第5話
女の子と一つ屋根の下。
なんてあまずっぱいシチュエーションでしょうとか夢見た貴様、俺と代わってくれてもいいんだよ?
アイングライツ戦技学校を杏香ちゃんに案内された後、下校時間になったので連れられて彼女のアパートまで帰ってきたのはいいのだが・・・。
「じゃあ、あたしは先にシャワー浴びるから。絶対に覗くんじゃないわよ!!」
「あ、はい」
「またその気のない返事・・・。いい、覗くんじゃないわよフリじゃないからね!」
「うんわかったわかった」
いくら俺がエロシチュに飢えてるからってリアルじゃやらねえよおっかない。
さっさと風呂場に追いやってから、俺はリビングでくつろぐことにした。
『あーーーーーっ!?』
あーはい、いただきましたラブコメシチュエーション。
どうせタオルが無いとか言い出すんだろ?
『ねー、斗真ー!』
はいはい・・・。
ノロノロと立ち上がって洗面所を目指すと、扉を少しだけ開けて顔だけ覗かせる、いや、健康的な生肩の見えるお姿の杏香が困った顔をしてこっちを見ていた。
「パンティとって? 下着忘れちゃった」
「アホなのかな? よく知らない同士の同棲で男にパンツ取れとか。襲われたいのかなキミは」
「いいから取ってきてよ!」
「合法タンス漁り放題いただきました直ちに!」
「あ、やっぱいい。さっき履いてたので我慢して後で着替えるから。死ねエロバカ斗真」
ご褒美いただきましたありがとう!?
不機嫌そうにバタンと閉じられる扉。
なんとも不健全な環境なのでなるべく早く改善しよう。あの校長先生優しそうだし、寮があるかどうか相談してみるか。
翌日。
アイングライツ戦技学校に通学。
「いい? 初日は学校案内とか理由つけられるけど通学は論外! ということで変な噂とか立つと迷惑だからあたしと登校時間ずらすように。ちなみに、斗真の方が三十分早く家を出るのよ!?」
ということで一人通学。
これならマジで寮の件相談してもいいかもな。
アイングライツ戦技学校は、一般生徒の通う普通科2クラス、整備兵候補の集まる技術科3クラス、オクスタンパイロット候補の集まる戦技科3クラス、そして指揮官候補の集まる戦術科1クラスの全9クラスで構成されていた。
各クラス二十人程度だが、普通科だけは四十人前後いるらしい。
で、俺はどうやら中途入学のため特別クラス。中途入学の生徒を集めた整備・戦技の合同クラスらしい。
主人公がいたのは確か、落ちこぼれクラスと揶揄されるCクラスだったか。メインストーリーに関わらないというのはあのクソゲーを知る身としては精神的に健全でありがたい。ただ特別クラスってのはちょっと不安だな。
しかし杏香よりも先に行かされたおかげで、まだ人のいない学校。ちょっとときめくね!
時間もまだあるので、オクスタンの実物が見れないかと大グラウンドを横断して格納庫に行ってみる。ロボットはロマンだからな!
格納庫の中はしかし、残念ながらジープが二台止まっていただけだった。
物珍しそうに無機質な格納庫の中を巨大なスライドドアの窓から覗き込んでいるこの姿。見ようによっては不審者だが、巨大ロボットとか日本男児としちゃあロマンなんですよ一眼拝んでおきたい。
チャキッ
んう?
後頭部に何やら・・・、不穏な硬いモノが押しつけられたのだが・・・。
「貴様。ゆっくりと両手を上げて振り向け」
女の人っぽいが、すごくドスの効いた声が冷たくておっかない・・・。
恐る恐る手を上げて振り向くと、オートマチックな拳銃を両手で小脇に構えて目線の高さで俺の眉間に狙いを定めてくる銀髪の軍服を着た女性が睨みつけてきていた。
「貴様何のつもりだ。オクスタン格納庫は授業以外接近禁止となっているはずだが?」
「えええ、そうなんですか!?」
知らねえそんなルール!
