第8話 孝也、絡まれる
互いに自己紹介をしてから翌日。
朝食をとり終わった頃に星乃から今日の放課後、図書館へに来るように早速呼び出しをするメッセージが届いた。
断ろうと思っていた矢先に星乃から脅迫めいた言葉が送られてくる。
『断ったらあなたの学校での平穏が消えますから』
流石にこれを見た時、孝也は動揺してスマホを落としそうになった。
学校一可愛いと言われてる、しかも成績が学年一位の人がやることじゃないだろ。
それにこの人のせいで穏やかな学校生活が半分無くなったようなものなんだが、それでも完全に消えるのは耐えられないので仕方なく了承のメッセージを送った。
スマホを置き、机の上に手をついてため息を吐いた。
憂鬱な気持ちで学校へ登校する。朝早くに学校に行き、1人の時間を堪能する。しかし人が次第に来始めると教室の静けさは喧騒に変わっていく。
朝のSHRが始まる5分前に肩を叩かれ声をかけられた。
「おい、ちょっと来い」
聞き慣れない声に疑問を持ち振り返るとそこにいたのはこの前絡んできたチャラ男だった。孝也を見下すように見ていた。
なぜか険しい顔をして睨んでくる。明らかに面倒臭そうだったし関わりたくなかった。話したこともない人だし。
「断る」
即答する孝也の言葉を聞いて苛立ちを表し始めた。
「いいから来い!」
そう言ってチャラ男は孝也の腕を引っ張って廊下へ連れて行く。教室の連中は連れていかれる孝也に憐憫の目を向けていた。
朝の廊下はたくさんの生徒で溢れかえていた。その中に孝也も混ざっている。孝也は掴まれている手を振り解く。
掴まれているところを摩っていると珍しい組み合わせだからか、みんな教室に入る前にこちらを見ているような気がした。
「それでなんのようだ?」
無理やり連れてこられたことに腹を立て、目の前の男を睨む。身長はチャラ男の方が高いので見上る形になっている。
「お前、この間星乃となんの話をしてたんだ?」
何の用かと思えばこの間と同じことを聞いてきた。本当に面倒だ。
「だから、お前には関係ないだろ。 それが用事ならもう戻っていいか?」
踵を返して教室に入ろうとすると
「いいから教えろ!」
胸ぐらを掴んで迫る。本当に面倒になってきたので目の前のやつをどうしようか考えているとチャイムが鳴った。どうやら朝のSHRが始まったらしい。
「何をやってるんだ。早く教室に入れ」
先生の言うことは聞くらしく、掴んでいた手を離して小さく舌打ちをして教室に入っていった。
孝也も乱れた制服を整えて教室に入っていく。
朝のホームルームを終えて教師がいなくなった後、授業の準備をしていると晴翔と遙が近づいてきた。
「何の用だ?」
教科書とノートを机の上に置き、2人に問いかける。
「面倒な人に目をつけられちゃったね〜」
遙がちょっと困ったように眉を顰めて笑う。晴翔はどこか別のところを見ていた。視線を追うと似たような奴らと談笑しているあの男がいた。
「2人とも知ってるのか?」
晴翔は険しい顔で見ていたが孝也の質問に答えた。
「知ってはいるんだけど、名前……なんだっけな?」
腕を組んで必死に思い出そうとしているが出てこないようだ。晴翔の記憶に残らないならそこまで問題でもないように思えた。
「ハルくん覚えてないの?
「ああ……そういえばそんな名前だったな」
晴翔は遙に言われて思い出したようだ。
それ以上にとんでもないことが遥かの口から聞こえてきたが。
「ちょっと待て。晴翔、お前そんなことしたのか?」
初めて聞いた出来事に怪訝な目を晴翔に向ける。
「いやだってあいつ、はるちゃんを口説こうとしてたんだぜ。はるちゃんが止めなかったら殺してたかもな。ははは」
笑えない冗談をボソっと言いながら晴翔は笑っていた。しかし、目が笑っていなかったから少し引いた。
「そんなことより東海林くん、かなり面倒だから気をつけなよ〜たかちゃん。じゃあね〜」
「わかった。よく覚えておく」
遙は席に戻る。だが晴翔はまだ孝也の席に残っていた。
「どうした? 遙なら、もう席に戻ったぞ」
「ああ、わかってる。それより孝也、頑張れよ」
ニヤついた顔で肩を叩いて席に戻っていった。
「何を頑張るんだ?」
「ほら、席につけ〜。従業を始めるぞ」
晴翔の言葉の意味を考えようとして瞬間に教室に教師が入ってきた。
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