第4話
杏香に連れられて行ったアイングライツ戦技学校は、校門から本校舎まで桜並木の続く立派な学校だった。
校門をくぐり、右を望めば野球場かという広さのグラウンドが広がりその先にはドーム状の施設があり訓練用のオクスタン格納庫になっているそうだ。
左を見ればこれまたグラウンドが広がり、まあこっちは半分くらいの広さなんだが、その端には体育館と温水プールが併設されている。
高校時代を思い出すな。
俺の手を引く杏香が、ずっと俺の手を引いて息が少し上がっているのか頬を紅潮させながら僅かに振り向いて話しかけてきた。
「校長のアンナ先生は優しいけど怒ると怖い人だから絶対に刺激しちゃダメよ」
「刺激って何をするんだよ」
「なんでも!」
「まあ、うん、わかったよ」
「それと、斗真はあたしらと違って中途入学だから揉め事もあるかもだけど」
(中途入学? 中途採用? 今何月だろう)
「何かあったらすぐ言ってね! 力になるから」
「うん、まあ、わかったよ」
「もう! から返事ばっかり!」
しかし、こんな美少女と一つ屋根の下とか。なんという素敵な設定でしょうフィクションですか。
そうこうしているうちに本校舎に入って、校長室まで連行されるのだった。
校長室、といえば俺の知っている限り無機質でアルミのガラス戸付き書類棚に百科事典とか専門書とか並んだちょっとだけ良いデスクと黒いソファチェストなイメージだったんだけど。
この校長室は十畳の広さの立派な木製の本棚にやはり木製のデスク、椅子も革張りの高級ソファチェスト。床には暗い赤の絨毯。極め付けは窓辺、デスクの後ろに飾られた国旗と学園旗、そして軍旗。
あれ?
日本の国旗って日の丸・・・だよな。なんで二重丸なんだろう?
ソファに座ってデスクに両肘を乗せて綺麗な顎を組んだ手に乗せて、赤毛の美人な女性が、アンナ校長が声をかけてくる。
「よく来たわね、轟沢斗真君。桃乃木杏香君も案内ご苦労様」
「い、いえ! あ、ありがとうございます!!」
杏香ちゃんすっごい緊張してるな。
俺の方はなんだか現実味がないし、そもそもこんな軍人学校受験してたとか、斗真ってやつは何を考えて軍人になろうとしたんだろうか?
「さて、午前中のうちに来ると思っていたので案内役の生徒が用意出来ていない。なので、今日のところは杏香君」
「はっはいっ!?」
「君が案内してあげてくれ。頼めるかな?」
「も、もちろんです!」
「うむ。では斗真君」
「あ、はい」
「明日からよく学び、よく成長する事だ。私は君達生徒の成長を楽しみにしている」
「あ、はい」
「あ、はいじゃない! ちゃんと頭下げる!!」
ゲンコツ喰らった・・・。
杏香ちゃんって何気に手が早いのが玉に瑕だなあ・・・。
校長室。
アンナはデスクに埋め込むように設置されたノートパソコンのモニター越しに将官クラスの軍人の男性と通信していた。
『どうかね、アンナ中佐。今年の生徒は』
「はい、
『
「ラウアティガーですか。ドルゼ連邦から輸入した機体と伺ってますが」
『共同開発だよ。宇宙開発はゾライナ帝国とガメリカ合衆国に遅れをとっている現状で、近年は中欧民国も台頭してきている。国力の小さな我が国だけで宇宙用の
「ですが、
『
「難しい事を生徒達に背負わせることになるのですね」
『試作機ではあるが、先行生産型のラウアティガーも三機、そちらに送る。
「了解しました」
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