第9話  七香の悩み 

最近七香は本を読んではため息をついている。

例の全く文字の読めない本だ。


「ねえ七香、どうしたの?」


「大人になっていくと色んな問題が出てくるみたいなの」少し複雑な表情を見せた。


「どうなるの?」


「うん………ひと言では説明できないわ」


「吸血鬼って普通の人間より寿命が長いんだろう?」


「上手く生きられればね」


「俺、ずっと七香と一緒にいたいなあ」


「私だってそう思っているわ、でも…………」七香は口を濁した。


「俺頑張って医者になるよ、そうしてこの病院を引き継いだらもっと血を提供できると思うんだ」


「ありがとう、でも血だけの問題だけじゃあないのよ……………」


「そうなんだ………でも俺に出来る事があったら何んでも言ってよ」


「ありがとう旭、大好きよ」七香は俺に抱きついた。


俺は七香の甘い香りに酔いしれた。

そして俺の体は当たり前の反応をした。


「旭、Hしたい?」


「まあ……俺も正常な男子だからね………」


「もう少し心の準備ができるまで待ってね」


「分かってるよ、七香がいいって言うまでは我慢するつもりだから」


「ありがとう…………」七香は切ない表情を見せた。


「私普通の人間に生まれたかったわ…………」


「そう、でも七香は何でも優秀だよ、俺は羨ましいけどなあ」


「だって私は血がないと直ぐにダメになってしまう体だわ、この状態は障害を抱えてるようなものよ」


「そうかなあ…………世の中に障害を抱えていない人なんているのかなあ………」


「普通の人間だったら大丈夫なんじゃないの?」


「普通の人間だってみんな個性があるだろう?その個性って得意な事だったりするけどその反対には苦手なことがあるような気がする、だから結局みんな何かの障害を持ってるんだよ」


「そうか………そうかもね………吸血鬼の私も一つの個性なのかなあ………」


「そうだよ、だから1人で悩まないでよ」俺は七香を抱きしめた。


「旭は少しずつ頼り甲斐のある人になって行くね」


「そうかなあ…………」


「そうだよ、旭が気づいてないだけだよ」


「俺はもっと七香が頼りにしてくれる人になりたいなあ」


「今でも十分頼りにしてるわよ」七香はいつもより強めのキスをした。

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