第4話

 その日、神谷は友人と食事に行く約束をしていた。友人との久しぶりの会話に花を咲かせ、楽しくなっていたときに友人が切り出した。

「ねぇ恵、あんた浮気してない?この間一緒に歩いていた男の人ってどうみても前私に紹介した恵の彼女じゃなかったんだけど。」

普通別の男と歩いていたのなら浮気とは成らないだろう。別れて新しい彼氏ができた可能性だってある。だが、その時の神谷はかなり焦っていて全くそんなこと思いつかなかった。それもそのはずで、私は彼女に私達の関係がばれたらもう会えないと事前に伝えておいた。私と会えなくなることをどうにかして避けたいと思ったのだろう、神谷はかなり動揺した様子で居た。そこで友人はこう言った。

「大丈夫。誰にも言わないよ。例え警察に聞かれたって言わないわよ。でも、どうだろうね。意外と彼氏さんは気付いちゃってるんじゃない?ほら、あんたらの力関係ってあんたの方が上じゃん、色々な意味で?だから、気付いていても言い出せなかったりするんじゃない?後からやり返されないように気をつけなさいよ。」

その発言を聞いて神谷は一瞬動揺したが、友人の言わないという言葉に安心したのかすぐに話を別の話題に変えていた。食事が終わり解散したとき、私は神谷の友人に会いに行った。もちろん私が私だとばれないような格好をして。

「では約束の10万です。もう一度言っておきます。このことは他言無用でお願いします。たとえ警察に聞かれたって、ですよ。そのためにこれだけのお金をあなたに渡しているのですから。」私はそう言い残してその場を性急に去った。

 そしてその翌日、私は中山純太の自宅で死んでいた。

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