第3話
国立アイングライツ戦技学校。
十代や二十代の生徒を抱える8年制の学校で、侵略者である異星人との戦いを教える場所だという。
最も人気のあるのが、人型兵器「オクスタン」の操縦者を目指すパイロット養成科で、日本語で槍の意味を持つオクスタンは最前線で敵と白兵戦闘を想定して作られた中近距離戦闘兵器。らしい。
そして、俺、どうやら
「それで、いまはあんたは、この幼馴染の
親類縁者でもないのに何故か幼馴染を名乗る少女と一緒に一つ屋根の下暮らしているそうだ・・・。
なんかいろいろ間違いだらけで反吐が出る。さすがあの設定ゆるゆるなクソゲーの世界だ。
「それは、まあ、わかったけど・・・。キミ、俺に襲われないとか、危機感とかないわけ? なんで親類縁者でもないのに俺を引き取ったんだよ」
「まともにしゃべれもしなかったからじゃない!?」
しゃべれないのに、その、なんちゃらとかいう戦技学校に通う事になってたのか?
その辺のご都合主義が理解不能。
元の世界に戻して。
「事故の前にさ、あんた、あの学校受験して補欠で受かったのよ。補欠でもすごいことよ? それで、お祝いに小旅行に行こうって車で移動中に爆発事故に巻き込まれてあんたのご両親は死んで、あんたは記憶喪失ってわけ・・・」
「とりあえずやり直しを希望します。リセットボタンおして?」
「とぅああ!?」
ごちーん。
杏香さんのみごとなフックが俺のおでこに炸裂ですすげー痛い。
「いたいじゃないか!?」
「リセットできた?」
「できるか!!」
「とにかく今日が補欠入学選定の日なんだから、さっさと学校行って校長先生と面談するのよ!!」
「ろくにしゃべれもしなかった俺をそんな大事なところに連れて行こうとしてたのか」
「そしたら急に暴れ出して、外に逃げてしまうものだから。探すのに苦労したわ」
「そのままそっとしておいてほしかったものだが」
「というか、今日はすっごくおしゃべりしてくれるね! 治ったのかな? ということでハイ! あなたのお名前は!?」
「橋詰志郎21歳独身職業大学生趣味はギャルゲとエロゲとえっちな、」
「とうあ!!」
ごちーん。
「痛い・・・。おでこにフックまじでやめて・・・」
「うるさい! ハシヅメシロウなんて知らないわよ、そんな設定適当に並べてんじゃないわよ!」
理不尽だ。真面目に自分の正体を語ったというのに。
「そもそも、俺は記憶喪失なんだろう? 名前なんてなんだっていいじゃないか」
「経歴書に轟沢斗真って入れてあるんだから適当な名前じゃダメ! それに・・・!」
「それに?」
「う・・・。と・・・。とにかく! さっさと行くわよ!!」
俺よりも小柄なはずなのに俺よりも腕力強いとか。
轟沢斗真。貴様虚弱体質か?
俺の右手を引く桃乃木杏香の手は、小さくてやわらかくて、心地よかった。
いや、ちょっとまて、俺このままその変な名前の、恐らくゲームの舞台だった軍人学校に入学させれてしまうのか!?
これからの展開に不安しかないのだが・・・。
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