第13話 別れと照れ
時計が3時の知らせを告げる。その音を聞いて孝也は目を覚ました。
「……もう、3時か」
立ちあがろうとすると太ももの辺りに重みを感じた。頭を下げて確認すると星乃が孝也の太ももを枕代わりにしていた。俗に言う膝枕というやつだ。
なぜ彼女は俺の膝を枕の代わりにしているのだろう? 寝る前は確か、1番端にいたはず。
色々と考えを巡らせるがそれよりもここから動きたかった孝也は星野の肩をそっと揺すった。
「おい、起きろ。もう3時になるぞ」
「……ん、あ、おはよう、ございま、す?」
ゆっくりと目を開けて意識を覚醒させていく星乃。少しづつ状況を理解してきたようで段々顔が赤くなっていく。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ! すみません、すぐに退きます」
顔を真っ赤にしながらすぐに起き上がり、孝也からも距離を置くためにソファの端まで素早く移動する。彼女の方を見るとソファの端で正座の状態で俯いている。
星乃のそんな姿を見て彼は何も聞かずに立ち上がり落ちている毛布を拾って畳む。
「3時も過ぎたし、そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか?」
畳んだ毛布を先ほど自分が座っていた場所に置きながら星乃を見る。耳はまだ赤いが顔はいつも通りの雪のような白色に戻っていた。
「…… 起こしてくれてありがとうございます。私はこれで帰りますね」
「ああ」
それから星乃はソファから降りてガラステーブルの上にある荷物を持って挨拶をする。
玄関で星乃が靴を履き終えてから孝也の方に振り向いたそして彼女の顔を見ながら珍しく提案をした。
「送っていくか?」
「えっ……あ、いえ大丈夫です」
星乃から驚きの声が漏れた。孝也がこんな提案をするとは思っていなかったのだろう。
彼女いつも通りの顔に戻り、孝也の提案を首を横に振って断って玄関を開けて外に出る。
「三河さん、今日はありがとうございました」
最後に一礼をして星乃は玄関の扉を閉じた。ガチャという音を聞いてドアが完全に閉まったことを確認すると孝也はその場に崩れるように座り込んで大きくため息を吐いた。
「はあ……休日なのにすげぇ疲れた」
荷物を片手に自宅に帰る途中の星乃はあることを考えていた。なぜ孝也が膝枕をしていたか。
歩きながら曖昧な記憶を辿っていく。少しづつだがあの時のことを思い出してきた。
ソファの上で寝てしまって三河さんが毛布をかけてくれたときに1度目が覚めて、それから毛布から三河さんのいい匂いがして、変にドキドキしてすぐには寝れなくて。
しばらく寝たふりをしてたら三河さんの方から寝息が聞こえてきた。本当に寝ているのか確認するために起き上がって近づく。
「本当に寝てるんですか?」
頬をつつきながら問いかける。返事はなく、静かな寝息だけが聞こえてくる。
「これなら何をしても大丈夫そうですね……」
三河さんが起きそうになかったので私は三河さんの頭を撫でたりしました。
それからしばらく三河さんで遊んでいたら眠くなってきて、三河さんの膝上に倒れ込んでそのまま寝てしまった。
あの膝枕は星乃が自ら孝也に近づいて自分から孝也の太ももの上に乗っていたのだ。そのことを思い出した星乃は道の真ん中で蹲り、顔を手で覆い隠していた。
「私はなんて恥ずかしいことを……」
自分から孝也の方に寄りかかったことは内緒にしておこうと思った星乃であった。
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