地味に迷惑な魔剣代表
何も分からないまま始まった初戦闘は、見事PC達の勝利で幕を下ろした。
本来であれば戦利品判定を行うところではあるのだが、この寒さの中で10分かかる判定をやっている暇があるのか……という話に。一行はこれからの行動を話し合う。
GM ちなみに戦闘に参加してなかったジョンと女の子ですが……皆さんが戦ってる後ろで、別の群れを相手してました。もちろん全滅させてます。
みつば 女の子強ない?
GM あー、皆さんジョンのことそれなりに知ってるので分かるんですが、ウルフのほとんどはジョンが倒してますね。
一同 つよっ!!
生半可な強さではギルドマスターは務まらないのである。
GM さて、この寒空の中、皆さんがどうしようか悩んでいるところにですね。遠くの方から誰かがあなた達を呼んでいる声が聞こえます。
フェン それは、名前呼びで?
GM いや、「そこに誰かいるのかー!?」みたいな感じで。
フェン (ぼそっと)……いないよ。(一同笑!)
ガルシア 一回無視した方がいい感じか?
GM 戦闘音に気付いて近寄ってきた感じなので、隠れる間もなく皆さんの目の前にスッと現れます。
特に時間をかけるような場面でもないので、イベントとして強制進行。とはいえ今振り返ると無理やりだった感も否めない。
この辺りのさじ加減はいつまで経っても慣れないものだ。
GM 雪の中から現れたのは、防寒着を身にまとった狩人らしき数人の人間たちです。「あんた達、こんなところで何してるんだ?そんな寒そうな格好で」
フェン いやまあ、色々あったんだよ。うどん食ってたらいきなり光り輝いて……気づいたらこんなところに飛ばされちまってさ。
一同 (笑)!
GM 説明の意味が分からなさすぎる……!(笑)
みつば 何を言ってるか分からねえと思うが(笑)。
フェン 俺も何言ってるか分かんねえぜ。
一同 (爆笑)!
GM/狩人 「お、お、おう……よく分からんが、大変だった、な?ま、まあ近くに俺たちの国があるから……とりあえずそこに来ればいいと思う、ぞ?うん」
フェン そりゃそういう返しになるよな(笑)。
オフレコ話ではあるが、狩人が困惑している主な理由はうどんのくだりだったりする。テレポートだけならまあまだ分かるが……あの説明だと、うどんが光って超常現象を起こしたようにしか聞こえない(笑)。
GM/狩人 「とりあえず寒そうだから、防寒着も貸してやる。丁度予備がいくつか余ってたからな」
ということで、皆さんは人数分の防寒着を手に入れることができます。
みつば やった~!
ガルシア お、ならウルフの剥ぎ取り出来るじゃん!
みつば 狩人さんちょっと待ってて、剝ぎ取って来るから!
防寒着を着込んだ状態で戦利品判定を行う一行。余談だが、戦利品の扱いは判定を振った本人の所有とするらしい。
一通りの剥ぎ取りを済ませ、一行は狩人の一団に着いて行くこととした。
「ところで、ここはどこなの?」
至極もっともなみつばの質問に、狩人の一人はこう答えた。
「ここはディガッド山脈さ。山と雪と奈落に囲まれた、俺たちの故郷だよ」
フェン (ルルブのマップを見ながら)ああ、上の方のね。
ガルシア (同じくマップを見ながら)結構上の方に来たな。
GM ハ―ヴェス王国の北側に位置する山脈ですね。
フェン じゃあだいぶ飛んだってこと?
GM そういうことになるでしょうねえ(ニヤニヤ)。
困惑したり、何かしらの推測を立てたりと、PCによって反応は様々だ。各々が考えを巡らせる中、一行は雪化粧の山道を進んでいく。
しばらく歩いていくと、眼下に町が広がる高台に出る。山中の盆地を利用した、小さな町だ。
狩人がどこか楽しそうに、一行に告げる。
「これが俺たちの国、ダイケホーンさ。ようこそ、異邦人たち」
GM ということで、大方の予想通りダイケホーンに到着です。ここから山を下って町に入ることにはなるんですが……。時間的には昼過ぎくらいかな?ここで戦利品の換金なり、買い物なりが出来るようにはなります。
ちなみに、皆さんが今来ている防寒着はジョンが代金を立て替えて購入した扱いにしておきます。
みつば 太っ腹!
フェン イケメンや……。
カル よかった、ありがとうございます。
GM 「しょうがねえなあ、全く」と言いながら煙草をふかして、財布を取り出します(笑)。
一同 かっこいい~!
ギルドマスターの株、爆上がりである。
やる気がなさそうに見えても、多くの冒険者を世話する立場なので実は面倒見がいいのだ。
PC達の買い物の必要がなかったため、引き続きシナリオを進行する。
GM 皆さん冒険者ということなので、さっきの狩人からとりあえずの居場所として冒険者ギルドを紹介してもらえます。ギルドの名前は「無作法な勇者の酒処」と言いまして、武骨な男性ドワーフ、ダフィット・ベルガーという方がマスターを務めているらしいです。
ジョンに引率され、ギルドに入っていく一行。建物に入ったところで、こんな会話が繰り広げられた。
「うい~っす……って、やっぱりあんたか、ダフィットのじいさん。名前を聞いた時はまさかと思ったが」
「随分な挨拶じゃな、スタンフォードの小僧。わしはまだ六十の若人じゃわい」
「人間規準だと十分じいさんだよ、その歳は」
フェン じいさん……オッサン?じいちゃん?
