第6話

 私(清水颯太)が死んだ次の日、私の元に電話がかかってきた。

「ボス、依頼者が事務所に来ました。」

「分かった。今すぐ行く。」

私は部下にそう伝えて事務所に向かった。

「大丈夫ですか?」事務所に私が着くなり、加藤が言ってきた。

「大丈夫に決まっているだろ。何を心配しているんだ?」

「いえ、ただどうして生きているのかなあって。」

「だって、あれは私じゃなくて清水颯太だって言っただろ?まぁ細かいことは置いといて学校はどんな感じかな?」

「凄い騒ぎになっています。でも、学校は事件を隠蔽しようとしています。死んだ事と学校は無関係だって言っていますよ。」

「ほぉー、学校というのは凄いな。わざわざ死んだ原因は学校だって思わせるために書き置きまで残したのに。」

「そんな事までしたんですか?」

「まぁ、どうせ死体が落ちてきたのを見てすぐに先生が屋上に駆けつけたんだろう。そこで私の書き置きを見つけて偉い人に誰にも見せるなとでも言われたんじゃないのか。まぁどうでもいいよ。」

「えっ?でも、学校の評判は落ちていませんよ。これじゃあ依頼は達成されていません。」

「分かっている。今はまだ達成されていないんだ。だが、いずれ達成される。いいか、死というのは大きな力を持っている。それを押さえつけるためにはより大きな力が必要になる。だが、人の死以上の力なんてこの世には存在しないんだ。人の死は思わぬところで思わぬ作用をする。人の死は無限大の力を持っている。誰も死の影響をゼロにするなんて事は出来ない。大丈夫だ、必ず依頼は達成される。どんな形かは私も完璧に予測することは出来ない。だが、依頼は絶対に達成されることだけは断言できる。そのために私は様々な布石を打って来たんだ。どう転んでも依頼を達成できるように。」

私が依頼は達成できると念押しすると私に圧倒されたのか加藤は「分かりました。」とだけ言って、帰って行った。

 加藤も帰ったことだし私も帰ろうと思っていると、部下が言った。

「本当に大丈夫ですか?随分と自信があるようですが。もし何かあれば私にちゃんと…」

「大丈夫だ。依頼は達成される。だが、もし私の想定通りにいかなかったら、ちゃんと君に頼るよ。」

私はそう言い残して事務所を後にした。

 そして私が死んでから1週間ほど経過した時再び部下から電話がかかってきた。

「ボス、依頼者から連絡がありました。どうやら学校で第二の死者が出たらしいです。」

私は

「そうか…分かった。」

とだけ言って電話を切った。

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