第94話 な、ななななな
俺が動き出すと、暗がりで音がする。
多分
俺が歩き出して、近くに来たのでワタワタ逃げたのか。
「
今まで昼はこの場所に誰も居なかった筈なのだが、今となっては仔ジカがいる。
「ん--、少しだけなのよー。
出たのは
「ぐるぐるぐぐぐるるる」
なんとなく雰囲気から察するに。
「トーゼンです。
仔ジカは私が守ります。
アナタの事までは面倒見ませんけど」
と言ってる様な気がしないでも無い。
俺に
現在俺は地面を掘り進めていて、上の空間が見えない。だけど
鉄の重さってどの位だったかな。7.8×鉄の長さ×幅×厚みで合ってたよな。もう忘れっちまうよ。あの
とすると……3900キログラム。およそ4トン。
マジか?!
そんなの俺いくつか妖精のマントに入れてるの。よく俺動けるな。マントに入れると重さは感じないんだけれども。
そりゃ地面も振動するよな。
上からは緊張する雰囲気が伝わる。
「ぐるっぐるるるるるるぐるうる!」
【これは……
ピィーー、ピィピィ
【お父さん、怖いよ】
仔ジカちゃんの怯えた様な叫び。
待てっ、今すぐお父さんが行くぞ!
俺はヒョイっと掘っていた穴からジャンプ。目の前では
「バカですか。なぜ出てくるんです。
貴方が多少強いと言う話は
いや、今はそんな場合じゃないですね。
私は死に物狂いでコイツを止めます。
貴方はその仔ジカを連れて逃げてください」
俺の方を振り向きもせず言う女性。毛だらけで表情は分からないが、その体からは気迫の様なモノが漏れ出している。
「偉大なる妖精の王オウベロンよ。
我に力を貸したまえ。
この不出来な娘に貴方様の慈悲を」
「この空間に漏れ出た魔力がわかりますか。
貴様はその残滓で生を受けたと言うのに。
何者の情けで動ける存在になったか理解出来ていない不細工なデク人形め。
この魔力こそは
なのに
愚か者めが、思い知らせてあげましょう」
フェノゼリーさんが宣言している。その彼女の肉体から凄まじいモノが沸き上がるのが感じられる。
「我は冬山の獣。
誰も入り込めぬ雪山に足跡を残す伝承に生きる物。
人が恐れ崇める力を見せてやろう」
彼女は近くの
「何をぼうっとしてるんです。
私が食い止めると言ってるでしょう。
貴方は逃げるんです。
あれ?!
俺に言ってるの?
2メートルほどの
俺は
「
「あいさー、なのよ」
俺の近くに飛んできたちみっちゃい子の腕に抱えきれないような煌めく石が現れる。
「おっとっとだわさー」
魔法石の重さでふらつく
俺はちみっちゃい子に親指を立ててやると、
ぐーっど。
「え……え……ナニが起きたんでしょう……あれ。
倒した……いや、そんな、まさか……」
「フェノゼリーさん、危ないからどいていた方が良いですよ」
「貴方っ……あなた……人間が
なのに……何を自分が成し遂げたのか分かってるんですか……
そんな落ち着いている場合ですか?!」
「落ち着いてないですよ、焦ってますって」
「焦っている……違う!
違います。驚きなさい。勝ち誇りなさい。
歴史に残る様な事を成し遂げたんですよ、貴方は!
なんだって貴方は焦ったりするんです。
…………焦る? なんで?」
「この
「…………は?!……」
そう。もうすぐそこに来ているのだ巨大な図体で地面にドシンドシンと振動を響かせる金属の塊。
「……な、ななななななななななななななななななななななななんあななななななななんあなななな」
危ないって言ってるのに、フェノゼリーさんは立ち止まってしまった。何故か、なななな言っている。人間の言葉キライだって言ってたものな。動物になら通じる言語なのかも。
なんだか怯えているみたいにも見えるけど、
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