第49話 魔法武具って……
ルピナス・エインステインは代々魔法技士をやっている貴族の弟子になったが、実際には下働きだったと言う。更にはそこのロリコンオヤジにセクハラちっくな目に逢い、辞めてこの鉱山でツルハシばかり製作する仕事を選んだと言っている。
「私が色っぽい美人大人だからイケナイのかもしれないがな」
それは多分違うな。オヤジがロリ巨乳好きだったんだ。
そー言えば俺も社長だったけど…………
そんないい思い全く味わえなかったな。女子社員は俺を見ると丁寧語で話してくる。アカラサマに緊張した顔で目線を合わせないようにしててさ。なんだよ、俺がなんか悪いコトしたかよ、とイヤな気分になったなー。
イマ考えるとイキナリ目の前に社長が現れたら社員の女性が緊張するのもアタリマエっちゃアタリマエなのかもしれない。
とりあえず話を元に戻そう。
どうやら
俺は日本のゲームの影響か。魔法武具なんて言われて、てっきり炎のつるぎ、火の力が宿ってる特殊武器とか、風の靴、素早く動ける特殊装備、みたいなのを思い浮かべてしまっていたのだが。どうも違うみたい。
「魔法石を使って鎧に特殊な力を持たせたり出来ないのか?」
「鎧に特殊な力……?
ああ、イズモはお伽話か劇の見過ぎだな。
そう言う神話の英雄の時代は終わった。
これからは
なんとなく分かるようで、すぐには話の背景が理解出来ない。
魔法技士や魔法武具はまた別。
うーむ。ちょっと良く考え直してみる必要があるな。
「はぁ……
ホントは私も王から注文を受けて
「すれば良いじゃん。
ルピナスも一人前の魔法技士なんでしょ」
「だから!
大型高機能魔法炉が必要なのだ。
貴族には代々伝わってたりもするが、簡単に買える値段じゃないんだ。
ここで仕事していても…………
一生かけても貯まらない」
「ちょっかー。
タイヘンでちゅね、ルピナスちゃん。
まだ人生先は長いから希望を失っちゃダメでちゅよ」
「うん。
ルピナスの夢なのー。
がんばるー。
…………だ・か・ら!
子供扱いするなー!!」
毎日毎日、青銅のツルハシばっか作ってる生活に嫌気が差していたルピナスだったから、俺のシャベルを作る気になってくれた訳だ。
昼間の鉱山労働では使わないでおく。シャベルは珍しい道具らしい。だから出番なのは夜の作業。
深夜の坑道を下に掘り進めて行く。広い空洞の真ん中に俺が堀った穴があるのだが、ツルハシでは掘り進めるのに向いていなかった。固い岩盤を崩すには良いのだが、崩した土や岩を退けなければいけない。
効果はてきめん、人間が入ってせまく感じない3メートル四方くらいに穴をバンバン掘っていく。ある程度下に掘ったら、土や岩を上にガーっとどかす。穴が下へと深くなって来ると、また上の方も広げて足場を作っておかないとイケナイ。
縦にだけ一気に深いとナニかのはずみで生き埋めにされそうでコワイ。周辺を掘り広げて、また下へ深く掘っていく。
気の遠くなる様な地道な作業。
「スゴイ!
すごいんだわさー。
思った以上に掘り進められてるなのよー。
イズモ本当にすごいんだわさ」
まぁな。
ついでにちみっちゃい女の子が褒めてくれるのだ。言う事無しである。
「そろそろ今日も終わりの時間なんだわさー。
いつものハイキング行くでしょなのよ。
今日は川に行ってみない?」
「川?
川があるのか?」
山の中だし、そう言えば湖もあった。川くらい流れていてもアタリマエだな。普段鉱山作業をしている場所にも水場があった。アレも山の上から多分川が流れて来てるんだろう。
「川に住んでるお友達が困ってるみたいなのよー。
イズモ、助けられないだわさー?」
俺は山を進んでいく。
足元が……すっげー歩き易い!
革靴サイコー!
レプラコーンちゃん、ありがとー!
こないだまで、ツッカケみたいな木のサンダルで山道を歩いていたのだ。それに比べてなんと歩き易いコトか。
革靴は日本で履いていたビジネスシューズみたいのとは違う。どちらかと言うと安全靴とか登山用靴に近い。くるぶしまでを覆い、ぎゅっと紐で縛る。
少し重いと言えば重いんだが、それは俺がリクエストしたのである。重くても良いから、とにかく頑丈なので作って、と。
リクエストしたら、スニーカーの様な軽い靴も作って貰えるかな。
「あそこ、あの川がお友達が棲んでるトコなのよー」
そうこう言ってるウチに目的地に着いたみたい。
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