30頁 120ページ日記2冊目 6月3日
夜中の12時を回った頃に私はよく天井を眺めるんです。
頭の中で流れる映像を何も考えずただ眺めるんですよ。
まさしくめいそうですね。ざぜんは組めないですけれど。
しかしある所でふと現実に帰ってしまう時
に見えてしまうんです。
いつか訪れる人生で最後のしゅんかんが、病室のベットで寝転び、身体は動かなくなる、その瞬間を。
なのにその時自分が感じる感情は全くと言って良いほど理解できないんです。
不思議ですよね?アニメとかの主人公とかなら感情移入できるんですけどね(^^)
逆にこの人生の終わりがある事を思い出してしまって、身体の震えが止まらなくなるんです。
窓の外からやってきて私を連れて行こうとするあくまに後ろから抱きしめられているように。
恐怖という激情が心から溢れ出てくるんです。
その恐れから、現実から逃げようと夢という海に私は必死に飛び込もうとします。
しかしそれは私を逃がさすよう抱きしめ離れず、少しずつ私の命をノミで削っていくんです。
でも、これを書いているうちに気付きました。
私に抱きついて離れてくれないこのあくまは、私たちの命という大理石の原石を心というノミを使う肉体というちょうこく家によって生み出される素晴らしき作品に奥深さを与える為の物だと。
死を恐れ、生にもがく。そのはかなくも美しい命を作る為の物なのだと。
ふふ、ごめんなさい、こんなてつがく的な話、君は嫌かな?
私はね、カフカのこの名言が昔から好きだったんだ。
「神はクルミを与えてくださる。
でも、それを割ってはくださらぬ。」
神は命という名のクルミを私達に与え、私達はそれを時間や他者との関わりで少しずつ割っていく。
そして人は命というクルミが割れた時そのくだけた中身を沢山の人に分け与えるんだよ。
その美しきちょうこくのような人生を。
私はそういう意味だと信じてるんだ。
言葉っていうものはどのように読んだって正解なんだよ?
君が別の意味を正解だと思ったらまたそれも正解なんだって!
なんかの漫画の受け売りだけどねー
突然だけどこれを読む君に質問です。君はこれに対してどう思いましたか?いつか教えてくれないかな?
長い時を生きるほど近づく死を恐れなくなるのに短い時を生きている者ほど死を恐れるだ。
私は、人生という作品を作る上で良い作品を作れないかもしれないという焦りが死の恐怖そのものなのかもしれないと思います。
もう少しで完成するからこそ恐れは消えていくのかもしれない。
でも私は若いまま、上手く出来そうになさそうです。
他のきれいな人達からしたら汚くてみにくいものかもしれないけど、私は君と話す時間が楽しいし、外に連れ出してくれたあの時の君はすごくかっこよかったよ!
君の作品はどうですか?
私が知らないだけで辛いことばかりで形がいびつかもしれないね。
もしかしたら私と一緒で幸せいっぱいかもしれないけどね(^^)
でも、少なくとも終わりがどうであれ君は最後までノミを離さないようにして欲しいな!
どれだけボロボロになろうと離さないで欲しいな。
手をつけないといけない事が多すぎるかもしれないけどね。
いつかスランプになったら私のこれを見てね。
仕事を辞めるなり、新しい所に住んでみることもいいかも!
無理かもと思っても人間やってみればいけるはずだよ!
君はこれを読める元気がまだまだあるでしょ?
私はもう死んじゃうね。
君ともっと一緒に居たかった。
だからこそ、君にこれを読んで欲しくない。
だから、最後まで削り続けようと思います。
「神はクルミを与えてくださる。
でも、それを割ってはくださらぬ。」
私が割れた後も君がこの私の欠片を拾って生きてくれる事を願います。
1冊目の日記の最初のページを載せました。
余命宣告を受け、身体が動く内に中学生の女子が残した最後の日記です。
あの笑顔は削り切った達成感を感じた顔だったのでしょうか。
友人の僕にもそれは分かりかねます。
後、彼女の質問に答えるとするならば
私達は最初ただの肉体という容器に入った水だと思います。
時間が経てばそれは様々な出来事に味付けされ、色んな具材を使った料理だと思います。
でも若い人はクックパッドを使わずに料理をしている状態なのでてんやわんやしているんだと思います。
そして死んだ時、私の料理も配られるんだと思います。
見返してみると僕も結局彼女の会話と似通ったような事を言ってるので彼女の言う他人にクルミを食べされるというのはあながち間違いじゃ無いのかも知れませんね。
著 リアス 異界物語 短編集 ▷5話目
異界物語 短編集 リアス @00000aoto
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