第2話

 そよそよと風が頬を撫でる。

 ほんのり香しい桜の匂い。

 瞼を照らす陽光に刺激されるが、心地良くて起きる気はしない。

 はぁ、なんと幸せな時間ときだろうか。


 ん?


 風?


 桜?


 ガバッと起き上がると、何故か俺は公園の真っ白なベンチでどうやら寝ていたらしい。

 あれ? アパートでクソつまらないエロゲーやってたはずだが・・・?


「夢、か?」


 不思議な感覚に驚いていると、遠く左の彼方から目を吊り上げて激昂するショートカットの少女が、軍服と学校の制服を足して二で割ったような服装の女子が全力疾走してくるのが見えた。


「とーうーまあああああああああ!!」


 トウマという奴に激怒しているらしい。気の毒に。

 どれ、トウマとは誰ぞやと、右を見ると人影は無く。


「絶賛逃亡中ですねトウマくん。お気の毒に」


「キサマのことだあああああ!!」


 がちーん!!

 うお! 痛え!!

 思い切り後頭部にゲンコツ食らったんだが!?


「え!? 痛い!! なんだよ!?」


 思わず振り向いて文句を言ってしまう。

 ショートカットの少女(良く見ると凄く可愛い)が激おこで俺を仁王立ちして見下ろしてきていた」


「いたいっ、じゃない!! なんだよでもない!! あんた繰り上げ合格で始業式間に合わなかったけど、今日からアイングライツ戦技学校に通うんでしょうが!」


「え、そうなの? しらん。ていうか、お前誰?」


「お、さ、な、な、じ、み、のっ、桃乃木杏香だろ!? お前いっつもいっつもそうやってはぐらかして!!」


「いやいやっ! え!? 幼馴染!?」


 全く覚えがないのですが・・・。


「あ・・・ごめん・・・。記憶、ないんだったね・・・」


 急にしおらしくなる京香ちゃん。

 個人的にはこんな幼馴染いたら嬉しいけど。

 いや、まず、記憶がないって何よ。


「と、とにかく! 午後の面会には間に合うから行くぞ!!」


 なんだか現状全く飲み込めていませんが・・・。

 俺は存外力持ちな幼馴染(仮)に手を(強引に)引かれて公園から連れ去られるのであった・・・。





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