第3話

「じゃあやる気出す」

「即答! 超早口!」


 僕は爆笑した。今の返事、三倍速ぐらい早かった。


 ナマケンは実は超のつくほど大食らいで、給食のときだけ機敏になるのだ。だから、ナマケンに頼みごとをするときはおやつを捧げるのがルールみたいになっている。


 僕はさっそくナマケンを誘って近くのコンビニによって、ブラックサンダーを買った。

 本当は学校帰りに寄り道したらダメなんだけど、ランドセルをナマケンに預けて行ったから大丈夫。大人にはバレない!

 そうしておやつを手に入れた僕たちは、公園のあずまやでそれを食べながら、お母さんが書いた謎のメモについて話し合った。


「スイッチのー、隠し場所」


 あらためてメモを確認したナマケンは、ふすん、と鼻から息を吹きだす。ブラックサンダーはすでに丸ごとナマケンのお腹の中だ。


「いちおう、昨日こっそりじいじの家に探しに行ったんだよ」


 僕は言った。


 じいじの家は、うちから自転車で二十分くらいのところにある一軒家だ。ばあばが亡くなってから使わない部屋が増えたことと、ゴルフの練習をするために廊下にグリーンがしいてある以外は、ふつうの家だと思う。そこまで広くないから、これでもいちおう全部の部屋を探したんだ。


「棚とか押入れとか、ひと通り開けてみたけど見つからなかったんだよね。分かりにくいところに隠してあると思う」

「ふむ、ふむ、ふむ……」


 ナマケンがうなずいた。黒目がしきりに動いている。

 スマホで動画を読みこむときみたいだ。画面で円がくるくる回る感じ。


 いろいろ考えてるんだろうな。


 ひとまずブラックサンダーをもしゃもしゃ食べながら待っていると、パチッと、急にナマケンの目が大きく開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る