第一章 目覚め不能症候群 <第三話>
ボクには、毎朝目覚めの時にしか聴かないカセットテープがある。それは、民族音楽のオムニバスなのだが、それを聴きながら朝食と言っても、煙草とインスタントコーヒーだけの質素っで不健康なものを、ただ面倒臭いという理由だけで摂ることが、ルーティンとなっている。僕は、その特製モーニングセットに手を伸ばしながら、朝の柔らかな光とシンクロさせることが何とも心地良く、さっきまでの死に掛けていた感覚に、少しずつ生命を吹き込むための一つの儀式みたいなものとなっているのだ。
そして、煙草を二本程吸い、コーヒーも二杯程飲み終えたその次に、洗面台に立つ時に合わせて、決まって流すカセットテープが一本ある。それは、自分で退屈しのぎに編集したお気に入りの曲ばかりを録音したベスト版というべきもので、テープが途中で終わっていても、必ずいったん巻き戻してから、一曲目からプレイすると決めているものである。
ステレオコンポのスピーカーからは、ザ・ローリング・ストーンズの《ジャンピング・ジャック・フラッシュ》のギターリフが繰り返し奏でられ、続いてタイトなドラムがリズムを刻み、シンプルなベースラインがメロディに重なっていき、白人離れしたソウルフルはヴォーカルが絡んでくる。
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