第2章 学校の闇
第1話
私は殺され屋。今回は少し昔の話をしよう。今の私は依頼者を自分の力で少しでも幸せにしたいという気持ちで依頼をこなしている。だが、これから話すのはまだ私がとにかく依頼者の依頼を達成すればいいという信念のもと動いていた頃の話である。いや、自分の死で人の生を変える快楽を味わうために依頼者を利用していた頃と言った方が正しいかな。
その日はいつも通り優雅に朝をくつろいでいた。すると、1本の電話がかかってきた。
「ボス、依頼です。今回は見た感じ学生であまり金は持っていません。それに、ちょっと問題がありまして...どうします?断りますか?」
「とりあえず話だけ聞いてみよう。」と言って私は事務所に向かった。
到着すると一人の冴えない青年が座っていた。
「名前と依頼内容は?」私はぶっきらぼうに尋ねた。
「はい、僕の名前は加藤伸行です。依頼はMAXお願いします。僕の通う学校の評判を落として下さい。僕、学校で先生からひどい仕打ちを受けているんです。」
おそらく部下が問題があると言ったのはこのことだろう。この頃の私は以前紹介したような人に制裁を下したり、あっても人の評判を落とすくらいの依頼しかされてこなかった。学校のような大きな組織に対してなにかをするような事は今まで一度も無かったのだ。
「ひどい仕打ちの具体的な内容は?」私は依頼者に尋ねた。
「他の生徒がやった悪い事をその生徒がやったと知った上で僕に怒ってきたり、僕だけテストの変なところで減点してきたり、あげたらきりがありません。」
「心あたりは?」
「おそらく、僕が授業中に先生の間違えている部分を訂正したり、先生が答えられないような質問をしてしまうのがだめなのかと。でも、先生は質問してもいいと言っていましたし、それに先生が一度答えられなかった時から授業の邪魔をするのは申し訳ないから授業後に聞くようにしたんです。」
「そこまでは聞いていない。まぁいい、とりあえず学校の評判を落とせば良いんだろ?」
「依頼を受けるんですか?」部下が私に尋ねた。
「これも挑戦だよ。大丈夫、今までと少し違うだけでやることは変わらない。私はただ、私のやり方で依頼を遂行するだけだ。」
「ありがとうございます。依頼金の10万円です。あまりありませんが、これでお願いできますか?」
「子供の割には持ってきた方だよ。契約成立ってことで。少し待ってな。君の学校の評判を地に落としてやるから。」そう伝えて私は依頼者に帰らせた。
「でもボス、学校の評判を落とすなんてどうやってやるんですか?」部下が帰る準備をする私に尋ねた。
「確かに、今までの依頼とは違って少し難しい。今じゃ死人がでる学校なんてめずらしくない。どうせ一人死んだところで隠蔽されるのが落ちだろう。」
「でも、依頼を受けたって事は出来る自信があるってことですよね?」
「もちろん、できるさ。今回は前から試そうと思っていた事を試してみることにするよ。面白いことになるぞ。なんたって今回は私は人間では無く学校に殺されるのだから。」
「学校に?それはどういう…」
「まぁ見てなって。」私は不思議そうな顔をしながら尋ねる部下の言葉を遮ってその場を後にした。
(さぁて、久々に面白いことが出来そうでわくわくしてきた。)
その時の私はこれから起こる事を想像して無邪気の笑みを浮かべていた。それがそう遠くない未来、私にとって永遠に苛まれる後悔の種になるとも知らずに。
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