10話「元ニートのおっさん、白夜の一族ではない可能性」

「ど、どいうことだよ? つまり白夜の一族は人間じゃないのか?」


 だが今は他人の名前を気にしている場合ではなく、自身の体が純粋な人間ではないのかという言い知れない恐怖感を抱えつつモンガスに聞き返す。


「それはワシにもわからん。だが彼らは特殊な瞳を使うことが可能で相手の動きを先読みしたり、噂では地獄で永遠に燃え続けているとされる黒炎すらも扱う事ができるとか……な」


 しかし彼は即座に知らないと言い返してくると次に白夜の一族には特殊な能力があるとして色々と話し始めたが、それを訊くと確かに俺の体は普通の人間ではないという事が否応なしに自覚させられた。


「おお、なんだよそれ! 凄い格好良いじゃねぇか! おいやったなお前! どうやらお前さんは凄い一族の生まれみたいだぞ!」

 

 ニアスが俺の背中を大きく叩いて声を弾ませながら格好良いとか言い始めているが、正直余りの情報量に脳内の思考回路が止まりかけていた。


 けれどそんなに凄い瞳を手にしていたとしても、俺は地獄の炎なんて一度も使ったことがない。

 つまりこの体は白夜の一族と呼ばれる者ではない可能性があり、そう考えると何とか気持ちに余裕が生まれて心を平穏に保たせることができた。


 そう、俺の容姿は単純に白夜の一族に似ているだけで全くの別人ということだ。

 なんせ瞳云々の能力については一度もないのだから。これが何より証拠となるだろう。


「お、おう。これはありがとうと言うべきなのか……?」


 取り敢えずニアスには何か返さないといけない気がして俺は疑問形でその言葉を送る。


「まあワシが知っているのはこれぐらいだな。あとはお前が自ら東の国に趣いて白夜の一族を探すことだ」


 どうやらモンガスによる白夜の一族についての話はここで終わりらしく、横でふらふらとしていたニアスは早々に自分の席へとでも足を進めたのか姿を消していた。


「あ、ああそうするよ。色々と教えてくれてありがとうなドワーフのおっちゃん! これは情報代として受け取ってくれ」


 ニアスと違いモンガスに対しては正真正銘の感謝の言葉を送ると懐から銀貨を2枚取り出して彼の元へと投げた。やはり人に何かをしてもらうのであれば、それ相応の代価を払うのが礼儀というものであろう。まあ生前の頃は何一つ俺は親に返したことはないがな。


「おっとと……すまないな。有り難く酒代にさせてもらうぞ。はははっ!」


 投げられた銀貨2枚をモンガスは両手で受け止めると、既に金の使い道は決定していたらしく高笑いを上げながらギルドのウェイトレスを呼んでいた。

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