第5話

 今回の死の偽装は中々大変だった。理由は屋上まで死体を持って行くこと。屋上は普段立ち入り禁止だし、校舎の中から屋上に出るための扉はカギがかかっている。それに死体をかついで校内で歩いていれば目立つ。故に夜中に死体を運ぶことにした。とはいえ、夜中に校舎の中に入るためには鍵が必要だ。そこで私は考えた。校舎の中に入るのにも校舎の中から屋上に出るためにも鍵が必要なら、いっそのこと校舎の外から屋上に直接行けばいいんじゃないかと。私は部下に連絡し、協力を仰いだ。まず、最初に私が滑車とロープをもって校舎の屋上にまで上った。方法は単純だ。ヤモリの手の技術を応用した特殊な手袋を使った。その手袋なら垂直な壁も簡単に上れる。そして、屋上まで辿り着いたら、滑車を取り付け、ロープを上から垂らす。そのロープに部下が死体をくくりつけてそれを私が滑車を介して引っ張る。そうして死体を運んだら念のために屋上に入ったとしても簡単には見つからない位置に死体を隠し、後は屋上の鍵を開けておき下まで降りる。そして翌朝、私は暗めの顔をして登校し、屋上まで誰にも見られないように行き、死体をそこから突き落とした。そして、私は変装を辞めて混乱に乗じて学校から去った。

 家に帰る途中、電話がかかってきた。

「ボス、依頼者から電話です。状況を説明しろと言っているのですが…」

完全に彼のことを忘れていた。

「悪いけど、依頼人に『私は生きている。話があるから明日、事務所まで来い。』って伝えといてくれる?」面倒くさかったので私は簡潔に部下に伝えた。

「承知しました。」

私は家に帰りテレビを付けた。予想していたが、特に報道されている様子もなかった。

(まぁ、しばらくは様子を見ることにしよう。面白いのはここからだし。)

私はそう考えながら夜遅くに作業し、翌朝早くから学校に行き疲れ切っていたので、少し眠ることにした。

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