第10話 家までの帰り道、変化
休日の昼下がりのショッピングモールから家に帰るため住宅街を歩いている。両手に重い荷物をぶら下げて。普段は食料品だけ荷物も少ないのだが今回は一斉に日用品が切れたため荷物が大量にあった。
さらにいつもと違うことがもう一つ。隣に星乃が歩いていること。現在会話がないまま10分が経過していた。家に着くまであと5分といったところか。孝也は内心とても気まずかった。
「軽々しく誘わなければよかった……」
隣を歩くいつもより嬉しそうに微笑んでる星乃を見て肩を落とし、小さなため息と一緒に本音が口から漏れた。
「何か言いましたか?」
「いや、ただ今日の昼飯何にしようか悩んでいただけだ」
「そうですか」
誤魔化されたことに気がつき、頬を膨らませて不満を表す星乃を見て思わず笑みが溢れた。
「何笑っているんですか」
頬が元に戻り、今度は目を細めて睨んでくる。だが彼女のそんな視線をもろともせずに孝也は平然としてる。
「いや、星乃って意外と表情に出るな〜と思って」
「そうですか? あまり変わってる気はしないんですが」
彼女は空いてる手で頬を触って確認している。そんな姿も微笑ましいと孝也は心のどこかで思っていた。
「結構、微妙な変化だな。見ていて面白い」
「馬鹿にしてますか?」
孝也の言葉を聞いて荷物を持っていない方の手で拳を作って肩を何回も叩いてくる。力を込めてないのか全く痛く無かったので無視し続けた。
「そんなことは決してない」
そんなこんなで2人は会話をしながら歩いていると孝也の家に着いた。
「ほら着いたぞ」
「ここが三河さんが住んでるお家ですか」
「鍵開けるからちょっと待っててくれ」
「はい」
孝也は荷物をその場に置いてスボンのポケットから鍵を取り出してドアを開け、再び荷物を持って中に入る。星乃がいつまでも中に入ってこないので声をかける。
「入っていいぞ」
「あ、はい。お邪魔します」
孝也は両手を使わずに器用に靴を足を使って脱いで一段上がり、星乃の方へ向き直る。
「先に荷物だけ置いてくるから靴だけ脱いでここで待っててくれ」
「わかりました」
キッチンまで荷物を急いで行く。取り敢えず冷蔵庫の近くに買い物袋を置く。ガサッと音を立てて崩れたが気にせずに玄関に戻ると星乃は靴を揃えているところだった。
「大丈夫か?」
「はい」
丸まっている背中に声をかけるとすっと立ち上がり、振り返った。玄関を見ると孝也が脱いだ靴も綺麗に揃えられていた。
「じゃあついて来てくれ」
「わかりました」
「靴、揃えてくれてありがとうな」
「いえ、私が勝手にしたことなので」
長くない廊下を歩いている間に礼を言う。しかし星乃は首を振って謙遜する。どこまでも実直なやつだ。
先ほど開けっぱなしにしたドアを通って星乃をリビングに通す。
「それじゃあ俺は昼飯作ってるからソファにでも座ってくつろいでいてくれ」
星乃をソファの前まで連れてくる。そして孝也はすぐにキッチンに向かった
「わかりました。あの、荷物はどうすればいいですか?」
「そうだな…… そこのテーブルに置いておけ」
キッチン越しにソファの前にあるガラスのローテーブルに指をさす。
星乃は荷物を静かにテーブルの上に置いて背筋を伸ばしたままソファに座った。それで本当にくつろげるのか? と思ったがまた口に出すと怒られるかもしれないので何も言わなずに昼飯を作り始めた。
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