俺は毎日彼女に恋をする。

リアス

拝啓、記憶が消える俺へ

「んぁぁ〜眠すぎる〜」


今日日曜だしもうちょい...いや、これすると月曜がきついんだよなぁ。

いつものように身体を伸ばそうとした時にあることに気づいた。

白系統で統一された部屋、病室だということにだ。


「病院?こんな所に来た覚えはないぞ?」


その疑問に対しての答えに俺はすぐに辿り着いた。身体が動かないのだ、腕と首以外の場所がびくとも動かない。

かろうじて動く首と腕を使い周りを見回す。

カーテンを挟んだ隣に一人いるようだがそれ以外の人の気配はなく、どうやら結構大きめの部屋に2人きりらしい。

その人との反対側の椅子に一昔前のラブレターのような形をした封筒に入った手紙を見つけた。

それを手に取ると裏面には俺の名前が書かれていた。どうやら俺宛らしい。

不治の病で意識不明の重体だったとか書いてたら嫌だな...母さんも俺がもしそんな状態だったらぶっ倒れるだろうしな。

貼られている粘着力の弱いシールを剥がして中身を読む。そこにはこう書いてあった。


拝啓、記憶が消える俺へ。

今これを読んでいるのが何日目なのかは分かりませんが、俺は記憶が消え始めた2日目の2020年の5月14日、13歳の時にこれを書いています。

俺は昨日の夜に急な発熱があり病院に向かったそうです。

前にどこかで頭ぶつけた記憶があると思います。

それのせいで記憶する機能がある海馬?という部分が傷ついたことが原因らしいです。

他にも神経に関係がある所が傷ついてるから徐々に身体が動かなくなってしまうらしいです。

これを毎日記憶が消えた状態の俺に毎朝読んでもらうように伝えてもらうように言っておきました。記憶の消えた俺、すでに身体が動かなくなっていたとしてもどうか頑張って下さい。


そこで文章は一度途絶えていたが、別の紙も入っておりまだ続きがあるようだった。


さて、これを書いているのは2021年6月24日の俺だ。過去の俺の文章のプラスで見て欲しいんだけど、横のベットにいる女の子の上島糸乃とな、誰にも言ってないが俺と付き合う事になった。まじで!彼女を見た瞬間に恋に落ちちまった!恐らく前の俺も書いてないだけで一目惚れしただろう。だから仲良くしてやってくれ。


「まじかよ...いずれは全部動かなくなっちゃうのか...

しかも2021年って最低でも一年以上過ぎてるじゃん。もう勉強とか取り返しつかねーし。まじかよぉ。」

「も〜!記憶が消えてるのは分かるけどいっつもいっつも同じことばっか言って!」


隣のベットから声が聞こえる。噂の俺の彼女なのか?そう考えているとカーテンが一気にシャァァと開いた。綺麗な黒髪のボブカット、目は少し青みがかってるようにも見える、その吸い込まれそうな白い肌にびっくりなほどでかい彼女の胸に俺は釘付けになった。


