第13話  江波芽衣沙

しばらく祐湖と世間話をしていたが、何気なく切り出した。


「なあ江波芽衣沙ちゃんがバージンだって噂、本当かなあ?」


「ええっ!嘘だろう、彼女は学年一イケてる女の子じゃん、もちろん七香ちゃんは別格として」


「だよねえ……」


「メイクだって上手いしダンスもカッコいいぜ?」


「噂だからなあ……」


「もし万が一本当だったら、俺が立候補するわ」祐湖は何度も頷いた。


「やっぱ彼女はいいよねえ………」俺はさらに煽るように言った。



翌日の放課後芽衣沙ちゃんが口を尖らせて近付いてきた。


「旭くん、何なの!どう言うつもり?私がバージンなんて噂を流したのは」 


「えっ!」俺はひきつって後退りした。


「どうせ妹からの情報でしょう?」


「………………………」俺は言葉が出ない。


「祐湖のやつが、バージン俺に下さいなんて立候補して来やがったよ」さらに睨んできた。


「………………………」俺はさらに言葉が出ない。


横にいた七香にも被害が及んだ。


「七香ちゃん、しっかり旭を管理してよ!」


「えっ?」


「だって七香ちゃんの彼氏でしょう?」


「いや、彼氏じゃあないよ」七香は不安そうに首を横に振った。


「えっ、そうなの?」芽衣沙ちゃんは少しだけニヤリとした。


「じゃあ旭なら私のバージンを捧げてもいいわ!」さらにニヤリとした。


「私が口を挟む問題じゃあ無いから」そう言って七香はぷいと出て行った。


七香が居なくなると芽衣沙ちゃんは優しい顔になって、俺に言った。


「七香ちゃんと付き合ってるって言った方がいいんじゃない?」


「えっ?」


「だってどう見たって七香ちゃんは旭が好きでしょう?」


「それは…………」


「それに最近女子の中で旭くんの彼女になりたいって話をあちこちで聞くよ」


「え〜………」


「私だって旭なら付き合ってもいいもの」


「それは………」俺はまた言葉を無くした。


部屋に帰ると七香はまたいつもの本を顔にのせ寝ころんでいた。


「ただいま」


「…………………」


本をそっと退けた。

七香の目は少し潤んでいた。


「七香のために芽衣沙ちゃんとHした方がいいの?」


「それは絶対いや!」七香は俺の胸に顔を埋めた。


「俺だって嫌だよ、好きでもない子とHするのは」


「旭〜………私、芽衣沙ちゃんの血はもう要らない」


「他に赤い味の子はいないのかなあ?」


「分かんない」


俺はどうしたらいいのか考えが浮かばなかった。

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