第2話

「とりあえず宿題してー、いろいろ、家の手伝いしたら、いいと思うー」


 ナマケンはいつも通りの伸び伸びの口調で、すごく現実的なアドバイスをした。

 ナマケンも同じ目にあったことがあるのかも。ゲームをめぐる子どもと大人の戦いって、どこの家にもあるものだよね。

 かくいう僕もこれが初めてのことじゃないから、とっくに手は打っている。


「勉強もお手伝いもやったよ。メッチャやった」


 これにかんしては胸を張れる。そりゃもう、昨日・おとといの僕の「おりこうさん」ぶりといったらなかったんだ。自分で言うのもなんだけど。


「それでも、返して、もらえないのー?」

「一応土曜日に返してもらえることになったんだよ。でもさあ」


 僕はポケットの中でクシャクシャになっていたメモをとりだした。

 そこには、赤いマジックで「ふたこぶ女王は左を向く」と書いてある。


「それー、隠し場所? ってことー?」

「さすがナマケン、話が早い! そうなんだよ。お母さん、わざわざじいじの家に隠したんだ。それで、これに書いてある場所においてあるから、持って帰ってきなさーいって、すずしい顔で言うわけ」

「へー。なんか、宝探し、みたいだねー」


 ナマケンはのんき笑った。

 隠されたのがスイッチでなければ、僕ももう少しワクワクできたけどね。

 僕にとっては死活問題。だから必死に手をこすり合わせる。


「ナマケンさま! 知恵を貸してください!」

「うーん。めんどくさい、なー」


 ナマケンはくりくりの目で右とか左とか見ながら、ふすん、と鼻で息を吐いた。これ、ナマケンのクセだ。しゃべるテンポが独特なのも、ナマケンのクセ。

 そして僕はナマケンのもうひとつのクセを知っている。


「そこをなんとか。ブラックサンダー一個あげるから」


 ナマケンの目がキラーンと光った。

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