俺は一目ロボットを見たかっただけなんだ!!
銀髪の君はおやっと表情を和らげる。
「貴様は? 中途入学生か」
「あ、はい。すみません・・・決まり事とか知らなくて」
「まぁ、オクスタンなど普段見られる物でもないからな。気持ちはわからなくは無い」
ほっ、銃を下ろしてくれた。
しかし、銀髪と白髪って何が違うのとか思ってたけど、こうして見るとこう、綺麗だな・・・。いや、この
銀髪の君は銃を右腰のホルスターにしまうと、ちょっと困ったような怒ったような顔で叱ってきた。
「とはいえ、練習機とはいえオクスタンは兵器だ。授業以外で近付くことは禁じられている。ほら、格納庫の周囲に黄色いラインが引かれているだろ?」
言われてみると、格納庫の周囲にはアスファルトが敷かれてグラウンドとの境、1メートル入ったあたりで格納庫をぐるっと囲むように黄色いラインが引かれてる。
どうやら用もなくその中に入っちゃダメみたいだ。
「このラインを越えちゃいけない、んですかね」
「そうだね。次からは気をつけた方がいい。所で君、名前は?」
「轟沢斗真って言います」
必要だろうと思って、俺は制服の内ポケットから学生証を出してみせる。
銀髪の君はそれを受け取って俺の顔を覗き込んできた。
「ふぅん。中途の一年生か。クラスのほとんどは新入生だから君より年下かもしれないが、腐らないようにな」
「はい。まぁ、わからないことだらけなので・・・」
「だろうな」ページを捲る「ふぅん、パイロット候補生か」
そう言って彼女は学生証を返してくれたついでに自己紹介をしてくれる。
「私はレイラ・ハーシェル。ガメリカ合衆国から派遣されたオクスタン戦技教官だ。授業が楽しみだな、ドドロ・・・」
「轟沢です」
「ドロウギサワー」
「・・・斗真でいいです・・・」
「そうか!? トーマ! あと、どうしても中が見たくなったら私に会いにくればいい。機体の点検ついでに見せてあげるよ」
「それは、どうも!」
キーン、コーン、カーン、コーォォォン
おっと、朝イチのベルだ。
「む、そろそろホームルームの時間か?」
「一応、まだ十五分はありますね」
「だが、あまりギリギリで行くものじゃない。とりあえず教室に行くんだトーマ。放課後なら時間を作ってやるから、授業が終わったら格納庫に来い」
「ありがとうございます!」
俺はレイラ教官に礼をすると、教室目指して駆けていった。
しかし、若く見えたけどおいくつなんだろう。
日本人には無い美しさ。まるで2・5次元。惚れちゃいそう。
おっと、学生と教師の恋愛事情はご法度だな。
そういえば、俺の年齢だと通常は四年生のはずだけど、中途入学は特別クラスになるとかで教室が別棟になる。
という事で、本校舎の裏にある校舎に・・・て、プレハブかよ・・・。
とりあえず入ろうとして、本校舎の方から呼び止められた。
「おおい! キミは昨日手続きで中途入学してきた生徒かね!?」
振り向くと、よく言えば優しそう、悪く言えばなよっとしたメガネにスーツ姿の男性教師が窓から身を乗り出すようにしてこっちに手を振っていた。
「あ、はい! ええと、他に手続きとか必要でしたか?」
「ああ、いや、そういうわけでは無いんだが。キミ、ウチの学校の教科書とか持ってないだろう」
あ、そういえば・・・。
というか、そうね、どこでもらうんだ?
「とりあえず、説明もあるし諸々渡すから、職員室までついてきてくれ」
「わかりました!」
早く来てよかった。
俺は先生についていくべく、別棟から本校舎の裏口に通じるコンクリートの細い道を走って行くことにした。
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