「あれれ〜?また、一目惚れか〜?貴方うちの事ほんっとに好きやなぁ!でもおっぱい見過ぎやで〜?」

「うん、やばいわめっちゃ可愛い。これが一目惚れってやつかよ!想像以上にやばいなれ。」

「きゃっ!いいこと言ってくれるなぁ〜このこの!」


胸を隠しながら彼女は照れて身体をうねうねさせている。

実際俺は初めて好きな人が出来たようなものだからめっちゃ緊張してる。一目惚れってほんとにこんな感じなのか。


「それもそうなんだけどさ...今って何年の何月何日?」

「ん〜?あぁ今日は2022年の5月14日や。

君がうちの隣に来てちょうど2年目やな。節目ってやつや!」

「そっか、ありがとう。でも意外だったまだ2年しか経ってないんだ...もっと3年くらい経ってるのかと思ってたから。」

「アハハッ!櫻ってほんと前からずっつつとおんなじ反応するからおもろいわ!表情まで同じやしな!」


彼女はお腹を抱えてヒイヒイ笑っている。


するとガラガラと部屋の扉が開くとそこからバイキングの料理を運ぶ台車みたいなやつにのせて素朴な和風定食を看護師さんが持ってきてくれた。


「はーいお二人さん朝ご飯だよ。」

「あぁ、もうそんな時間か!今日は何やろなぁ?」

「昨日と同じで和風セットですよ。」

「えぇ〜!あれ食べ過ぎて飽きたわ!」

「文句言わないの!オッケー、櫻くん手紙はもう読んだんだね。まだ状況を飲み込みないだろうけど頑張ろうね。」

「はい。ありがとうございます。」

「ふふっ、君は覚えてないだけで2年の付き合いになるんだから遠慮しなくていいのよ。

あ、布団頭の方もちあげるから気をつけて。あと机前に寄せるよ。」


彼女がリモコンを操作すると頭の方が少し持ち上がり、机も動くようでガラガラと足の所にあったのがこっちに動いてきたので食べやすい姿勢になれた。


「ありがとうございます。」

「大丈夫。それでも身体動かないし食べずらいだろうからゆっくりでいいからね。」


そう言って彼女は部屋を出て行った。


「ねえ、ねぇ」

「どした?まい、ぼーいふれんどよ」

「上島さんってなんで入院してるの?さっきの話し方だと昔から俺の事知ってるっぽかったけど」

「そんなかたっ苦しく無くてええよ。まぁ

そやなぁうちはこれや。」


そう言って上島さんがシーツで隠れていた足を見せた。

俺はそれを見て驚愕する。


「えっ、上島さんっそれって!」


彼女には膝から下の両足が無かった。


「うちのは病気で体の細胞が壊死するやつらしいわ。血液が届きにくい先っぽから壊死していったんやけどな。

腕は進行が遅かったから壊死せずに行けたけど、足は進行が早かったから爪先が壊死した頃に分かったから切り落とすしか無かったんや。しかも両足やで!歩きずら言ったらありゃしない。お陰で病院暮らしも慣れたもんよ。」

「あっ、ごめんそんな話聞いちゃって

嫌だったでしょ。」

「別にうちはカレピに言うのはいっつもやから安心しいや!それに今日は外してるけど

いつもは義足ちゃんと付けとるし!」


笑いながら言う彼女だが実際足を失うと言う事はとても辛いものだっただろう。


「じゃあ折角だしうちの事慰めてーや!」

と上島さんはこっちに向かって両手を広げる。神さまありがとう!