GM ドワーフは寿命が二百年程なので、ドワーフ基準ならめちゃくちゃ若いですけどね(笑)。
だいごろう まだ赤ちゃんだよな。
ガルシア そこまでではなくないか?(笑)
GM そんな旧知の間柄みたいな二人なんですが、軽口を叩き合いながらもダフィットは皆さんに熱いコーヒーを振舞ってくれます。「外は寒かったじゃろう。これで暖まるとええ」
ここでPC達が「俺はうどん派だ」とか「ここでうどん作ってもいいですか」とか言い始めるシーンが挟まるのだが、涙を飲んで割愛させていただく。
だいごろうのうどん、もうパーティの共通言語になっている(笑)。
ドワーフ印のコーヒーで一息ついたところで、ジョンが「現状の確認をするぞ」と切り出した。
フェン 剣持ってきた女の子はどうしてる?
GM 一緒について来てるよ。剣も持ったままだね。
フェン あの剣謎だよね……。
ガルシア そうだね、知りたいよね。
GM OKOK。じゃあ順番にいこうか。まず、フェン。さっきもちらっと言ったけど、君は女の子の顔に見覚えがある。
フェン 割と知り合いな気がするよ?(笑)
GM 女の子は自己紹介をする。名前はアネット・フォン・フェルトマン。皆さんと同じく『くつろぎのフーベルトゥス』に所属する冒険者です。冒頭でちらっと話したと思うんだけど、フェンが初めて冒険した時に一緒にパーティを組んだ女の子だね。
少しメタ的な補足をさせていただこう。今回のセッションでは、PL達には一回分成長をしたキャラクターを作成してもらっている。
ただし、フェンだけは初期作成後に一度だけソロシナリオを挟んでいたのだ。他のPCは、その際にフェンが得た経験点などをもとにキャラを作ってもらった。
残念ながら、そのセッションの記録は残していない。ただ、今後のキャンペーンのストーリーにその時の内容は深く関わってくることはない、ということは明言しておく。
GM その子が謎の剣を手に入れて、みんなをこんなところまで飛ばしてしまった、という状態ですね。
フェン どう責任を取ってくれるのか、と。
GM 持っている剣が何かって話なんですが……アネットがフェンと冒険をした後、別の仲間と一緒に依頼をこなしたらしいです。その時に手に入れた、と話してくれます。
受けた依頼というのが、「盗賊団を退治する」という内容。戦闘終了後、盗賊団が隠し持っていたこの剣を発見したとのこと。
この剣の近くにあった物がいつの間にか消えたり、戻ってきたりという怪奇現象が発生していたことから、盗賊団の中では「これ呪いの剣なんじゃね?」と恐れられていたらしい。
アネットたちのパーティがこの剣を接収したタイミングで、盗賊団の生き残りからその話を聞かされた。冒険者たちは漏れなく呪いを恐れ、剣をアネットひとりに押し付けた。
対処に困ったアネットがギルドに駆け込んできて……あとはPC達の知る通りである。
GM 当の本人は「なんでこんなことに……」と涙目です。
フェン 悪い子ではないと……思いたいよねえ。
GM さて、アネットの話を横で聞いていたジョンですが、ここで「安心しな。多分そいつ、呪いの剣なんかじゃないぞ」と口を挟みます。皆さん、ちょっと見識判定振ってもらっていいですか?
果たしてこの剣の正体は何なのか。それを知っているかどうかの判定だ。
相変わらずセージがいないパーティではあるが、フェンが平目で高い出目を叩きだす。目標地も低かったため、フェンはこの剣について知っていたということに。
なお、裏でガルシアが1ゾロを振っていたことを付け加えておく。
GM では、フェンはこんな話を聞いたことがあります。『魔剣テレポ』という、第八世代の魔剣です。
〇魔剣テレポ
第八世代の魔剣。データ的には魔法のミスリルソード。
「あらゆる場所に瞬間移動できる失われた魔剣」“テレポータル”の、数世代に渡った劣化版。
瞬間移動が可能な魔剣ではあるが、下記の制約が付く。
・扱いに熟練しない限り移動先を制御できない
・1度瞬間移動すると次の移動までに3日のインターバルが必要
・移動は2回1セットで、2回目では1回目の移動を行う前に居た場所に戻る
・瞬間移動が暴発する可能性がある
※人間が生存不可な場所への瞬間移動は発生しない
ピーキーなうえに使いにくく、すぐ上の世代により使いやすい同型魔剣があるため、何らかの手段で無力化することが推奨されている。
GM 呪いの装備ではないけど、割と厄介な魔剣という感じですね。
ガルシア なるほど。
フェン じゃあ次戻れるのは三日後ってこと?
GM そういうこと。
フェン それほど害はない感じか。
GM いや……『人間が生存不可な場所への瞬間移動は発生しない』と言っても、瞬間移動した先で目の前にとんでもない化け物がいたりする場合もあるにはあるので、そう考えると割と迷惑な魔剣ではある。
だいごろう いきなり最終回になる可能性もある、と。
GM そう。ムーエストに戻りたいなら、三日間は待つ必要があります。
ガルシア ここに来た時の瞬間移動が帰りの可能性もあるんじゃないか?
GM ああ、そこは大丈夫。メタ発言にはなっちゃうけど、これが往路の転移だということは明言しておく。
フェン じゃあ暇つぶししとくだけで帰れるじゃん。
GM そうだね(笑)。ジョン的には、「しばらくここにいるしかないな。歩きで帰ると骨が折れる」という感じです。
カル 三日はいないといけないんですね……。
地味に迷惑な魔剣代表、魔剣テレポによって引き起こされた事故。そこに巻き込まれた冒険者たち。どんな対処をするにしろ、ムーエストに戻らないことには始まらない。
こうして彼らは、この雪に閉ざされた地ダイケホーンに逗留することとなったのだ。
NEXT→異国での冒険~いざ奈落の魔域へ~(5月29日投稿予定)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます