第4話
翌日、午前十時。鳴瀬は目を覚ますと、すぐに起きた。スマートフォンを手にする。
重吾からの返事はなかった。
それ以外は、いつも通りだった。新作のアプリゲームが五個。全て無料。
ニュースが一つ。
「大手SNS二社がが撤退。利用者が減少し続け、歯止めが利かない。大手検索サイトも、近く撤退を検討している」
鳴瀬はもう一度、重吾にLINEをしようとした。だが、トークの履歴がなくなっていた。
友達リストからも、琴と重吾との三人のグループからも、消えていた。
悪寒がした。いくら探しても、重吾の電話番号も、メールアドレスも見当たらない。間違って消してしまったのかと、昨日の事を思い出したが、あり得ないと確信した。
タブレットから、アラームが鳴り出した。充電してある状態なので、指紋認証をして、そのまま放置をした。
SNSを開く。重吾の名前で検索をした。いつもの、太い黒縁のめがねのマークが見当たらない。
「なんで……いつも一番上に出てくるのに」
動画サイトのアプリにタッチする。検索で、「レトロな部屋」と検索した。
出てこなかった。鳴瀬は静かにソファに座る。
いくらスクロールしても、違うワードで検索し直しても、全く違う人のページが出てきた。
鳴瀬は一度、画面をOFFにした。頭を抱える。しばらくして、琴にLINEをした。
重吾がいなくなった。LINEもSNSのアカウントもなくなっている
どうして?
わからん。昨日上げた動画も、無くなっている。
それ、まずくない?
どうすればいい?
大学に問い合わせ。それと、アパートに行くとか。
今日、行ってみる。ごめん、今日もJパーク行けないわ
しょうがないね、また今度
LINEを閉じた。タブレットは、講義が進められている。画面をタップした。あと、数分で終わる。
スマホで色々と検索したものの、いい解決策が見つからなかった。
今までホワイトボードに数字を書き込んでいた教授が、カメラの方に体を向けた。音量を上げる。
「これで、講義を終わりにします」
頭を下げる。すぐにCMが流れた。
「再開発され、新しくなった神保町。Jパークが五周年を迎えました。今なら、入場料が半額です!」
鳴瀬は無心で、画面に出ているスキップを押し続けた。
「考えている暇があるなら、とことんあそぼう!」
CMが終わる。メニュー画面を開いた。
「その他」をタップ。「問い合わせ」をタップ。「メールでの問い合わせ」をタップした。
鳴瀬は、学生証に書かれてある、自分の番号と名前、電話番号を入力していく。
問い合わせ内容に、重吾の安否がとれない事を書いた。重吾の名前、電話番号を入力した。内容を確認して、送信を押した。
……一時間が経過した。
スマホを見る。未だに重吾からの返信は来ていない。スマホゲームのキャンペーンの通知。遊ぶ気分にはなれなかった。
真っ暗だったタブレットの画面が、白く重吾る。中央に、メールのマークが表示されていた。
鳴瀬はすぐにタップする。
鳴瀬と重吾が通う、大学の事務局からだった。
鳴瀬さんからのメールにて、事務局で調べました所、大学には在学していません。以上です。
それだけの文章だった。
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