第3話 2人の友人と疑惑
翌日、孝也はいつもの様に一番乗りで学校に来ていた。彼は浅野誰もいない教室が好きだった。理由は特にないが強いていえば誰もいない教室では自分だけの空間になった気がしたからだ
しかし、今日に限ってはそうもいかなかった孝也が教室に来てからさほど時間も経たずに、晴翔と一緒にもう1人、教室に入ってきた。
「よう、孝也。いつもこんな早く学校に来てるのか?」
「ヤッホー! たかちゃん」
気さくに挨拶してきた彼女の名前は
唯一孝也の中で友人に認定されている2人だ。
うつ伏せで机に寝ていた孝也はうるさい声に顔をあげた。
「はよう……お前ら来るの早くないか? いつももっとギリギリに来てたよな?」
孝也が聞くとニヤニヤした顔で晴翔が答える。
「その理由はな……お前に聞きたいことがあったからだ」
「だからってこんなに早く来る必要もなかったんじゃないか?」
「いや、まあ俺は別に昼の時間とかでもよかったんだけどはるちゃんがすぐに確かめたいって言うから」
ははは、と笑いながら晴翔自身も気になっているようで瞳の中は好奇心で溢れている。付き合っているとなると遥と似た様な思考になるのかもしれないな。
「そうですか……それで聞きたいことってなんだよ?」
面倒だから適当に返答しておけばいいと思い、遥に問うと興味津々に聞いていきた。
「昨日から噂になってたんだけど、たかちゃんって5組の星乃さんとどういう関係なの?」
遙から聞かれたことに関して孝也は全くわからないといった顔をした。
「その星乃ってやつは誰だ?」
「え? 昨日のお昼休みに会いに行ったんじゃないの?」
昨日の昼休みのことをひとまず思い出す。しばらくしてようやくその星乃という人がわかった。昨日傘を返した人、どうやら星乃という苗字らしい。
「あの人、星乃っていうのか」
「そうそう……って、知らなかったの!? この学校で一番可愛いって言われてるんだよ! 有名人だよ!」
目を見開いていかにも吃驚してるという感じだ。遥の言葉を聞いて晴翔の方を見るとうんうん、と頷いていた。
「マジか。何、もしかしてこの学校の大抵の人は知ってる感じ?」
「全学年で知らない人いないかも。多分、知らないのたかちゃんぐらいじゃない? たかちゃん、他人に興味ないじゃん」
「いやまあ確かにそうだな」
「そ・れ・よ・り、星乃さんとはどういう関係なの?」
早く答えが知りたくて目を輝かせて、うずうずしている顔をしていた。
「別にどうっていうほどの関係じゃないな。金曜日に傘を借りたからそれを昨日返しに行っただけだ」
「本当にそれだけなの〜?」
「何か隠してるんじゃないのか? 実際のところはどうなんだよ、孝也」
遙は疑いの目を晴翔は肘で脇腹を小突いてくる。物凄くイライラした。
「他に何が考えられるんだよ」
「そうだな〜 実は隠れて付き合ってました、とか?」
少し考えた後に茶化すように遙は言ってくる。孝也は何言ってんだこいつと思い、呆れた眼差しを遙に向ける。
「隠れて付き合ってるなら堂々と会いには行かないだろ。それに俺に彼女ができる様に見えるか?」
真面目に返すと2人は一瞬黙った後、大笑いをし始めた。
「見た目は悪くないと思うんだけどね〜 たかちゃんの性格上、彼女できないか〜」
「そうだな、孝也の性格上無理か」
結局のところ孝也に彼女はできないから大した関係ではない、という結論に至ったようだ。笑いながら2人は納得した様に頷いていた。
これでこの話題は終わり、いつも通りの他愛のない会話に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます