9話「元ニートのおっさん、実は東の国の一族?」
ギルドの受付へと足を進めていた止めさせたのは一人のドワーフの男で、彼は俺の素性がわかるのか白夜の一族という聞きなれない言葉を呟いて視線を合わせてくる。
そしてドワーフが放つ次の言葉を固唾を飲んで待ち続けると、
「いや、知らんがな」
という気の抜けた返事を堂々と返してきた。
しかも彼は返事をした直後に魚料理を勢い良く酒で流し込んで喉を鳴らしている。
「知らないのかよ!?」
そんなドワーフの姿を見ながら声を荒らげると、先程までの妙な間と白夜の一族という如何にもという言葉は一体なんなのかと全身が一気に脱力感に包まれた。
「まあ……知らんとは言ったが正確に言えば詳しい事を知らんということだ。人伝から聞いた話で構わんのなら直ぐに話せるがな」
「えっ、そうなのか? だったら是非頼む! 何でもいいから今は情報が欲しんだ!」
例え僅かな情報だとしても今は少しでもこの体の持ち主のことが分かるのなら、それに越したことはないと彼に頼み込むように何度も頭を下げた。
「うむ、良かろう。まず白夜の一族とは目を疑う程の真っ白な髪をしていて、瞳は夜を彷彿とさせるほどの漆黒色なのが特徴的だな」
自身の顎髭を撫でながらドワーフは小さく頷くと矢継ぎ早に白夜の一族の特徴について教えてくれた。そして俺は前に自身の姿を一度だけ鏡で確認した事があるのだが、見た目的に年齢は18ぐらいの青年で確かに彼が言う通りに髪は雪のように白く瞳は日本人のように黒い。
「ほぇぇ~モンガスは色々と知ってんだな。でも探せば白髪に黒目なんて人間は幾らでも居ると思うんだが、何がそんなに珍しいんだよ?」
横から突然姿を現すと彼は先程の陽気な雰囲気を醸し出している兄ちゃんで、モンガスというのはドワーフの名前だろう。
どこぞの某RPGでステテコダンスを踊りそうな名前をしていて実に覚えやすい。
……でも言われて見れば白髪に黒目なんて、この異世界には多く居そうで特段珍しいこともないのではと俺も陽気な兄ちゃんと同じ意見だ。
「ふむ、確かにニアスの言う通り探せば似たような者は多く見つかるだろうな。だが白夜の一族は普通の人間とはかなり異なるのだ」
髭を触る手を止めると途端にモンガスは神妙な口調となり、普通の人間とは異なるとはっきりとした声色で言い切る。さらに彼の言葉の中にはニアスという名前がでたのだが、これは多分というより十中八九この陽気な兄ちゃんのことだろう。
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