第96話 料理
俺は今夜の作業を終えて地底空間のリビングでお茶している。
「行くんだわさー。
硬い地面なんてぶち壊すなのよー。
もう一気に行っちゃうんだわさー!」
「落ち着きなさい、
だけど、
「すぐ下に
ここは慎重に行きましょう。
ご主人様ももう疲れています。
一度休んで英気を養って挑みましょう」
「むー、まどろっこしいなのよー」
今日は結構掘り進めたと思う。前以上に俺の身体が強くなっている気がするのだ。
17歳だし、成長期だし、日々労働して、ヤキトリ食べて、先日は豚肉も食べた。俺の肉体は一回り成長している。
働いてかいた汗を温泉で洗い流した俺は、自分の肉体を見てそう思ったのである。
温泉を出た俺に
これ、これ!
楽しみにしてたんだ、甘いモノ。
俺はお茶を一口飲んでから、クッキーをかじる。
丸く焼き上げた上品な物体。二種類あってチョコらしい色のと、普通の黄色いヤツ。
うまっぁああああああああああああああ。
サクッとして、舌の上でホロっととろける。残るのは上品な甘み。お次はチョコレート色。
いっけるうううううううううううううう。
こっちは軽くビターが効いていて、でも甘みも強くてバランス良い。
忘れてたっ!
スイーツってこんなに旨かったんだなー。
「ご主人様、あのなんか泣いておられる様にみえるんですが…………」
「俺はカンドーしているんですっ!
美味い、美味すぎる。じゅう〇んごく饅頭か!
とにかく、すげー久しぶりのクッキーなんです」
鉱山で昼食用に氷砂糖みたいの貰っていたけど、アレは舐めるとドロっと甘みがあるだけ。疲れた体には良いんだけどさ、味もそっけも無いんだよな。
「
俺はちみっちゃいメイドさんを褒めちぎった。
「あらぁー、ご主人様ってば正直者。
良ければ、これも持って行きますか」
ちみっちゃいメイドさんが見せてくれたのはサンドウィッチ。色とりどりの具が煌めいて、真っ白い柔らかそうなパンに挟まれている。
「欲しいっ!
欲しい、欲しい、ほぉしぃいいいいいいいいい」
「
「じゃ、俺が食べちゃまずいな」
「大丈夫、まだ時間はありますからその分は別に用意しますわ。
ご主人様は好きなだけ召し上がってください」
俺はこらえ切れずに、一個口に放り込んでしまった。赤い野菜がサンドウィッチの断面から見えている。トマトとハムにチーズも付いてる。
ぐはぁああああああああああああああああっ!
「美味しい!
パンが柔らかい。
野菜も新鮮、ハムとチーズの塩っけもたまらない。
少しマスタードも効かせてますね。
さいこーっす。
ビバ、
なんかもー、違い過ぎる。収容所で食べてるメシはアレはエサとでも呼ぶべきもの。コレは天上の美味だろう。
「すいません。
コレ皿ごと貰っていっても良いですか?」
図々しいけど、俺はブラウニーさんに訊いてしまう。
だって、だって……旨いんだもん。
「イズモ、普段どんなご飯食べてるのなのよ?」
「ご主人様、普段いったいどんなお食事を?」
まー、嚙み切れないパンと具の無いスープかな。たまにパンはカビ生えてたりして。アレがフツーな様な気がしてしまっていたが、久々に旨いモン食べて分かった。
分かってしまった。アレはひどい。マトモな人間が食べるものでは無い。
なんとなくこの世界の食事はあんなンがフツーと思い込みそうになっていた。イケナイ、イケナイ。セタントだって、味がしないと文句を言っていた。本来この世界だって美味しいモノも旨い料理もあるのだ。あの収容所がレベルの高い料理と縁が無かっただけである。
「持って行ってください。
こんなサンドウィッチ程度で泣くほど感激されるとは。
ご主人様が不憫でなりません。
これからは毎日私たちがお料理御馳走しますからね」
「サンドウィッチ食べるだけで、泣き出すとはだわさ。
イズモがヘンなのには慣れたつもりだったけどなのよ。
さすがにビックリするんだわさ」
気が付くと俺の目からは涙がこぼれていた。
えーーーっ?!
自分で自分にビックリするな。泣くほどなの。
どれだけ、俺粗食に耐えてたんだ。
むぅ、思い返してみると確かにヒドイ。エサばっか食わされてた気がする。
そりゃ、クッキーやサンドウィッチ食べただけで泣きそうになっちゃうよなー。
ちみっちゃいメイドさんは、俺が泣いてるのにいたく同情したらしい。やってやるわ、と拳を握りしめて決意の表情。
「ご主人様、安心してください。
フツー、我々妖精は植物や果物しか調理しませんが。
ご主人様のためです。
お肉も加えて、タップリ作って差し上げます」
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