第19話  絶望

二日ほど七香は寝込んだ。

そしてやっと起きれるようになったが、一眼でわかるほど顔色が悪い。


「旭〜、私このままだと覚醒出来ないみたい」涙をいっぱい溜めて俺を見た。


「覚醒出来ないとどうなるの?」


「ずっと必要な血が増えてくの、蝶々になれない芋虫みたいにひたすら血を吸って生きるだけ………」


「そんな酷い事になるの?」


「うん……………」七香は絶望に押し潰されそうだ。


「もっと沢山の血を集めてもダメなの?」


「一度に吸収できないし…………」


「じゃあ毎日違う色の味を持って来てもダメ?」


「そんな事出来るわけないわ」七香は悲しそうな表情のままだ。


「俺、クラスの皆んなに頼んでみる」


「誰の血でも良いわけじゃ無いもの………」


俺は1人で学校へ来た、でも暗い顔をしていた。

それを見て倉木遥ちゃんが近づいて来た。


「穂乃果ちゃんから聞いたけど、七香ちゃん倒れたんだって?」


「うん………」俺は力なく答えた。


遥ちゃんは耳元に小さな声で「覚醒するの無理なんじゃない?」そう聞いて来た。


「えっ?」俺は驚いて言葉を無くした。


「私のお母さんが心配してるわ、今日会いに行ってもいい?」


「…………………」


「このまま見過ごす訳には行かないわ、とりあえず七香ちゃんに合わせて、お母さんと一緒に行くから」


「うん…………」俺は藁にもすがる思いだ。


放課後、遥ちゃんとお母さんが一緒に俺の部屋へ来た。


「七香ちゃん大丈夫?、私はあなたのお父さんを知ってるわ、あなたと同じ『ラム』よ」


遥ちゃんのお母さんが話しかけた。


「えっ!お父さんを知ってるんですか?」七香はベッドに寝ていたが起き上がった。


「私は覚醒出来てるから、私の血を吸って」そう言って腕を捲った。


「良いんですか?」


「今はそれしか方法がないわ、それに早く回復しないと間に合わないでしょう?」


「すみません」七香は腕に吸い付くとしばらく血を吸った。


しばらくすると少し顔色が良くなった。


「七香ちゃん、少しは元気になった?」遥ちゃんが覗き込んだ。


「遥ちゃん、ありがとう助けてくれて、でも何でわかったの?」


「お母さんがあなたと同じ『ラム』だから気になって見てたの」


「そうなんだ、遥ちゃんも『ラム』なの?」


「ううん、私は七香ちゃんみたいに血を吸う事はできないしパワーも無いのよ」


「そうなんだ」


「遥ちゃんのお母さんは俺を見た、七香ちゃんにあなたの血を出来るだけ提供してね」


「はい、体の許す限り頑張ります」


「あなたの血は特殊だからきっとパワーを回復させてくれると思うわ」


「えっ?……俺の血は特殊なんですか?」


「あなたの血はVX1の珍しいマイナス型だからきっと大丈夫よ」


「はい、わからないけど七香に出来るだけ吸ってもらいます」


「じゃあ、また様子を知らせてね」そう言って2人は帰って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る