、別れてしまった。
その後、何人かの男の子に告白されたけれど、付き合う気にはならなかった。
海島くんと付き合っていれば、こんなことにはならなかったのに……。
イケメンの彼と別れ、他の男の子に告白されて、初めて海島くんの良さが分かってきた気がする。
わたしの中で、海島くんの占める割合が次第に大きくなってきた。
恋というところまで到達できていると思う。
この想い、海島くんに伝えたい。
しかし、わたしは彼とは別々の学校。連絡先がわからない。
彼が下校する時に、校門で待ち伏せをするぐらいしか会う機会はない。
でもわたしの想いは届くのだろうか。
振ってしまってからもう一年以上が経っている。
なんであの時、海島くんを振ってしまったんだろう。
もうわたしは間に合わないのでは……。
この頃、毎日、そう思っているが、寝る前は特につらい気持ちになる。
海島くんを振らなければ、こんな思いをすることはなかったのに……。
今日もわたしは、涙をこらえることができなかった。
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