俺はそう思いながら俺は頑張って這いながら

向かい、彼女を抱きしめる。やばいな女の子の胸ってこんなに気持ちの良い物だとは。

やばい鼻血出そう。


「おいおい!おっぱい堪能しとるな?心は13歳のマセガキ君!」

「うん、めっちゃ堪能してた。正直舐めとったわ。」

「わぁお!ストレートに言うそこは褒めたげるわぁ。」

「じゃあもっとしていい?」

「アホか!彼女やからって調子乗っちまったらあかんでぇ〜それは18になったらやな。」


そう言って彼女は俺から離れる。

「それじゃあ今日はしかたないなぁ。じゃあうちが君と遊んだるわぁ!」


そしてその後俺達はたくさん色んな遊びをして俺もすっかり彼女に打ち解けた。

そしてついに消灯時間のギリギリになってしまった。

「はい紙相撲も俺の勝ち!花糸乃また負けてるじゃん。」

「いや!違うんや!まだうちが本気出してないだけや!」

「それ今日何回も聞いたよ!」


「はいはい、君達。もう遅いし寝ましょうね。櫻君じゃあ明日会いましょうね。」


そう言って看護師さんは電気を消して去ってしまった。


「ねぇ、花糸乃」

「どうしたん?」

「記憶が消えるって思ったら何か死ぬじゃないけど今日のこの俺が過ごした記憶は消えるんだなって考えてたら辛いし、怖いな。」

「そうやなぁ。あっ!そうや!櫻のさ携帯の中に確か毎日日記あったはずやで!」

「本当?見てみる。」


俺は携帯を開く。

たしかにそこには前まで入れてなかった毎日日記のアプリが入っていた。


昨日と表示されている日記には彼女と沢山遊んで幸せだった。と書き残している。しかし最後にこう書いてあった。


花糸乃は寝てしまった。もう誰も居ないこの場所の出来事は完全に誰にもしられないんだな。今日の俺が生きた時の記憶は明日になったら消えるんだよな。なぁ、だからさ明日の俺。後悔はしないでくれよ。俺は今日生きたこの記憶が消えるのがたまらなくこわいよ

でも後はたのんだ。最後のお話楽しんどけよ。


そう書いてあった。

「どう?何が書いてあったか?」

「やっぱり記憶が無くなるのは寂しいってさ」

「そうやんなぁ。でも安心して!」

彼女は昼につけた義足をキリキリ合わせながらこっちのベッドに来て俺の事を精一杯抱きしめてくれる。

「私は2年間櫻を見続けてきた。

そんな君の優しさとか、悲しみとか、怒りとか、色んな君を見てきた。例え毎日櫻の記憶が消えても、私が覚えていてあげるから。安心して寝てええで!」

「ありがとう、花糸乃。」

「此方こそどういたしまして。」


俺達は笑い合う。


「花糸乃」

「何?」

「俺と、俺と結婚してくれないか?まださ

今は出来ないけど、記憶は消えてしまうけど!それでも君を絶対に幸せにするから!」

彼女は少し戸惑っていて、嬉しそうな顔をしていて、泣きそうな顔をしていていた。

「うんっ!分かった約束ね!」


その後俺は将来の俺に向けて手紙を書いた

直後かくっと眠ってしまった。


そして10年の月日がたった


「あぁ!よく寝た!」

「うん、おはよう。」

俺が目を開けると隣には知らない女の人がいた。


「うわぁ!お前誰やねん!」

と俺は叫ぶ、なんで見知らぬ場所で女の人が横で寝てるんだよ!俺は一丁前に叫んだが実際めっちゃ可愛くてびっくりしてる。

「おい!何か身体動かねーんだけど!」

「ちょい待ち!落ち着いて今見てほしい物があんねん。」


その人は俺に手紙を取り出した。

「なんやこれ?」

「いいから読んで!」


俺は彼女に手紙を開いてもらって読んでいくうちに事の意味を理解した。

俺は事故で12年前から毎日記憶がリセットされる病気になりで身体も動かなくなってしまった。

そして俺はこの花糸乃さんと言うこの綺麗な女の人と結婚して今は二人で暮らしている事。


「そっか、俺もう25歳になるんだ。」

「そうだね、君とは15の時に婚約して18の時に結婚したからね。見て、これ私達の昔の動画。」


そう言って彼女が写したのは、結婚式や成人式、出かけた時の映像だった。


「安心して、君がいくら忘れようと、うちが

覚えといてあげる。君がどれだけの出会いを忘れようと全部教えてあげるんやから!」

「突然のことやからびっくりやけどよろしくやで。俺の奥さん。」

「そうや!これ見せへんと!」


そう言って彼女はスマホを見せてきた。

そこにはある文章が残っていた。


未来の俺。恐らく俺は夜になると記憶が消えるからその時が多分みんな一番怖いと思う。だけどな、そこで後悔しないぐらい、良い一日に出来たなって思えるぐらいその1日1日をかみしめろ!それで次の日の奴はその話を教えて貰え!楽しんで生きるぞ俺!

えいえいお!!


俺はそれを見て少し笑ってしまった。


これでおしまいです。少しでも面白いと思ったら星とハートお願いします。後要望があったら続編も書きますのでよろしくお願いします。







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